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整腸剤・下痢止め 似た薬の違い

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『ビオフェルミン』の「錠」と「配合散」、同じ『ビオフェルミン』の違いは?~使われている菌種の違いと使い分け

回答:使われている菌種が異なる

 『ビオフェルミン』の「錠」と「配合散」は、どちらも腸内細菌のバランスを整える整腸剤です。錠剤と散剤という剤型だけでなく、薬に使われている菌種が異なる別の薬です。

 『ビオフェルミン』の「錠剤」は、「ビフィズス菌」の薬です。
 『ビオフェルミン』の「配合散」は、「乳酸菌」と「糖化菌」の薬です。
ビオフェルミン~錠と配合散
 どちらも腸内細菌のバランスを整えるという同じ目的で使い、効き目にも違いはほとんどないため、特に厳密な使い分けは必要ありません。
 ただし、単なる剤型の違いとしては扱えないことに注意が必要です。

回答の根拠①:『ビオフェルミン』の「錠剤」~ヒトの腸内環境で最も優勢な「ビフィズス菌」

 『ビオフェルミン』の「錠剤」は、「ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum)」の薬です1)。

 1) ビオフェルミン錠 添付文書

 「ビフィズス菌」は、ヒトの小腸~大腸で増殖し、乳酸と酢酸を作ることによって悪玉菌を減らし、腸内細菌のバランスを整える作用があります2)。
 成人でも善玉菌の大部分を占め、特に乳児の段階では腸内で最も数が多く、ヒトの腸内環境に大きく寄与しています3)。
ビフィズス菌の作用
 2) ビオフェルミン錠 インタビューフォーム
 3) 腸内細菌学雑誌.16:1-10,(2002)

 このように元からヒトの体内に数多く存在している菌のため、「ビフィズス菌」は薬として服用しても体内に定着しやすいという特徴があります2)。

「ビフィズス菌」は、整腸剤としての効果も高い

 「乳酸菌」だけの飲料より、「ビフィズス菌」の入った飲料の方が整腸効果は高いことが報告されています4)。

 4) Jpn J Lact Acid Bact.18(1):31-6,(2007)

回答の根拠②:『ビオフェルミン』の「配合散」~乳酸菌と糖化菌

 『ビオフェルミン』の「配合散」は、「乳酸菌(Streptococcus faecalis)」と「糖化菌(Bacillus subtilis)」の薬です5)。

 5) ビオフェルミン配合散 添付文書

 「乳酸菌」も「ビフィズス菌」と同じように腸内環境を整えますが、「乳酸菌」は「ビフィズス菌」と比べるとその数は100~10,000分の1程度と少なく6)、あくまで乳酸を作ることで「ビフィズス菌」の生育・活動を助けるという補助的な働きをします7)。
 「糖化菌」は炭水化物を糖に変えることで、「乳酸菌」の生育・活動を助けます7)。
糖化菌と乳酸菌
 6) グリコ(株) 健康科学研究所 「ビフィズス菌とは」
 7) ビオフェルミン配合散 インタビューフォーム

 このことから『ビオフェルミン』の「配合散」は、「乳酸菌」と「糖化菌」の作用によって「ビフィズス菌」の働きを助ける整腸剤と言えます。

回答の根拠③:別の薬としての扱いと、共通する使い方

 『ビオフェルミン』の「錠」と「配合散」は、有効成分(使われている菌)が異なるため、添付文書やインタビューフォームも個別に作られ、別の薬として扱われています1,5)。

 しかし、どちらも腸内細菌のバランスを整えるという同じ目的で使う薬で、効果に大きな違いがあるとする報告もありません。そのため、厳密な使い分けは必要ありません。

 錠剤か粉薬か、飲みやすい剤型で選ぶこともありますが、別の薬扱いなので剤型変更はできないことに注意が必要です。

薬剤師としてのアドバイス:抗生物質による下痢には『ビオフェルミンR』

 『ビオフェルミン』に使われている「ビフィズス菌」や「乳酸菌」、「糖化菌」も細菌の一種です。そのため、細菌を退治する抗生物質と一緒に使うと死んでしまい、効き目が無くなってしまいます。

 抗生物質で下痢をしている場合には、耐性をもった善玉菌の薬である『ビオフェルミンR』を使う必要があります。

 薬は、似たような名前のものであっても明確に使い分けなければならないものもあります。自己判断で使うと間違った使い方をしてしまう恐れがあります。必ず医師・薬剤師の指示通りに使うようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『ビオフェルミン』の「錠」と「配合散」は、有効成分(使われている菌)が違う別の薬
2. 『ビオフェルミン錠』の「ビフィズス菌」は、ヒトの腸内環境を整える主たる善玉菌
3. 『ビオフェルミン配合散』の「乳酸菌」と「糖化菌」は、「ビフィズス菌」の働きを助ける善玉菌

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆有効成分(使われている菌)
ビオフェルミン錠:ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum
ビオフェルミン配合散:乳酸菌(Streptococcus faecalis)、糖化菌(Bacillus subtilis

◆適応症
ビオフェルミン錠:腸内菌叢の異常による諸症状の改善
ビオフェルミン配合散:腸内菌叢の異常による諸症状の改善

◆用法
ビオフェルミン錠:1日3回
ビオフェルミン配合散:1日3回

◆製造販売元
ビオフェルミン錠:ビオフェルミン製薬
ビオフェルミン配合散:ビオフェルミン製薬

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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