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薬剤師のありかた 薬学コラム

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「かかりつけ薬局」という理想と現実~Fizzが目指す「かかりつけ機能」の提供


 最近、新聞やテレビなどで頻繁に「かかりつけ薬局」という言葉を目にします。今月22日、厚生労働省がこの「かかりつけ薬局」を増やすため、調剤報酬を次期改定以降、抜本的に見直す方針であることを報告したからです。

 「かかりつけ薬局」というシステムには賛同できますし、我々はそうした「かかりつけの薬剤師」となることを目標に活動しています。

 しかし、「かかりつけ薬局」を全国的に普及させるためには、「かかりつけ薬局」のシステムを国民に押し付けるのようなやり方では成功するはずがありません。まず、薬局が変わることで国民の薬局に対する認識を変え、「かかりつけ薬局」というシステムに対するニーズを生じさせることが先決です。

 

今の薬局業界で勝つための三要素

 いまの薬局業界では、3つの要素さえ持っていれば勝つことができます。

 第一に、「立地」です。処方箋をたくさん発行する医療施設の目の前に薬局があること、これによってその施設が発行する処方箋の大半を独占することができるからです。

 第二に、「在庫」です。豊富な薬の在庫があれば、どんな特殊な処方にも対応することができます。

 第三に、「マンパワー」です。薬剤師の頭数が揃ってさえいれば、処方箋をさばいて利益を上げることができます。

 いま、この「立地」・「在庫」・「マンパワー」という3要素を兼ね備えた薬局は、圧倒的な強さを誇っています。

 なぜ圧倒的な強さを誇れるのか、理由は簡単です。ユーザーにとって今薬局に求める機能がこの3つだからです。

かかりつけ薬局と相反する、三要素

 「かかりつけ薬局」という存在は、この3つの要素と相反するものです。

 しかし、国や薬剤師たちは、このユーザーの求めを完全に無視し、「かかりつけ薬局」なるものを押し付けようとしています。

 「かかりつけ薬局」がどんなシステムなのか、は方々で詳しく説明されているので割愛しますが、先述の3つの要素のどれも兼ね備えるものではありません。

 いまユーザーがどこか1つの薬局を自分の「かかりつけ薬局」にしようと思い立って、少し離れた病院の処方箋を、その薬局へ持って行ったとしましょう。

 まず、隣にある門前薬局を通過して、「かかりつけ薬局」まで足を運ぶ必要があります。わざわざ移動しなければなりません。

 次に、おそらく初回は薬の在庫がありません。薬は膨大な種類があるため、全種類を在庫しておくことは不可能です。そのため、普段は扱わないような系統の薬は在庫していないのは当然です。フランス料理店に「お蕎麦を打ってくださいな」と訪れるようなものです。

 そして、ほとんどの薬局は門前の病院が発行する処方箋に対応できるギリギリの数の薬剤師しか配置していません。そのため、別の病院の処方箋を持ち込んだ場合、対応に追われて待ち時間は長くなります。

 わざわざ遠くの薬局まで足を運んだ挙げ句、薬の在庫が無いと言われ、長時間待たされる。そんなものを、誰が好んで利用するというのでしょうか。

「かかりつけ」にするためのハードル

 確かに、継続して処方箋を持ち込んでいれば、在庫もしておいてもらえるでしょうし、待ち時間も減ってくると思います。

 しかし、まず最初のハードルを越える際に生じる不便を、全てユーザーに押し付けるようなシステムは、普通はビジネスとしてあり得ません。にも関わらず、”薬局”という特殊な業界はそれを平気でやろうとします。

”患者さん”と呼ぶ弊害~薬局という特別意識

 ここでは薬局を訪れる方を敢えて「ユーザー」と呼びましたが、これも”薬局”という業界では非難轟々でしょう。”薬局”では、訪れる方を「ユーザー」や「顧客」と呼ぶと怒られます。しかし、何故ダメなのか、未だに合理的な説明を受けたことは一度もありません。

 「ユーザー」や「顧客」と呼ぶと、他の競争の激しい一般企業と同じ基準で物事を考えなければならないからではないか、と私は考えています。「患者さん」と呼ぶことによって、”薬局”は特別な存在で、他の接客業や小売業のような企業努力は必要ない、という言い訳にしている可能性があります。

