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薬の誤解 副作用

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薬の副作用に「悪夢」って書いてあるんだけど、どういうこと?~アレルギー薬にもある不思議な副作用

「悪夢」と”気持ち悪い夢”は、全く別のもの

 ここで言う「悪夢」とは、”なんとなく気持ちが悪い夢を見た”といったものではありません。様々な定義がなされていますが、主に以下の2点が共通点として挙げられます。

1. 強い恐怖で睡眠から中途覚醒し、睡眠障害を起こす
2. 極めて鮮明な内容の夢を見るため、その内容を明瞭に話すことができる

 ちょっと変な夢を見たからといって副作用だと決めつけ、薬を自己判断で中断したりはしないようにしてください。

薬でも起こり得るが、身体症状やストレスでも起こる睡眠トラブル

 「悪夢」は「睡眠時随伴症」の1つに分類される、睡眠障害を起こす要因です。
 稀に、薬の副作用によって「悪夢」を見ることがあります。詳しいメカニズムは解明されていませんが、以下のような性質を持つ薬では「悪夢」を見る可能性があります。

※「悪夢」の副作用を起こす可能性がある薬の例
1. 脳内神経伝達物質「セロトニン」・「ノルアドレナリン」・「アセチルコリン」・「ドパミン」に作用する薬
2. 脳内で覚醒や鎮静を司る「GABA」や「ヒスタミン」に作用する薬
3.「血液脳関門」を通過し、脳へ到達しやすい薬
4. 睡眠システムに作用する睡眠薬や抗不安薬

 ただし、薬を服用中に一度だけ「悪夢」を見たからといって、それが薬の副作用だと決めつけるのは非常に問題です。
 薬を飲まなくても、「悪夢」は発熱やストレス・疲労・アルコール摂取などの要因で起こりやすい症状です。薬が必要な状態、つまり病気で何らかの不快な症状がある場合、もともと身体には大きなストレスがかかっています。このストレスが原因で「悪夢」を見たと考える方が妥当なケースも多く存在します。

 例えば、鼻が詰まっていてアレルギーの薬を飲んでいる時に首を絞められる夢を見た場合、どちらかというとその悪夢の原因は「鼻づまり」にあると見た方が妥当です。 

①レム睡眠が増えると、夢を見る

 ヒトは、身体が休み脳が起きている「レム睡眠」の時に夢を見ます。そのため、レム睡眠を誘発するような薬は「悪夢」を起こす可能性があります。

 レム睡眠は「セロトニン」や「ノルアドレナリン」によって抑制され、「アセチルコチン」によって促進されます。そのため、こうした脳内伝達物質に作用する薬でレム睡眠の時間が増えると、夢を見る時間が長くなります。
 また、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、レム睡眠を減らして睡眠の質を向上させる作用があります。しかし、薬を急に減らしたり止めたりすると、反動でレム睡眠が増えることがあります。

 このように薬の作用でレム睡眠が増えると、「悪夢」を見る確率は高くなります。

②血液脳関門を通過する薬にもリスクがある

 脳は重要な組織です。そのため、血液中の物質をなんでも脳に届けてしまうと危険です。
 そこで人体は、「血液脳関門」というフィルターによって、血液中の物質を「入って良いもの」と「入ってはいけないもの」に選別しています。
 この「血液脳関門」を通過できるタイプの薬は、脳の働きに作用するため、副作用で「悪夢」を見る可能性があります。

 「悪夢」に限らず、脳の働き影響して起こる副作用は、この「血液脳関門」を通るか否かで発生頻度が大きく変わります(例 :『アレグラ』と眠気『リスパダール』と高プロラクチン血症)。

 また、アレルギーの原因にもなる「ヒスタミン」は、脳内では”覚醒”を司っています。そのため、「血液脳関門」を通過しやすい抗ヒスタミン薬を使うと、脳での”覚醒”のバランスが崩れ、「悪夢」を見ることがあります。アレルギー薬で「悪夢」がしばしば話題になるのは、このためです。

薬剤師としてのアドバイス:何度か繰り返す場合は、副作用を疑う

 先述の通り、症状や副作用としての「悪夢」は、”少し妙な夢を見た”というレベルのものではありません。明らかに異常な恐怖や不安によって睡眠に支障を来たすものを言います。

 「悪夢」の原因が薬であるかどうかを考える際の重要なポイントは、以下の2点です。

①服用を始めてから急に「悪夢」を見るようになった
②薬を飲むと何度も繰り返して「悪夢」を見る

※参考:Naranjo有害事象因果関係判定スケール

 薬を飲んでいる期間に、たまたま一度だけ「悪夢」を見たからといって、副作用だと決めつけるのは良くありません。しかし、薬を飲み始めて以来、何度か「悪夢」を繰り返すようであれば、薬の副作用を疑う必要があります。

 「悪夢」の原因が薬であった場合、原因となった薬を変更することで通常すぐに改善します。もし改善しない場合は、ストレスや睡眠環境など、薬以外の原因を考える必要があります。気になる場合は、一度医師・薬剤師に相談することをお勧めします。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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