『アドエア』と『シムビコート』、同じ喘息吸入薬の違いは?~デバイス・用法用量の幅と、薬の性質差


回答:噴霧型のデバイスがある『アドエア』、吸入回数を調節できる『シムビコート』

 『アドエア(一般名:フルチカゾン + サルメテロール)』と『シムビコート(一般名:ブデソニド + ホルモテロール)』は、どちらも喘息治療に使う吸入薬です。

 『アドエア』には息を吸う力が弱い人でも扱える噴霧型(MDI)のデバイスがあり、高齢者や幼児でも使いやすい薬です。
 『シムビコート』は症状によって用量を調節でき、更に頓服としての使い方もできます。
アドエアとシムビコート3
 『アドエア』と『シムビコート』には、炎症を抑える「吸入ステロイド」と、気管支を広げる「β2刺激薬」の2種類の薬が入っています。共に喘息治療の中心となる薬で、厳密な使い分けが必要なほど効果に大きな違いはありません。

 そのため、こうしたデバイスや使い方の違いによって使い分けることがあります。



回答の根拠①:デバイスの違い

 吸入薬のデバイス(機器)には、「定量噴霧吸入器(MDI)」と「ドライパウダー吸入器(DPI)」の2種類があります。それぞれ、一長一短の特徴があるため、使う人の状況に応じてデバイスを選びます。
吸入薬デバイスの違い~定量噴霧吸入器とドライパウダー吸入器
※定量噴霧吸入器(MDI)
 必要な量の薬が霧状になって出てくるため、それを吸い込むタイプの吸入器
吸入・・・ゆっくり行う
長所・・・吸い込む力が弱くても、適切な量の薬を吸入できる
短所・・・薬を出すタイミングと、息を吸い込むタイミングを合わせる必要がある

※ドライパウダー吸入器(DPI)
 吸入器に充填されている粉末状の薬を、自分で吸い込むタイプの吸入器
使い方・・・強く、速く行う
長所・・・添加物である噴霧剤(ガス)が入っていないため、匂いや刺激が少ない
短所・・・吸う力が弱いと、必要な量の薬を吸入できないことがある

 『アドエア』には、「定量噴霧吸入器(MDI)」の「エアゾール」と、「ドライパウダー吸入器(DPI)」の「ディスカス」と、両タイプの吸入器があります。
 特に、喘息の症状が酷い時は、元から息を吸う力の弱い高齢者や子どもでは、更に息を吸えなくなっていることがあります。そういった場合でも、「定量噴霧吸入器(MDI)」のある『アドエア』は使いやすい薬と言えます。



回答の根拠②:吸入回数の違い、頓服で使えるかどうか

 『アドエア』も『シムビコート』も、通常は1回1~2吸入を1日2回(合計2~4吸入)で使います1,2)。

 1) アドエア 添付文書
 2) シムビコート 添付文書

 病状が安定している場合には問題ありませんが、急に症状が悪化した場合には薬を増やす必要があります。

 このとき、『アドエア』には用法・用量に幅が無いため、薬を変更するなどの対応が必要です。
 一方、『シムビコート』は維持療法として合計8吸入まで薬の量を増やすことができます2)。更に、喘息発作が起きた場合には頓服で使う方法もあります2)。
アドエアとシムビコート~吸入回数の差

※シムビコートの頓服の使用方法 2)
①発作が起きた際に追加で1吸入
②数分経っても治まらない場合には更に1吸入を追加する
③1~2を繰り返し、1回の発作につき最大6吸入まで、1日最大12吸入まで増量可能

 このことから、『シムビコート』は1つの薬だけで薬の量を調節して使うことができる便利な薬と言えます。ただし、こうした増量は必ず医師・薬剤師の指示に従って行うようにしてください。



回答の根拠③:有効成分の違いと、実際の治療効果

 「吸入ステロイド」と「β2刺激薬」は、一緒に使うことで相乗効果を発揮します3)。そのため、ガイドラインでも喘息が軽症の段階から併用するのが治療の基本として推奨されています4)。
吸入ステロイドとβ2刺激薬の相乗効果
 3) J Allergy Clin Immunol.114:S32-50,(2004) PMID:15309017
 4) 日本アレルギー学会 「喘息予防・管理ガイドライン (2015)」

 この2種類の薬は、昔は別々の吸入薬として使われていましたが、配合薬として吸入した方が楽で効果も高いことから、現在は『アドエア』や『シムビコート』などの配合薬が使われています。
 気管支喘息の治療に対しては、『アドエア』と『シムビコート』のどちらも少ない副作用で非常に高い効果があり、厳密な使い分けが必要なほどの違いはありませんが、細かな違いとしては以下のような差があります。

ステロイドの違い~「フルチカゾン」と「ブデソニド」

 『アドエア』に使われている「フルチカゾン」と、『シムビコート』に使われている「ブデソニド」は、どちらも過剰な免疫を抑えて炎症を鎮めるステロイドです。
 「フルチカゾン」の方が、「ブデソニド」よりも免疫抑制・抗炎症作用は10倍ほど強いことが知られています5)。

