■サイト内検索


スポンサードリンク

ベンゾジアゼピン系睡眠薬 似た薬の違い

/

『レンドルミン』と『ロヒプノール』、同じ「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬の違いは?~作用時間と使い分け、併用の是非

回答:寝付きを良くする『レンドルミン』、熟睡できるようにする『ロヒプノール』

 『レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)』と『ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)』は、どちらも不眠治療に使う「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬です。

 『レンドルミン』は作用が短く、寝付きの悪い「入眠障害」に使います。
 『ロヒプノール』は作用が長く、途中で目が覚める「中途覚醒」に使います。
レンドルミンとロヒプノール
 このように、『レンドルミン』や『ロヒプノール』などの「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬は、効き目の強さではなく長さによって使い分けます。
 やむを得ない場合、作用の短い薬・長い薬を一緒に使うこともありますが、「ベンゾジアゼピン系」の薬は併用しないのが大原則です。

回答の根拠①:作用の短い『レンドルミン』~寝付きをよくする睡眠薬

 不眠の症状の一つに、布団に入ってもなかなか眠れない、という「入眠障害」があります。
 この場合、睡眠薬の効果は布団に入ってから寝付くまでの間にだけ必要です。そのため、『レンドルミン』など効き目が速く現れて消失する「短時間型」の睡眠薬を使います。
短時間型の睡眠薬のイメージ
※超短時間型(半減期:~6時間)
『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』
『マイスリー(一般名:ゾルピデム)』

『アモバン(一般名:ゾピクロン)』
『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)』

※短時間型(半減期:6~12時間)
『レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)』
『ロラメット(一般名:ロルメタゼパム)』
『リスミー(一般名:リルマザホン)』

使い勝手は良いが、依存や離脱症状に注意

 『レンドルミン』など作用時間の短い「短時間型」の睡眠薬は、翌朝にまで効き目を持ち越すことが少なく、また眠れないと感じた日にだけ使うこともできるなど、非常に使い勝手の良い睡眠薬です。

 しかし、睡眠薬に対する依存は、作用時間の短いもので起こりやすいとされています1)。使い勝手が良い分、つい使い過ぎ・頼りがちになってしまうことに注意が必要です。

 1) Drug Saf.9(2):93-103,(1993) PMID:8104417

回答の根拠②:作用の長い『ロヒプノール』~熟睡できるようにする睡眠薬

 不眠の症状の一つに、眠っても途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」や、不必要なほど朝早くに目が覚める「早朝覚醒」があります。
 この場合、睡眠薬の効果は一晩中、朝まで続いている必要があります。そのため、『ロヒプノール』など効き目が長く続く「中~長時間型」の睡眠薬を使います。
中~長時間型の睡眠薬のイメージ
※中間型(半減期:12~24時間)
『ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)』
『ベンザリン(一般名:ニトラゼパム)』
『ユーロジン(一般名:エスタゾラム)』

※長時間型(半減期:24時間~)
『ドラール(一般名:クアゼパム)』
『ダルメート(一般名:フルラゼパム)』
『ソメリン(一般名:ハロキサゾラム)』

依存や離脱症状は少ないが、翌朝・日中まで眠気が続く「持ち越し効果」に注意

 『ロヒプノール』など作用時間の長い「中~長時間型」の睡眠薬は、続けて使うことで血中濃度が安定(定常状態)し、身体を眠りやすい状況で維持することができます。

 「短時間型」の睡眠薬に比べ、薬に対する依存や減量した際の離脱症状・反跳性不眠といったトラブルは起こりにくい傾向にあります。そのため、こうしたトラブルが問題になる場合には、「短時間型」の薬を「長時間型」の薬に切り替えてから減量する、という方法をとることが推奨されています2)。

 2) The Maudsley Prescribing Guidelines in Psychiatry,11th Edition

 ただし、翌朝・日中にまで眠気が続いてしまう「持ち越し効果」が出やすいことに注意が必要です。

回答の根拠③:作用時間の異なる睡眠薬を併用することのメリット

 寝付きも悪く、途中で目が覚めることもあるという場合には、作用の短い睡眠薬と作用の長い睡眠薬を併用することもあります。
 しかし、睡眠薬の併用で効果が高まる、とする根拠はなく、特に3種以上の「ベンゾジアゼピン系」の併用は避けなければならない、とされています3)。