 リッツ・カールトンや星野リゾートに代表されるような一流の宿泊施設では、従業員は接客の基本を備えた上、常にユーザーのニーズを探り、日々接客技術を磨き、人によって対応も臨機応変に変えていきます。

 こうした企業努力は非常にコストもかかり、教育も大変です。薬局でそこまでの接客技術が必要かどうかは別問題として、同じ接客業として、同じ視点で物事を考えても良いはずです。世の中には、そんな高いレベルの接客技術が存在しているのです。

 ところが、”薬局”は『薬局だから』という謎の理論によって、こうした現実から目を逸らし、企業努力や従業員の教育を怠っているのではないか、と思えてなりません。

 こうした『薬局だから』という謎の理論が、「かかりつけ薬局」のシステムを国民に強制し、生じる不便を全てユーザーに平気で押し付けるような態度に出ているのではないでしょうか。

かかりつけ薬局の性能を垂れ流しても無意味

 国民1人1人の健康や安全を考えたとき、「門前薬局」よりも「かかりつけ薬局」の方が優れていることに疑う余地はありません。

 問題は、「かかりつけ薬局」が持つ機能が、国民にとって真に必要とするべき機能であるにも関わらず、「門前薬局」が持つ「立地」・「在庫力」・「マンパワー」という目先の機能の方を選んでしまうような認識をされている、ということです。

 全国の薬局をいきなり「かかりつけ薬局」に変えて、このシステムを強制するのでは何の解決にもなりません。ニーズのないところに制度を押し付ける、薬剤師らしいと言えば薬剤師らしい、自己満足で終わるようなシステムになるでしょう。

 国民のこの誤った認識を改めるためには、まず今の時点から、「かかりつけ薬局」を利用すれば自分にとってどんなメリットがあるのか、それを国民に肌で感じてもらう必要があります。

 一流の自動車セールスマンは、どうやって車を売るでしょうか。

 カタログを見ればわかるような車の性能を延々と語るでしょうか。

 違うはずです。『この車に乗ったら、貴方の人生はこんな風に変わりますよ』といった物語を話すはずです。

 「かかりつけ薬局」を推し進めるために必要なのも同じです。

 「かかりつけ薬局」がの性能を垂れ流していても意味はありません。「かかりつけ薬局」があることで、自分の人生がどう変わるのか、ユーザーが知りたいのはそこです。

 「かかりつけ薬局」があれば、貴方の医療がこんな風に変わりますよ、といった物語をまず話す必要があるのではないでしょうか。

Fizzが目指す「かかりつけ機能」の提供

 もし貴方に「かかりつけ薬局」があれば、いつでも薬や医療についての疑問を相談することができる・・・Fizzでは、そんな理想の片鱗を、実際に少しでも感じてもらいたいと考え、この『お薬Q&A』を発信しています。

 世の中には、薬に対して疑問や不安を抱いている人が大勢いるはずです。本来、こうした疑問や不安は、薬をもらう際に薬局で解消すべきことです。
 ところが、薬局が混雑していて話す暇がなかったり、薬局に居る薬剤師が頼りなかったり、様々な理由で疑問や不安を解消できないまま、なんとなく薬を使っている人は多いと思います。

 こういった時、「かかりつけ薬局」があれば、自分がいつも頼っている薬剤師に聞いてみる、といった方法を選ぶことができます。例え処方箋が無くとも薬局に立ち寄って、”医療の総合コンサルタント”として薬剤師を使えば良いのです。

 「かかりつけ薬局」が持つこのような”情報提供”の機能には、「立地」も「在庫力」も「マンパワー」も必要ありません。「知識」と「伝える力」があれば、インターネットを介して提供することも可能です。

 Fizzでは「かかりつけ薬局」の普及に先駆けて、こうした「かかりつけ機能」の提供を目指していきたいと考えています。

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■主な活動


★6月22日のフジテレビ「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せました。
★3月23日発売の「異世界薬局(コミック版)」に薬学監修として携わりました。
★12月28日のYahoo!ニュース動画「抗生物質が効かなくなる日」に監修として携わりました。

★PharmaTribuneにて連載中

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