■サイト内検索


スポンサードリンク

狭心症・心筋梗塞 似た薬の違い

/

『シグマート』ってどんな薬?~「ニトロ」と異なる使い方・作用機序と、頭痛を感じる理由

回答:冠動脈を拡張させる薬~頓服と定期薬

 『シグマート(一般名:ニコランジル)』は、心臓の太い血管(冠動脈)を広げる作用があり、狭心症の治療に使う薬です。
 狭心症の薬には、有名なものに頓服薬の『ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)』などの硝酸薬があります。
 しかし、これらの硝酸薬は作用が非常に強力な反面、作用時間が短く、副作用も多いため、症状をコントロールするための毎日の定期薬としては適していません。

 『シグマート』は硝酸薬のように血行動態に影響せず、作用も持続することから、毎日の定期薬として使用し、狭心症発作を予防するのに適しています。
シグマートとニトロペン

回答の根拠①:作用時間と副作用による使い分け

 狭心症は、心臓の太い血管(冠動脈)が何らかの原因によって狭くなり、一時的に心臓に血液が供給されなくなることで起こります。
 そのため、冠動脈を広げる薬によって血流を回復させ、治療・予防ができます。

 『ニトロペン』等の硝酸薬は、舌下に置くことですぐに効果が現れますが、その作用は持続しません。そのため、発作が起きたときの頓服薬として使用します1)。
 『シグマート』は、血中濃度に依存せず抗狭心症効果が持続します2)。また、心拍数や心筋収縮力、大動脈圧に影響しないことから、定期薬として毎日服用するのに適した薬と言えます2)。

 1) ニトロペン舌下錠 添付文書 
 2) シグマート錠 インタビューフォーム

回答の根拠②:冠血管の攣縮も抑える

 『シグマート』は、冠動脈を広げるだけでなく、痙攣を抑制する効果もあります3)。
 そのため、冠動脈が痙攣や異常な収縮を起こして発症するタイプの狭心症(冠攣縮性狭心症)の防止にも効果的です。

 3) J Pharmacol Exp Ther.227(1):220-8,(1983) PMID:6225867

 特に日本人は欧米人に比べ、冠攣縮性狭心症の割合が多いため、『シグマート』は非常に有用と言えます。

回答の根拠③:頭痛を感じる理由~片頭痛との共通点

 『シグマート』を服用すると、3%以上の頻度で拍動性の頭痛を感じることがあります2)。

 主な原因として、『シグマート』が脳の血管を拡張させてしまうことで頭痛を感じる、という理由が考えられます。実際、『シグマート』を内服すると、若干量が「血液脳関門」を通過して脳に分布することが報告されています4)。

 4) 応用薬理.23(1):153,(1982)

 片頭痛も脳血管の異常な拡張が原因の一つと考えられています。そのため、脳の血管を収縮させる『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』等の「トリプタン製剤」によって治療が可能です。
 『シグマート』の使用によって片頭痛が悪化する可能性も十分に考えられます。その場合は、「トリプタン製剤」をたくさん使うのではなく、片頭痛の予防薬を使うことも考慮する必要があります。

+αの情報:一酸化窒素(NO)による血管拡張作用と、他の薬との相互作用

 そもそも生体には、血圧や体温を調節するために、血管を収縮・拡張させる機能が備わっています。

※血圧調整の例
大きな血管(冠動脈)を拡張させ、血圧を下げる

※体温調節の例
末梢の小さな血管を拡張させ、熱の放散を増やし、体温を下げる

 その中で、一酸化窒素(NO)は強力な血管拡張因子として機能します。

①一酸化窒素(NO)は、「グアニル酸シクラーゼ」を活性化し、「cyclic-GMP」の産生を増やします。
②増加した「cyclic-GMP」は、カルシウム(Ca2+)チャネルを遮断します。
③細胞内カルシウムイオン濃度が低下したことによって、血管平滑筋が弛緩し血管が拡張します。
シグマートと一酸化窒素
 『シグマート』や『ニトロペン』等の硝酸薬は、この一酸化窒素(NO)と同じように、「グアニル酸シクラーゼ」を活性化させることで、血管拡張作用を発揮します。

 なお、ED治療薬の『バイアグラ(一般名:シルデナフィル)』は、陰茎海綿体で同様の一酸化窒素(NO)を介した作用を発揮する薬です。
 そのため、『シグマート』と併用すると血管拡張作用が相乗効果で強まり、全身の血管が弛緩して重篤な低血圧を起こす恐れがあります5)。

 5) シグマート錠 添付文書

 また、『ノルバスク(一般名:アムロジピン)』等のCa拮抗薬も、上記の②(カルシウム(Ca2+)チャネルを遮断する)部分に直接作用して強力に血管を広げる作用を持っています。そのため、同様に副作用として頭痛を感じることがあります6)。

 6) ノルバスク錠 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:頭痛は慣れてくることも

 『シグマート』を服用し始めると、多くの人が拍動性の頭痛を感じる傾向にあります。

 しかし、続けて服用していることで次第に身体が慣れてきて、頭痛を感じなくなることがほとんどです。そのため、最初は量を減らした状態から飲み始めるなどの工夫をし、続けて服用できる方法を探ることが重要です。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 『ルネスタ』と『アモバン』、同じ睡眠薬の違いは?~光学異性体…
  2. 『ラシックス』と『フルイトラン』、同じ利尿薬の違いは?~ルー…
  3. 『デパケン』と『テグレトール』、同じ抗てんかん薬の違いは?~…
  4. 【新刊のお知らせ】「薬剤師のための 医療情報検索テクニック」…
  5. 添付文書に記載された副作用頻度の数字を、単純に比較してはいけ…
  6. 『ロキソニン』と『セレコックス』、同じ鎮痛薬の違いは?~速効…
  7. 『オーグメンチン』と『サワシリン』、同じ抗生物質の違いは?~…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP