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知っておくべきこと 専門用語解説

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「混合診療」って何?~日本で禁止されている3つの理由

回答:保険診療と自由診療を合わせたもの

 「混合診療」とは、「保険診療」と「自由診療」を組み合わせて使用する方法のことです。

 現在、日本では「必要かつ適切な医療は、基本的に保険診療により確保する」という理念の国民皆保険制度による医療が行われています。「混合診療」はこの理念にも反するものとして、現在は禁止されています。

詳しい回答①:「保険診療」と「自由診療」

 医療には、”保険”が使えるものと、使えないものがあります。

保険診療と自由診療

 一般的に我々が受ける医療は、保険が使える「保険診療」です。保険診療では、治療にかかった費用のうち、病院や薬局で支払う自己負担は10~30%で、残りは国などの保険者が負担してくれます。

 このとき、保険を使うためには、検査や手術、薬の使い方に至るまで、保険で認められた方法で行う必要があります。
 つまり、有効性・安全性に対して国のお墨付きがある治療方法、と言えます。

 一方、美容整形や健康診断、まだ保険で認められていない新しい治療方法などを選ぶときは、保険を使うことができません。そのため、かかった費用の全額を自己負担する必要があります。これを「自由診療」と呼びます。
 この「自由診療」には、将来的には保険適用されるであろうものから、極めていい加減な治療まであり、玉石混交と言えます。

詳しい回答②:「混合診療」とは

 「混合診療」とは、「保険診療」と「自由診療」を組み合わせる方法のことです。

 例えば、がんの治療を行う際、既存の抗がん剤による治療は「保険診療」、それに海外の新しい薬による治療を「自由診療」で追加する、といったものです。

 現在、日本では「混合診療」は禁止されています。そのため、保険を使えない「自由診療」を受ける際には、本来は保険が使える部分も含めて、全て「自由診療」扱いとなります。

混合診療

詳しい回答③:何故、「混合診療」は禁止されているのか?

 日本でこの「混合医療」が禁止されているのには、3つ理由があります。

 まず第一に、医療の平等性が失われる恐れがあることです。

 日本では、「全国民が平等に医療を受けられる」という国民皆保険制度が基盤になっています。

 もし、この「混合診療」を許可してしまうと、財力のある国民だけが高度な医療を「自由診療」として受けられる一方、お金のない人間は「自由診療」を追加することができず、財力に見合った医療を選択しなければならない、という状態になります。
 こうした状態は、国民皆保険の趣旨とは大きくかけ離れてしまうことになります。

 第二に、医療費の削減という流れに逆行し、国民の負担を大きくする恐れがあることです。

 現在は、保険診療によって一定の自己負担だけで必要な医療が提供されています。しかし、「自由診療」が一般化してしまうと、不必要な診療が増えて患者の負担が不当に大きくなってしまう恐れがあります。
 

 第三に、安全性や有効性が確認されていない診療が横行してしまう恐れがあることです。

 国などの研究機関によって、確かに安全かつ有効である、と確認できた治療方法は「保険診療」として随時認められています。しかし、「自由診療」ではこの確認が未だ行われていません。

 そのため、「混合診療」が無制限に採用された場合、安全性も確認されていないような、科学的根拠のない特殊な医療があちこちで実施されてしまう恐れがあります。

「先進医療」による可能性

 確かに、未だ認可されていない、海外の最先端の治療方法を選ぶべきケースは存在します。そういった場合に、本来は保険を使えるはずの部分まで「自由診療」扱いとなり、自己負担額が大きくなることは望ましい状況とは言えません。

 しかし先述の通り、①医療の平等性が失われる、②国民の負担が大きくなる、③安全性や有効性が確認されていない診療が横行してしまう、という理由から、「混合診療」を気軽に導入できる環境でもありません。

 そのため、まずは一定のルール作り、法整備といった部分が必要になってくる領域であり、まだまだ実現には遠い道のりと言えます。

 しかし、平成18年からは「先進医療」と呼ばれる制度が実施され、「保険診療」に自己負担で追加できる医療サービスが増えました。これは「混合診療」と比較的に近い考え方で、技術や経験の豊富な医療機関でのみ、最先端の医療を「保険診療」に追加できる、という制度です。

 例えば、総医療費100万円のうち、20万円が先進医療だった場合、先進医療20万円は全額自己負担になりますが、通常の治療と共通する80万円の部分には保険を使える、といったものです。

 この制度を利用するためには、治療方法や治療を実施している医療機関も、「先端医療」を実施可能と政府から認められた病院で行う必要があります。

例:CYP2C19遺伝子多型検査に基づくテーラーメイドのヘリコバクター・ピロリ除菌療法1)
 実施施設・・・浜松医科大学医学部付属病院、三重大学医学部付属病院、福井大学医学部付属病院

 1) 厚生労働省 第2項先端医療技術「先端医療を実施している医療機関の一覧」 平成27年4月1日

+αの情報:患者申出療養

 2016年4月より、「患者申出療養」制度がスタートします。この制度では、一定の条件下のもと、保険適用外の診療を、保険診療と併用できるようになります。

 ただし、「混合診療」が無制限に広がらないよう、国の審査が必要であることなど、厳しい条件で制限されています。

 
 
 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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