『ナウゼリン』は、二日酔いや乗り物酔いの吐き気にも効く?~嘔吐のメカニズムと薬の作用


回答:効かなくはないが、もっと適した薬や治療がある

 『ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)』は、吐き気止めの薬です。そのため、二日酔いや乗り物酔いの吐き気にも、ある程度の効果が期待できます。

 しかし、二日酔いは水分補給と休息で治すのが基本で、積極的に薬を使うことはお勧めできません。
 また、乗り物酔いには『トラベルミン(一般名:ジフェンヒドラミン+ジプロフィリン)』などの専用の薬の方が適しています。


回答の根拠:吐き気が起こるメカニズムと、『ナウゼリン』の効果

 吐き気は、何らかの原因によって「嘔吐中枢」が刺激されることによって起こります。この「嘔吐中枢」がどういった経路で刺激されるかによって、適した薬が変わります。
吐き気の原因による分類~嘔吐中枢を刺激する経路
大脳皮質が、「嘔吐中枢」を直接刺激
② 「化学受容器引金帯(CTZ)」を介して、「嘔吐中枢」を刺激
③ 内耳の「前庭系」が、「CTZ」と「嘔吐中枢」を刺激
④ 胃腸などの消化器が、「CTZ」と「嘔吐中枢」を刺激

 二日酔いのメカニズムは正確には明らかになっていませんが、脱水などのほかに、血液中に分解し切れないアルコールやアルデヒドが蓄積して「CTZ」を刺激するなど、主に②に分類されると考えるのが妥当です。

 乗り物酔いによる吐き気は、③に分類されます。



1. 大脳皮質が、「嘔吐中枢」を直接刺激して起こる”吐き気”

 例えば、以前抗がん剤を使った際に強い吐き気を感じた人は、次に薬を使う際、薬を使う前から吐き気を感じる傾向があります(※そのため、抗がん剤治療では、吐き気は治療するのではなく予防する必要があります)。

 こうした精神的な不安や緊張などによって起こる吐き気は、大脳皮質が「嘔吐中枢」を直接刺激して起こります1)。

 1) 日本緩和医療学会 「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン(2011)」


 『ナウゼリン』は「嘔吐中枢」には直接作用しないため、こうした吐き気には効果がありません。
大脳皮質からの嘔吐中枢の刺激とナウゼリン

2. 「化学受容器引金帯(CTZ)」を介して、「嘔吐中枢」が刺激されて起こる”吐き気”

 脳の「第四脳室底」には、血液やホルモン・薬物・毒素など、様々な催吐性刺激を感知する「化学受容器引金帯(CTZ:Chemoreceptor Trigger Zone)」と呼ばれる場所があります。
 血液中の薬物・毒物による吐き気(薬の副作用や中毒)、ホルモンバランスの崩れ(片頭痛つわり)で起こる吐き気は、この「CTZ」を介して起こると考えられています。
CTZを介した吐き気とナウゼリン2~薬の副作用やつわり
 『ナウゼリン』は、この「CTZ」の働きをブロックする作用があります2)。

 2) ナウゼリン錠 インタビューフォーム

 二日酔いによる吐き気のメカニズムは十分に明らかにはなっていませんが、血中のアルコールやアルデヒドが原因で起こっていると考えると、『ナウゼリン』で効果が得られる可能性があります。
 また、『ナウゼリン』は胃腸の働きを整える作用もあるため2)、二日酔いの胃炎や消化不良などで起こる吐き気にも効果が期待できます。

 ただし、二日酔いの諸症状は脱水症状や低血糖・寝不足・疲れなどが主な原因になるため、水分補給や休息が最も良い治療方法です。

※漢方薬の『五苓散』は体内の水の過不足を整えることで、二日酔いを治療できる薬です。


3. 内耳の「前庭系」が、「CTZ」と「嘔吐中枢」を刺激して起こる”吐き気”

 乗り物酔い(動揺病)は、目から入ってくる情報と平衡感覚とにズレがあると起こります。
 このとき、平衡感覚を司る内耳の「前庭系」から発せられる異常な信号が、「CTZ」と「嘔吐中枢」の両方を刺激することによって、吐き気の症状が現れると考えられています1)。
乗り物酔いとナウゼリン、トラベルミン
 『ナウゼリン』は、このうち「CTZ」を介した吐き気には効果があります2)が、「嘔吐中枢」には作用しないため、乗り物酔いには十分な効果が得られない場合があります。
 そのため、『ナウゼリン』の適応症には、乗り物酔いは含まれていません2)。

 一方、乗り物酔いの薬『トラベルミン』は、直接「嘔吐中枢」を抑えるほか、平衡感覚の失調などにも効果があり、乗り物酔いに保険適用のある薬です3)。

 3) トラベルミン配合錠 添付文書



4. 胃腸などの消化器が、「CTZ」と「嘔吐中枢」を刺激して起こる”吐き気”

 胃炎や消化不良など、消化器にトラブルが起こると、それが原因で”吐き気”が起こることがあります。
 こうした「末梢性」の吐き気は、異常な胃腸の働きが「CTZ」や「嘔吐中枢」を刺激するほか、胃腸の異常な動きが吐き気の直接の原因にもなります。
消化器の異常による吐き気とナウゼリン
 『ナウゼリン』は、こうした吐き気に対して「CTZ」をブロックすると共に、胃腸の働きを整えることによって効果を発揮します2)。


 また、『ガスモチン(一般名:モサプリド)』などの薬も、胃腸の働きを整えることで吐き気を抑える効果があります4)。

 4) ガスモチン錠 添付文書
 


薬剤師としてのアドバイス①:二日酔いの諸症状は、脱水症状や低血糖・寝不足が原因

 二日酔いでは、頭痛や吐き気といった症状がよく現れますが、これらの諸症状は、脱水症状や低血糖・寝不足などが主な原因です。
二日酔いと痛み止め、吐き気止め
 そのため、頭痛があるから『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』、吐き気があるから『ナウゼリン』といったように、薬を最優先で使うということはお勧めできません。
 特に吐き気は、飲み過ぎたお酒を体の外に出そうという生物にとっての防衛反応です。そのため、いきなり薬で吐き気をとめてしまうことは望ましいことではありません。

 症状が治まるまで、水分・糖分補給をしながら、しばらく体を休めておくことや、二日酔いに効果のある『五苓散』などの漢方薬を使うのが最善です。


 なお、寝るとアルコール分解が遅くなるため、飲み過ぎた場合には少し夜更かして二日酔いを回避・軽減することも可能です。



薬剤師としてのアドバイス②:乗り物酔いの薬『トラベルミン』は、先に飲んでおく薬

 乗り物酔いの薬『トラベルミン』は、車や船に乗る30分前に飲んでおくことで、乗り物酔いを防ぐことができます。
 乗り物酔いが起こってから飲んでも効果はありますが、酔いやすい場合には、乗り物に乗る30分前に飲んでおくことをお勧めします。

 また、長時間のフライトや乗船の場合には、4時間ほど間隔をあけて2錠目を使うなど、効果が途中で切れないようにする必要もあります。




+αの情報:『プリンペラン』も同じ

 『ナウゼリン』と同じ作用で吐き気を抑える『プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)』も、二日酔いの吐き気止めとしては適していません。


 特に、『プリンペラン』は血液脳関門を通りやすいため、二日酔いなどの脱水状態で安易に使うと、副作用が起こりやすくなります5)。そのため、『ナウゼリン』よりも注意が必要な薬と言えます。


 5) プリンペラン錠 添付文書


 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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