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解熱鎮痛薬・NSAIDs 胃粘膜保護薬

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『ムコスタ』で『ロキソニン』の胃粘膜傷害は防げる?~NSAIDsの胃粘膜障害に対する効果と保険適用

回答:薬理学的には効果があるが、保険適用上の問題がある

 『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』などのNSAIDs(解熱鎮痛薬)には、胃粘膜を荒らす副作用があり、長く使い続けた場合には胃潰瘍を起こす恐れがあります。

 『ムコスタ(一般名:レバミピド)』は、こうしたNSAIDsによる胃粘膜への副作用を防ぐ目的で処方されることがあります。
 これは、『ムコスタ』が安価で安全性も高い上、食前・食後でも薬の効果に影響せず頓服の痛み止めと一緒に服用することにも適しているからです。

 ただし、『ムコスタ』はNSAIDsによる胃潰瘍に対して保険適応がありません

 そのため、厳密には『サイトテック(一般名:ミソプロストール)』『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』、『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』など、NSAIDsによる胃潰瘍に対して保険適用が認められている胃薬を使う必要があります。

回答の根拠①:NSAIDsによる胃粘膜傷害への効果

 『ムコスタ』の適応症には、NSAIDsによる胃粘膜傷害は含まれていません1)。そのため、保険適用上は併用に問題があります。

 1) ムコスタ錠 添付文書

 しかし、『ムコスタ』には胃粘膜での「プロスタグランジン」増加作用があり、NSAIDs胃粘膜傷害モデルを使った検証においても、胃粘膜の炎症を抑える効果が認められています2)。
ムコスタとNSAIDs
 2) J Pharmacol Exp Ther.275(1):340-4,(1995) PMID:7562569

 また、NSAIDs使用時に『ムコスタ』1錠を1日3回併用することで、小腸粘膜傷害を改善することも報告されています3)。

 3) 第98回日本消化器病学会(JSGE2012)

 こうした点から、『ムコスタ』をNSAIDsの副作用予防のために処方することには、薬理学的に問題があるわけではありません。

回答の根拠②:食事の影響を受けない『ムコスタ』

 数ある胃粘膜保護薬の中でも、『ムコスタ』は食前・食後でAUC(血中濃度曲線下面積)が変わりません4)。そのため、頓服で使用する痛み止めと一緒に使うのに適した胃薬と言えます。

 4) ムコスタ錠 インタビューフォーム

回答の根拠③:保険適用のある薬

 NSAIDsによる胃潰瘍や十二指腸潰瘍、という効能・効果が認められている薬には、以下のようなものがあります。

※『サイトテック』の効能・効果
 NSAIDsの長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍

※『タケキャブ』、『タケプロン』、『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』の効能・効果
 低用量アスピリン・NSAIDs投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制

 そのため、NSAIDsと併用する際には、厳密には『ムコスタ』ではなく上記の薬を選ぶ必要があります。しかし、安全性や値段の観点から、『ムコスタ』を選ぶケースもあります。

薬剤師としてのアドバイス:NSAIDsによる胃潰瘍は、統計に影響するほど多い

 『ロキソニン』や『ボルタレン』などのNSAIDsは、痛み止めとして広く使われています。しかしその分、胃粘膜傷害の副作用もたくさん起こっています。その数は非常に多く、統計に影響するほどです。

 胃潰瘍の60~80%、十二指腸潰瘍の90~95%がピロリ菌に感染していると言われています5)。十二指腸潰瘍に比べ胃潰瘍でその割合が低いのは、こうしたNSAIDsによる副作用で胃潰瘍を起こす人が多いためと言われています。(他にストレス性の胃潰瘍が多いことも要因です)
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の原因
 5) 南江堂 今日の治療薬2015

 『ロキソニン』や『ボルタレン』などのNSAIDsは、非常に優秀な痛み止めですが、こうした副作用が多いことはそれほど知られていません。
 そのため、胃が荒れたときの胃痛に『ロキソニン』を選択してしまうなど、逆効果な使い方をしてしまうことも起こっています。

 様々な痛みに効果のあるNSAIDsですが、神経痛には効きにくいことや、症状によっては逆効果になることを知っておくようにしましょう。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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