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抗血小板薬 似た薬の違い

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『プラビックス』と『パナルジン』、新旧の抗血小板薬の違いは?~副作用を減らす改良

回答:『プラビックス』は、『パナルジン』の副作用を減らした薬

 『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』と『パナルジン(一般名:チクロピジン)』は、どちらも血液をサラサラにする抗血小板薬です。

 『プラビックス』は、『パナルジン』の効果はそのままに副作用を減らした改良版の薬です。
プラビックスとパナルジン
 特に、『パナルジン』は使い始めに副作用が起こりやすく、しばらくは2週間に1回の血液検査をする必要がありました。しかし、『プラビックス』ではこうした血液検査の必要もないため、少ない負担で飲み続けられる薬と言えます。

回答の根拠①:血液検査が必要な『パナルジン』

 『パナルジン』は効果の高い薬ですが、その反面、重篤な副作用も多く、厚生労働省も1999年と2002年に計2回、「緊急安全性情報(イエローレター)」で警告を発しています。

※1999年・・・「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)」
※2002年・・・「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)」、「無顆粒球症」、「重篤な肝障害」

 こうした副作用は、特に『パナルジン』を飲み始めた時に起こりやすいこと、更に血液検査によって副作用の兆候を調べられることがわかっています。
 そのため、『パナルジン』による治療開始から2ヶ月間は、2週ごとに血液検査(白血球数と肝機能)を行うよう、「警告事項」として記載されています1)。
パナルジン~血液検査
 1) パナルジン錠 添付文書

 『プラビックス』では、基本的にこうした血液検査は必要ありません2)。ただし、肝臓に障害があるなど副作用のリスクが高い場合には行う場合もあります。

 2) プラビックス錠 添付文書

回答の根拠②:同じ効果で、副作用の少ない『プラビックス』

 『プラビックス』は、『パナルジン』の高い効果を維持したまま、副作用を少なく改良した「スーパー・パナルジン」として開発された薬です。

 実際、『プラビックス』の脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ効果は『パナルジン』と同じで、更に『パナルジン』のような大きな副作用が60%近く少ないことが報告されています3,4)。

 3) Cerebrovasc Dis.25(1-2):40-9,(2008) PMID:18033957
 4) Lancet.348(9038):1329-39,(1996) PMID:8918275

 このことから、『パナルジン』よりも安全に使える薬として、2006年に販売が始まってからは『プラビックス』が広く使われるようになっています。

『プラビックス』の広い適応症

 『プラビックス』は副作用が少ないだけでなく、「脳」・「心臓」・「末梢」の3つの領域で適応症を持っています。こうした広い適応症も、『プラビックス』の特徴の一つです。

※プラビックスの適応症 2)
脳・・・・・虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)の再発抑制
心臓・・・経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
末梢・・・末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

薬剤師としてのアドバイス:内視鏡や歯の処置をする時は、必ず医師に薬の内容を伝える

 『プラビックス』や『パナルジン』といった抗血小板薬は、血液を固まりにくくする薬なので、出血もしやすくなります。
 そのため、内視鏡処置や抜歯など、出血する恐れのある処置を受ける場合には、事前に薬を中止あるいは減量するなど、適切な対応をしておく必要があります。

 特に、『プラビックス』や『パナルジン』などの抗血小板薬は、薬を止めてもしばらく効果が続くため、一般的には処置の7~14日前から対応しておく必要があります。
 処置の前日になってからでは遅いので、できるだけ早めに医師に薬の内容を伝えるようにしてください。

 また、処置があっても状況によっては薬を中止・減量しないこともあります。自己判断で薬の量を変えたりしないようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『プラビックス』は、『パナルジン』の効果はそのままに、副作用を減らした改良版
2. 『プラビックス』は血液検査も必要ない
3. 抗血小板薬は、一般的に手術前7~14日の休薬が必要

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆薬効分類
プラビックス:抗血小板剤
パナルジン:抗血小板剤

◆警告の記載
プラビックス:なし
パナルジン:血液検査が必要である旨の記載あり

◆血液検査に対する表現
プラビックス:注意事項として「血液検査の実施も考慮する」と記載
パナルジン:警告として「定期的に血液検査を行う必要がある」と記載

◆適応症
プラビックス:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制
パナルジン:血管手術・血液体外循環、虚血性脳血管障害、クモ膜下出血後の脳血管攣縮に伴う血栓・塞栓・血流障害の改善、慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍・疼痛・冷感

◆用法
プラビックス:1日1回
パナルジン:1日1~3回(適応症によって異なる)

◆剤型の種類
プラビックス:錠(25mg、75mg)
パナルジン:錠(100mg)、細粒

◆製造販売元
プラビックス:サノフィ
パナルジン:サノフィ

+αの情報:『プラビックス』を更に改良した『エフィエント』

 『プラビックス』を更に改良し、個人差を小さくした『エフィエント(一般名:プラスグレル)』が登場しています。

 ただし、新しい薬ほど高価なため、副作用や個人差に問題がなければ古くから使われている『パナルジン』でも問題はありません。

※チエノピリジン系抗血小板薬の薬価(2018改訂時)
『パナルジン』・・・・100mg(23.60) 
『プラビックス』・・・25mg(73.00)、75mg(182.30)
『エフィエント』・・・2.5mg(196.50)、3.75mg(276.10)、5mg(352.40)、20mg(1128.80)

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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