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薬学コラム 薬局の構造

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「医薬分業」の規制見直しの動き~利便性だけで考えることの落とし穴


 以前『病院と薬局の間にあるフェンス』について、構造的な独立に対する規制の緩和の動きがあることを紹介しましたが、そもそもの「医薬分業」に対する規制緩和もテーマに上がっています。

薬剤師から見た、医薬分業のメリット:遠慮なく意見できる立場

 いち薬剤師の立場から意見を述べると、病院と薬局が経営的にお互い独立していることのメリットは大きい、と言えます。理由は、あくまで第三者として処方を監査できるからです。
 これがもし”いつもお世話になっている、雇用主でもあるドクター”からの処方・・・というものであった場合、どの程度の遠慮や怖気づきといった要素が入ってくるか、わかりません。

 こうした心的要素が入り込んできてしまうと、本来ならば患者のために確認すべきことであっても、「医師をの手を煩わせるのは悪い」という理由で、疑義照会が行われない可能性すらあります(社長の規格案に、毎回ケチをつけなければならない仕事と考えてもらうとわかりやすいです。ほとんどの人は、そのうち「社長がこう言っているんだし、いいや」となってしまうでしょう)。こうした空気は、医療というもののあり方として非常に悪いことは、言うまでもありません。

 これは疑義照会に留まらず、医療過誤が起きた際の対応にも影響してくるでしょう。経営がお互いに独立しているからこそ、”隠蔽”などの行動が起こりにくいとも言えます。

お金の流れから見る、医薬分業

 病院の中には、既にコンビニや本屋、飲食店などがテナントとして入っているケースもよくあります。同じように、薬局もテナントとして入ることは可能でしょうか。

 病院の中に薬局があれば、患者はわざわざ別の建物へ行かなくても薬がもらえます。確かに、患者の利便性に注目すれば非常にメリットが大きいでしょう。しかし、利便性ばかりに目をとられてはいけません。

 病院の建物の中に店を構えるということは、店は病院へテナント料や家賃といったお金を支払うことになります。「病院の建物の中」という圧倒的に有利な立地を得るために、薬局はなんとしても出店したい、と考えるでしょう。すると、病院はいくらでもテナント料や家賃を吊りあげることが可能です。極端な話、月100万円もの家賃を支払っても、300万円の利益が出るのであれば、出店を考えるのが経営です。300万円の利益が出る場所を100万円で貸し出すのもまた、経営です。

 薬局と病院は、基本的に経営が独立していなければなりません。しかし、特定の条件を満たせば、病院が持っている土地や建物に薬局がテナントとして入ることは可能です。実際にそういった形態の薬局は全国にたくさん存在します。

 以前、大きな新病院建設に際し、地方都市のわずか78坪の土地が10億円という高額で落札されたケースが話題になりました(兵庫県三木市)。これは薬局が病院へ支払うお金ですが、どこまでが「土地」に対するお金で、どこからが「病院に対する便宜」なのか、と思われても無理はありません。

 そして、このように支払われる多額の資金は、どこから調達してきたお金でしょうか。紛れもなく、患者が薬局へ支払う「調剤報酬」です。
 本来であれば、薬局が得た利益は、薬局が提供するサービスを向上させるために投資する必要があります。薬剤師の接客技術はお世辞にも高いとは言えません。設備が充実している薬局も多いとは言えません。本来はそういった教育や設備投資に使われるはずだったお金が、テナント料や土地代と称して病院へ流れて行ってしまう、これは果たして”医療”という全体を考えた時に、本当に良いことなのでしょうか。

便利か不便か、だけで医薬分業を語らない

 「医薬分業」と言うと、いつも議論は「患者の利便性」に焦点が当たります。そのため、便利さだけを追求すれば、やはり病院内に薬局がある方が良い、ということになってしまいます。この点に関しては自分自身もそう思います。

 われわれ薬剤師がこうした動きに否定的なのは、何も薬局の既得権益を守りたいだけ、というわけではありません。薬局と病院が癒着することによって最も不利益を被るのは、便宜と思えるような使い方をされるお金を「調剤報酬」として薬局に支払わなければならない、患者自身である、とも言えるのです。また、そんなお金を税金や保険料として納めなければならない国民である、とも言えるのです。

 「医薬分業」は、決して利便性だけで議論して良いものではありません。もし院内処方が良いと叫ぶのであれば、少なくともこうした癒着や馴れ合い、隠蔽といった、医療にあってはならない風潮を排除するために、医薬分業よりも良い代替策を提示することが必要です。
 
 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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