 5) Allergy.54(7):691-9,(1999) PMID:10442524

 実際、喘息治療に対する「吸入ステロイド」単独の効果は、「フルチカゾン」の方が「ブデソニド」よりも高いことが報告されています6)。
 一方で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に対して、『アドエア』と『シムビコート』を使っていた場合、『アドエア』の方が肺炎発症のリスクが高かったことも報告されています7)。
アドエアとシムビコート~ステロイドの違い
 6) Respir Med.92(1):95-104,(1998) PMID:9519232

 7) BMJ.346:f3306,(2013) PMID:23719639 ※PATHOS試験

 このことから、「吸入ステロイド」としては『アドエア』に使われている「フルチカゾン」の方が効果も高い分、副作用のリスクも高く、より慎重に扱わなければいけない薬であると言えます。

β2刺激薬の違い~「サルメテロール」と「ホルモテロール」

 『アドエア』に使われている「サルメテロール」と、『シムビコート』に使われている「ホルモテロール」は、どちらも気管支を広げて呼吸を楽にする「β2刺激薬」です。

 「サルメテロール」は量を増やしても効果はそれほど変わりませんが、「ホルモテロール」は量を増やすことで気管支拡張効果も高くなる特徴(用量依存性)を持っています8)。
アドエアとシムビコート~β2刺激薬の違い
 8) Br J Pharmacol.113(3):687-692,(1994) PMID:7858856

 『シムビコート』が症状に合わせて吸入量を増やすことができるのは、このためです。



薬剤師としてのアドバイス:使い方に不安がある場合は、遠慮せず薬剤師に相談を

 『アドエア』と『シムビコート』のどちらが良いか、という議論は様々あり、明確な結論は出ていません。
 こうした薬の細かな効能差よりも、きちんと吸入器を使えるかどうかの方が、喘息の治療には大きな影響を与えます
吸入薬~薬の違いよりも使い方

 「定量噴霧吸入器(MDI)」は、薬を噴霧するタイミングと息を吸い込むタイミングが合わなければ、きちんと気道・気管支へと薬が届きません。
 「ドライパウダー吸入器(DPI)」は、使う前に吸入口に息がかかったり、きちんと薬を充填できていなかったりすると、薬を吸入することができません。

 こうした使い方の難しさによって正しく吸入薬を使えないと、喘息の症状は悪化してしまうことになります。

 一度説明を聞いたけどよくわからない、きちんと薬を使えているのかどうかわからない、という場合には、吸入器を持って薬局へ行き、薬剤師にもう一度手順を教えてもらうようにしてください。
 また、何度も使っているうちに、自己流の間違った癖が身についている場合もあります。体調が悪くなってきたような場合にも、一度使い方を確認することをお勧めします。


ポイントのまとめ
1. 『アドエア』は、「定量噴霧(MDI)」と「ドライパウダー(DPI)」の両タイプがある
2. 『シムビコート』は、一つの薬で用量調節・頓服の使い方ができる
3. 吸入薬は、「正しくきちんと使えているかどうか」が効き目に大きく影響する





添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆ステロイドの成分
アドエア:フルチカゾン
シムビコート:ブデソニド

◆β2刺激薬の成分
アドエア:サルメテロール
シムビコート:ホルモテロール

◆適応症
アドエア:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患
シムビコート:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患

◆デバイス(吸入器)の種類
アドエア:エアゾール(定量噴霧吸入器(MDI))、ディスカス(ドライパウダー吸入器(DPI))
シムビコート:タービュヘイラー(ドライパウダー吸入器(DPI))

◆1日の吸入最大量
アドエア:4吸入
シムビコート:維持療法で8吸入、頓服併用で12吸入

◆製造販売元
アドエア:グラクソ・スミスクライン
シムビコート:アストラゼネカ



+αの情報①:吸入補助器具を使う方法

 「定量噴霧吸入器(MDI)」では、特に薬を噴霧するタイミングと息を吸い込むタイミングを合わせる、という吸入方法を難しく感じる人が少なくありません。

 そういった場合、自然な呼吸で吸入できる「ネプライザー」や、自分のタイミングで薬を吸入できる「スペーサー」などの吸入補助器具を使うこともできます。

 どうしても吸入が難しい場合には、その旨を一度薬剤師に相談するようにしてください。



+αの情報②:吸入した後は、うがいを忘れずに

 「ステロイド」の成分が口や喉に残っていると、口の中で菌が増えたり、声が嗄れたりといった副作用を起こす恐れがあります。
 「β2刺激薬」の成分が口や喉に残っていると、粘膜から吸収されて不必要な全身作用を起こす恐れがあります。

 吸入薬を使ったあとは、うがいを忘れずに行うようにしてください。



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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