風邪で病院へ行ったのに、抗生物質を出してくれない。何故?


回答:ほとんどの風邪に、抗生物質は不要

 「風邪」は、ほとんどが「ウイルス」によるものです。

 「細菌」と「ウイルス」は全くの別ものなので、「細菌」を退治する抗生物質では「ウイルス」には効きません。そのため、通常は「風邪」に抗生物質は必要ありません。
風邪と抗生物質~ウイルス性の感染症と細菌性の感染症
 それでも、「風邪」に抗生物質が処方された、と感じる場合もあります。
 それは、自分では「風邪」と思っていても、実際には中耳炎や副鼻腔炎・扁桃腺炎など「細菌」による感染症と診断されているケースがほとんどです。

 多くの人は、熱が出て、咳が出て、くしゃみ・鼻水が出るものを全て「風邪」と思ってしまう傾向にありますが、医師は似たような症状でも原因を特定し、それに応じた薬を使っています。



回答の根拠①:「細菌」と「ウイルス」、抗生物質(抗菌薬)と抗ウイルス薬

 「ウイルス」は、「細菌」と同じように人間にとっては病原体となる存在ですが、活動も構造も全く異なります

※「細菌」と「ウイルス」の違い
1.「細菌」は、「ウイルス」の1,000倍ほど大きい(代表的なもので)
2.「細菌」は食事もするし排泄もするが、「ウイルス」は全く食事も排泄もしない
3.「細菌」は自力で増えるが、「ウイルス」は自力で増えることができない
4.「細菌」はヒトと同じように食べて繁殖することが目的だが、「ウイルス」は何かに感染することが目的
5.「細菌」は動物や植物と同じ細胞構造を持っているが、「ウイルス」には細胞構造が無い

 そのため薬も全く別のもの、「細菌」には抗生物質(抗菌薬)、「ウイルス」には抗ウイルス薬を使わなければ効果がありません。

 「風邪症候群」の80~90%は「ウイルス」が原因とされている1)ため、抗生物質が必要となるケースは少ないのが現状です。
風邪症候群の原因微生物
 1) 日本呼吸器学会 「感染性呼吸器疾患(風邪症候群)」

インフルエンザの二次感染に抗生物質を使うことがある

 インフルエンザも「ウイルス」による感染症のため、抗生物質ではなく『タミフル(一般名:オセルタミビル)』などの抗ウイルス薬を使う必要があります。

 ただし、インフルエンザと一緒に、「細菌」の二次感染も併発している場合には抗生物質を使うことがあります。



回答の根拠②:”患者満足”のために抗生物質を処方するのは間違い

 「風邪で病院へ行ったのに抗生物質を出してくれない」という病院に対する不満はよく耳にしますが、必要ない薬を使うことは避けるべきです。いつでも必ず抗生物質を出す病院の方が変と言えます。

 かつては、患者を満足させるために処方される抗生物質、というものもありましたが、こうした間違った抗生物質の使用は「耐性菌」の原因にもなり、全くメリットはありません。

 実際、急性上気道炎で外来受診した患者の満足度は、病気についてより理解できた時に高くなり、抗生物質の処方の有無とは無関係であったことも報告されています2)。
患者の満足と抗生物質の処方
 2) Ann Emerg Med.50(3):213-20,(2007) PMID:17467120



薬剤師としてのアドバイス:ほっといても治るから、薬やワクチンを作るメリットが少ない

 厳密に言えば、「風邪」が「ウイルス」による感染症である以上、発症したら抗ウイルス薬を使えば早く治りますし、インフルエンザのようにワクチンを接種していれば予防できる可能性もあります。

 ところが、「風邪」は普通1~数日で自然に治ります。そのため、コストをかけてまで薬やワクチンを作るメリットがありません。
 また、「風邪」の原因となる「ウイルス」にも色々な種類があり、その全てを薬とワクチンで網羅しようとすると、効果の判定や安全性の確保に莫大なコストがかかります。

 そんな莫大なコストをかけて、ほっといても治る風邪の薬やワクチンを作ることには、あまり緊急性も必要性もありません。もし、安価で安全な、様々な種類のウイルスをまとめて退治できる「風邪薬」が開発されたら「ノーベル賞」だともいわれています。

 そのため、咳が出るなら咳止め、熱があるなら熱冷まし、くしゃみが出るなら抗アレルギー薬、といった対症療法を行いながら自然治癒を待つのが、現在の「風邪」の治療方法です。



+αの情報:同じような病名でも、細かな違いによって抗生物質の要・不要は変わる

 同じような病名でも、抗生物質が必要なもの、不要なものがあります。

 例えば、中耳炎の中でも「滲出性中耳炎」であれば抗生物質を使わなかったり、逆に普通は抗生物質を使わない咽頭炎でも「溶連菌」が原因であれば抗生物質を使ったり、といったケースがあります。

 極端に抗生物質を求めたり嫌ったりせず、どういった病気に対してどのような薬が処方されるのか、主治医ときちんとコミュニケーションをとりながら治療するようにしてください。



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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コメント

コメント一覧

    • ima
    • 2016年07月30日 11:47
    • 抗生剤乱用のため 抗生剤の利かない耐性菌が増えています。このままだと子供が成長した未来はどうなるでしょう。有効な抗生剤なく気管支炎、膀胱炎で死ぬ未来を子供に勧めますか。
    • Fizz-DI
    • 2016年07月30日 12:08
    • >imaさん
      コメントありがとうございます。
      そういった未来にならないよう、抗生物質・抗菌薬の適正使用を進めるべきと考えています。そのために、一般向けにも安易に抗生物質を欲しがったりしないよう、啓蒙を行っています。

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