 3) 日本睡眠学会 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン (2013)」

 そのため、睡眠薬は単剤で使うのが原則で、やむを得ない場合でも基本2種以下に留めておく必要があります。

催眠作用の強い抗うつ薬や、少量の抗精神病薬の併用も選択肢

 「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬が効きにくい場合には、増量・併用するより、別の作用を持つ薬を使うことも選択肢になります3)。

※抑うつ状態がある場合
催眠作用の強い抗うつ薬(例:『リフレックス(一般名:ミルタザピン)』など)
※不安・焦燥(イライラ)が強い場合
少量の抗精神病薬(例:『セロクエル(一般名:クエチアピン)』
※昼夜逆転している場合
『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』

薬剤師としてのアドバイス:睡眠薬を使いながら、不眠の原因を根本的に解決する

 睡眠薬を使えば、多くの場合すんなりと眠れるようになりますが、睡眠薬はずっと使い続ける薬ではありません。そのため、睡眠薬を使いながら、不眠の原因を根本的に解決する必要があります。

※若い人で多い不眠の原因
1.カフェインの摂り過ぎ
2.夜遅くまでパソコンやスマートホンなどの明るい液晶画面を見続けている
3.部屋を明るくしたまま寝ている
4.深夜に食事を摂って睡眠が浅くなっている

※高齢者に多い不眠の原因
1.日中の運動不足
2.昼寝のし過ぎ
3.部屋に引き籠りがちで日光を浴びていない
4.あまりに早い時間から布団に入っている

 こうした不眠の原因を取り除き、最終的には薬なしでもぐっすりと眠れるように、生活習慣・環境の改善も併せて行うようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『レンドルミン』などの「短時間型」は入眠障害に使うが、依存しやすいことに注意
2. 『ロヒプノール』などの「中~長時間型」は中途覚醒に使うが、持ち越し効果が多いことに注意
3. 「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬を併用するメリットは少ないため、安易な多剤併用は控える

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆薬効分類
レンドルミン:睡眠導入剤(ベンゾジアゼピン系)
ロヒプノール:不眠症治療剤(ベンゾジアゼピン系)

◆適応症
レンドルミン:不眠症、麻酔前投薬
ロヒプノール:不眠症、麻酔前投薬

◆半減期(t1/2)
レンドルミン:7時間 / 短時間型
ロヒプノール:19.2時間 / 長時間型

◆剤型の種類
レンドルミン:錠(0.25mg)、D錠(0.25mg)
ロヒプノール:錠(1mg、2mg)、静注

◆製造販売元
レンドルミン:ベーリンガー・インゲルハイム
ロヒプノール:エーザイ

+αの情報:海外への持ち出しに注意

 日本では使用が許可されている薬でも、国によってはその扱いは様々です。
 特に、『ロヒプノール』などの「フルニトラゼパム」製剤は、アメリカでは所持も禁止されているため、たとえ治療目的の所持であっても罰せられる恐れがあります。

 海外渡航時には、主治医との相談・各大使館への問い合わせをし、持ち出して良い薬かどうかを確認するようにしてください。またその際、渡航中の無用なトラブルを避けるためにも「薬剤証明書」を書いてもらうことをお勧めします。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 『ワーファリン』と『バイアスピリン』、同じ血液をサラサラにす…
  2. 『アムロジン』・『ワソラン』・『ヘルベッサー』、同じCa拮抗…
  3. 『エンシュア』・『ラコール』・『エネーボ』、同じ半消化態栄養…
  4. ステロイド外用剤の『リンデロン』、DP・V・VG・Aの違いは…
  5. 『ラミシール』と『イトリゾール』、同じ内服の水虫薬の違いは?…
  6. 『メルカゾール』と『チウラジール』、同じ甲状腺の薬の違いは?…
  7. 『ジスロマック』と『クラリス』、同じマクロライド系抗菌薬の違…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP