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風邪薬や漢方薬でドーピングになるのは何故?~「エフェドリン」の動態、用法・用量を守ってもダメな理由

回答:禁止薬物の「エフェドリン」が入っているから

 風邪薬や漢方薬には、禁止薬物の「エフェドリン」が含まれていることがあります。
 この「エフェドリン」は、競技会時に禁止される「興奮剤」として指定されています。
ドーピングと風邪薬、漢方薬
 たとえ風邪薬や漢方薬を用量・用法通りに服用していても、ドーピングと見なされる恐れがあるため、競技会中は「エフェドリン」の含まれる薬は避ける必要があります。

 最近は、インターハイ等でもドーピングに対する規制は厳しくなってきています。
 意図せぬドーピングを避けるため、競技会前後は安易に自己判断で薬を選ばず、必ず医師・薬剤師などの専門家と相談するようにしてください。

回答の根拠①:「エフェドリン」が禁止薬物である理由

 「エフェドリン」は、交感神経を興奮させる作用があります。そのため「興奮剤」に指定され、競技時に使用することは禁止されています。
 「エフェドリン」の尿中濃度が10μg/mLを超えた場合、ドーピングとして判断されると明記されています1)。

 1) WADA 世界アンチドーピング規定 (2015)

 これは用法・用量を守って使用していても簡単に超えてしまう基準のため(後述)、競技会中に風邪をひいた場合には「エフェドリン」が含まれない薬を選ぶ必要があります。
 また、利尿薬など別の薬物も同時に併用していた場合、この濃度に達しなくともドーピングに該当すると判断されることもあります。

類似の「メチルエフェドリン」・「ブソイドエフェドリン」

 「エフェドリン」だけでなく、「メチルエフェドリン」や「ブソイドエフェドリン」も類似薬物として、同じように禁止薬物に指定されています1)。

「メチルエフェドリン」・・・尿中濃度10μg/mL
「ブソイドエフェドリン」・・・尿中濃度150μg/mL

回答の根拠②:「エフェドリン」が風邪薬や漢方薬に含まれる理由

 「エフェドリン」は気管支拡張作用も持つため、咳がひどい時の呼吸を楽にする目的で風邪薬に配合されていることがあります
 また、生薬の「麻黄(マオウ)」や「半夏(ハンゲ)」などにも「エフェドリン」が含まれているため、これらの生薬が含まれる漢方薬(例:『葛根湯』『麻杏甘石湯』、『小青竜湯』など)を使うとドーピングになってしまう恐れもあります。
エフェドリンの気管支拡張作用と交感神経興奮作用

回答の根拠③:用法・用量通りに使用してもダメなのか?~メチルエフェドリンの例

 『メチエフ(一般名:メチルエフェドリン)』は、通常投与してから24時間以内に63.7~79.7%が尿中に排泄されます2)。

 2) メチエフ散 添付文書

 「メチルエフェドリン」は、配合量の少ない『改源かぜカプセル』でも1日量40mg、『コルゲンコーワIB錠TX』には1日量60mgで配合されています。
 単純計算をしても、「メチルエフェドリン」を1日40mg摂取すると、そのうち25.48~31.88mg(40mg×63.7~79.7%)がそのままの形で排泄されます。

 また、24時間の尿量は生活環境によっても変わりますが、一般的には1~1.5L程度とされています。
 つまり、1日1Lの尿であれば尿中濃度は25.48~31.88μg/mL、1日1.5Lの尿であっても16.99~21.25μg/mLとなり、基準の10μg/mLを大幅に超えてしまうことになります。
メチルエフェドリンの尿中濃度

 たとえ用法・用量通りに使用しても、規定の濃度を明らかに超えてしまう恐れがあります。

尿量が多ければ濃度は下がるが・・・

 当然、尿量が多ければその分、尿中濃度は薄くなります。
 そのため、尿量を増やす利尿薬もドーピングを隠蔽する可能性があるものとして、禁止薬物に指定されています。

 利尿薬と併用していた場合、規定の濃度に達しなくともドーピングと見なされるのは、このためです。
 

薬剤師としてのアドバイス:薬局への相談も可能

 通常、薬局には禁止薬物の一覧が記載されている「ドーピング防止ガイドブック(日本薬剤師会・編)」が設置してあります。
 そのため、手持ちの薬が禁止薬物に該当するのかどうかわからない場合は、薬局に相談することで確認することもできます(この一覧に載っていない薬の場合には、返答に多少の時間がかかる可能性もあります)。

 禁止薬物は、ドーピング目的で使用していなくとも、ドーピングと見なされます。特に、競技会中は使用できない薬が非常にたくさんあります。
 しかし、治療目的の使用であれば認められている薬もたくさんあります(例:喘息治療薬のβ2刺激薬など)。

 知らない間にドーピングになっていて競技に出られない、といった事態を防ぐためにも、薬を使う際には細心の注意を払い、必ず医師・薬剤師などの専門家に相談するようにしてください。

+αの情報:「ヒゲナミン」も2017年1月1日から禁止薬物に

 2017年1月1日から、「ヒゲナミン」がβ2刺激薬として禁止薬物に指定されました

 「ヒゲナミン」は、「呉茱萸(ゴシュユ)」や「附子(ブシ)」、「細辛(サイシン)」、「丁子(チョウジ)」、「南天(ナンテン)」などの生薬に含まれています。
 これらの成分は、「栄養補助食品」や「のど飴」などにも含まれていることがあるため、使用にはより注意が必要です。成分名を必ず確認の上で使用するようにしてください。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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