抗生物質を2種類併用することはある?~相乗効果と複数菌へのターゲット、殺菌と静菌の拮抗


回答:基本は1種類、例外的に併用することもある

 感染症を治療する場合、抗生物質は原因菌に適した1種類だけを使うのが基本です。

 しかし、例外的に抗生物質を2種類以上を併用する場合もあります。このとき、併用する目的は大きく分けて2つのパターンがあります。
抗生物質を併用する意図
①相乗効果があり、より高い効果を得られるため
②2種以上の異なる細菌をターゲットに、それぞれ別の抗生物質を使う必要があるため


 ただし、間違った組み合わせで併用すると副作用が増えるだけでなく、かえって効果が弱まることもあります。そのため安易な併用はせず、確実な根拠(エビデンス)がある使い方だけに限定して行われているのが現状です。



回答の根拠①:相乗効果~併用で、より高い抗菌力を発揮する

 抗生物質の組み合わせによっては、単独で使うよりも、より高い抗菌力を発揮することがあります。

※相乗効果が得られる抗生物質の組み合わせの例
1.「アモキシシリン」 + 「クラリスロマイシン」
 →ピロリ菌の一次除菌で行われる併用 1)。

2.「スルファメトキサゾール」 + 「トリメトプリム」
 →尿路感染症や日和見感染症に使う『バクタ配合錠』の組み合わせ 2)。

3.「ペニシリン系」 + 「アミノグリコシド(アミノ配糖体)」
 →腸球菌による心内膜炎の治療で行われる併用 3)

 1) ランサップ 添付文書
 2) バクタ配合錠 インタビューフォーム
 3) Eur Heart J.30(19):2369-413,(2009) PMID:19713420

 こうした相乗効果の結果、より高い治療効果が得られるほか、「耐性菌」の出現を防ぐこともできます。
 ただし、相乗効果が得られる薬の組み合わせや、どういった感染症・原因菌に対して行うべきなのかは、明確に決まっています。



回答の根拠②:異なる細菌をターゲットに、別々の抗生物質を使う

 1つの抗生物質が、全ての細菌を退治できるわけではありません
 そのため、2つ以上の細菌が悪さをしているような場合や、感染症の原因と疑われる細菌が2種以上ある場合には、それぞれの細菌に対して適した抗生物質を使う必要があります。

※異なる細菌をターゲットに、抗生物質を併用する例
1.「セフェム系」や「カルバペネム系」 + 「キノロン系」
 細菌性肺炎は、多くの場合「肺炎球菌」や「インフルエンザ菌」が原因となって起こります。そのため、これらの細菌をターゲットに、「セフェム系」や「カルバペネム系」の抗生物質を使います。

 肺炎の症状が重い場合には「レジオネラ菌」による肺炎の可能性も考える必要がありますが、この「レジオネラ菌」には、「セフェム系」や「カルバペネム系」が効きません。
 そのため、「レジオネラ菌」をターゲットに「キノロン系」の抗生物質も併用することがあります。
抗生物質の併用~異なるターゲット
 こうした併用は、それぞれの異なる得意分野(抗菌スペクトル)を持つ抗生物質を組み合わせる必要があります。似たような得意分野の抗生物質を併用しても意味はありません。



回答の根拠③:殺菌と静菌の拮抗~間違った併用は逆効果

 抗生物質の中には、併用することで効果が弱まってしまうものもあります。こうした併用を敢えて行うことはありませんが、抗生物質を使っていることを医師・薬剤師に伝えていない場合などに、意図せず起こる場合があります。

※効果が弱まる抗生物質の併用の例
1.「セフェム系」 + 「テトラサイクリン系」
 「セフェム系」の抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害し、殺菌的に作用します。つまり、細菌が活発に増殖しようとしている時に、効果が発揮されます。
 「テトラサイクリン系」の抗生物質は、細菌のタンパク合成を阻害し、静菌的に作用します。つまり、細菌の活動を抑える効果があります。
抗生物質の併用~殺菌と静菌の拮抗
 そのため、「テトラサイクリン系」によって細菌の活動を抑えてしまうと、「セフェム系」の抗菌力が十分に得られなくなってしまう場合があります。



薬剤師としてのアドバイス①:抗生物質を飲んでいることは、確実に伝える

 皮膚科でニキビの治療をしている時に、鼻炎を起こして内科に行った場合。
    内科で鼻炎の治療をしている時に、耳がおかしくなって耳鼻科に行った場合。
 耳鼻科で中耳炎の治療をしている時に、歯の治療で歯医者に行った場合。

 こうした場合に、うっかりと抗生物質を併用してしまうケースは少なくありません。間違った併用は、逆効果になることもありますので、お薬手帳などで抗生物質を使っていることは、医師・薬剤師に確実に伝えるようにしてください。



薬剤師としてのアドバイス②:抗生物質は、必ず指示通りに最後まで飲み切る

 抗生物質は、感染症の原因になっている細菌の種類によって明確に使い分ける必要があります。
 更に、抗生物質の種類によって、1日1回で飲んだ方が良いのか、1日3回で飲んだ方が良いのか、が異なります。
 また、症状が治まってもきちんと最後まで飲み切らなければ、退治しそこねた細菌が「耐性」を得て、次から薬が効かなくなってしまう恐れがあります。

 このように、抗生物質は選び方・使い方が非常に難しい薬ため、市販もされていません

 抗生物質はよく処方される薬ですが、必ず医師・薬剤師の指示通りに使い、絶対に他人に譲ったり残したりしないようにしてください。



~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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