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似た薬の違い 殺菌・消毒薬

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『アズノール』と『イソジン』、同じうがい薬の違いは?~炎症止めと感染予防、薄め方や「うがい」の方法も異なる

回答:炎症を抑える『アズノール』と、殺菌・消毒する『イソジン』

 『アズノール(一般名:アズレン)』と『イソジン(一般名:ヨウ素)』は、どちらも「うがい薬」として処方されますが、用途の異なる別の薬です。

 『アズノール』は炎症を抑える薬、『イソジン』は消毒薬です。
アズノールとイソジン3
 それぞれ、適した薬の薄め方や「うがい」の方法も異なるため、同じ「うがい薬」だからと混同しないようにしてください。

回答の根拠①:薬理作用と使う目的の違い~処方される状況

 『アズノール』には、炎症を抑える効果と、傷の治癒を促す効果があります1)。
 そのため、口内炎や咽頭炎など、口や喉の粘膜に炎症・傷ができているような状況で処方される「うがい薬」です。

 1) アズノールうがい液 添付文書

 『イソジン』には、様々な細菌に対する殺菌効果や、インフルエンザ・風疹などのウイルスに対する不活化効果があります2,3)。
 そのため、喉が荒れているなど、普段よりも細菌・ウイルスに感染しやすくなっている状況で処方される「うがい薬」です。 

※『イソジン』のウイルス不活化効果の例
インフルエンザウイルス・・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
アデノウイルス・・・・・・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
ロタウイルス・・・・・・・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
ポリオウイルス・・・・・・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
単純ヘルペスウイルス・・・・・70倍希釈(0.1%)で30秒
SARSウイルス・・・・・・・・15倍希釈(0.47%)で60秒
鳥インフルエンザウイルス・・・30倍希釈(0.23%)で10秒

 2) イソジンガーグル 添付文書
 3) 日本化学療法学会雑誌 54(3):260,(2006)

 このように、『アズノール』と『イソジン』はそれぞれ全く別の目的で使う「うがい薬」のため、お互い代用はできません。

回答の根拠②:薄め方の違い~適切な希釈倍率

 『アズノール』と『イソジン』では、それぞれ適した薄め方が異なります。

※適切な希釈倍率 1,2)
『アズノール』・・・100mLの水に対して5~7適
『イソジン』・・・・15~30倍希釈程度

15~30倍希釈、『イソジン』を適量で薄める目安

 「小さじ1杯程度(5mL)の『イソジン』を、コップ半分(100mL)の水に薄める」と、20倍希釈になります。およそこのくらいの感覚で薄めれば、15~30倍程度の希釈になります。
アズノールとイソジンの薄め方
 厳密な希釈をしようと神経質になる必要はありませんが、あまり薄めすぎると効果が期待できなくなってしまうことに注意が必要です。

回答の根拠③:うがいの方法の違い~薬が接触すべき場所

 「うがい薬」は、薬が作用すべき場所に接触していなければ効果は得られません。

 『アズノール』は、炎症や傷のある部分に薬が接触するよう「うがい」する必要があります。
 喉の奥が腫れているのであれば、喉の奥でガラガラする「うがい」が正しい方法ですが、口内炎ができているような場合には、口を漱ぐような「うがい」が必要です。

 一方『イソジン』は、口や喉に付着した異物・微粒子を洗い流し、除去する目的で使用します。
 そのためには、まず口を漱ぎ、それから喉の奥まで「うがい」する必要があります。その際、あまり短い時間の「うがい」では十分な効果が得られないため、およそ30秒以上行う必要があります2)。
アズノールとイソジン~どこをうがいするか

薬剤師としてのアドバイス:ざっくりした分類ではなく、薬の名前はきちんと覚えておく

 『アズノール』と『イソジン』は同じ「うがい薬」ですが、薬の効果、使う目的、薄め方、うがいの方法はそれぞれ全く異なります。

 このように、薬には細かな違いがあり、状況に応じて使い分ける必要があります。そのため、「うがい薬」に限らず、「痛み止め」や「胃薬」、「血液をサラサラにする薬」といったざっくりとした分類では、医師や薬剤師でも薬の内容を正しく把握できません。

 いざという時のためにも、自分が飲んでいる薬は、きちんと名前で覚えておくことをお勧めします。たくさん飲んでいて覚えられない、という場合には、「お薬手帳」で管理する、携帯電話・スマートフォンで写真を撮っておく、メモを残しておくなど、薬の名前や用量(mg)をできるだけ正確に記録しておくようにしてください。 

ポイントのまとめ

1. 『アズノール』は、炎症を抑えるために使う
2. 『イソジン』は、消毒・殺菌のために使う
3. 『アズノール』と『イソジン』では、適切な薄め方・うがいの方法も違う

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆薬理作用
アズノール:消炎、創傷治癒促進
イソジン:細菌に対する殺菌、ウイルスに対する不活化

◆適応症
アズノール:咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷
イソジン:咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒

◆薄め方
アズノール:約100mLの水に5~7滴(4~6mg)
イソジン:15~30倍に希釈

◆薬の色
アズノール:暗青色
イソジン:暗赤褐色

◆製造販売元
アズノール:日本新薬
イソジン:塩野義製薬

+αの情報:日常的な「うがい」と、注意が必要な時の「うがい」

 「うがい」は、水道水であってもきちんと正しい方法で「うがい」すれば、風邪の発症を36%減らせるという報告もあります4)。
 しかし、この正しい「うがい」とは、1回15秒以上を連続3回、これを最低でも1日に3回と、相当に気合の入ったものであることに注意が必要です。 

 4) Am J Prev Med.29(4):302-7,(2005) PMID:
16242593

 通常、ここまで徹底した「うがい」をできる人は多くありません。
 そのため、インフルエンザが流行している時や、自分が喉を傷めていて感染しやすい状態にある時などは、ただの水ではなく、殺菌作用のある『イソジン』を使って「うがい」することも考慮します。
うがい~状況に応じた使い分け

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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