慢性的な不眠症には、薬よりも「考え方」と「生活習慣」の見直しを最優先に~認知行動療法の効果が実証


 睡眠不足は健康に大きな害を及ぼします。そのため、睡眠薬を使ってでも睡眠時間を確保した方が良い場合があります。
 しかし、睡眠に対する考え方や生活習慣の間違いを放置したままでは、いくら睡眠薬を使っても、不眠の症状は根本的に治りません。

 最近の睡眠薬は依存性や耐性もできにくく、気軽に使えるため頼りがちになる人が少なくありませんが、まずは睡眠に対する考え方や生活習慣を見直すようにしてください。


「認知行動療法」で、睡眠に対する考え方や、寝る前の生活習慣を見直す

 「認知行動療法」とは、好ましくない「考え方」や「生活習慣」を見つけ、それを好ましい方向へと修正していく治療方法です。
 慢性的な不眠に悩む人の中には、睡眠に対する考え方や、寝る前の生活習慣に問題のある人が少なくありません。こういった問題を放置したまま、睡眠薬の量を増やしていくことは、あまり適切ではありません。
慢性的な不眠症と認知行動療法
 薬を増やすよりも、まずは考え方や生活習慣を改めた方が良い、とする意見は以前からもありましたが、臨床試験において「認知行動療法」の効果が実証されたこともあり、大きな注目を集めています。

 また、「認知行動療法」は不眠症だけでなく、うつ病や腰痛などの治療にも導入されています。



具体的な不眠の治療方法

 不眠症に対する「認知行動療法」は、5つの要素で構成されています。

1. 睡眠に対する誤解や、好ましくない”考え方”や”習慣”を見つけ、修正する (認知療法)
2. 「ベッドは眠るところ」と認識し、眠らない状態でベットに20分以上留まらないようにする (刺激統制法)
3. ベッドの上に居る時間を制限する (睡眠制限法)
4. 寝室に時計を置かない、睡眠の計画を立てない、昼寝をしない、アルコールやカフェインを控える (睡眠衛生法)
5. 瞑想や呼吸法など、緊張を和らげるトレーニングを実施する (リラクゼーション)

 この5つを実施することで、寝付くまでの時間が19分早く、睡眠の総時間が7.61分長く、さらに睡眠効率も9.91%改善することが報告されました1)。

 1) Ann Intern Med.163(3):191-204,(2015) PMID:26054060

 この「認知行動療法」による改善効果は、睡眠薬を使った他の治療よりも高く、副作用も全くないため、極めて意義ある治療方法であることも併せて報告されています。



薬剤師としてのアドバイス:睡眠習慣の見直しは必須、薬は力を借りる程度に

 昼寝を3時間して、日中は身体を動かさず、太陽の光も浴びず、夜に珈琲を何杯も飲んで、テレビもつけたままの明るい部屋で、布団の中で何時間もスマートホンを操作していて、それで「眠れない」というのは、当たり前の話です。

 まず、不眠の原因となっている要素を、一つずつ排除していくことから始めましょう。

 ただし、健康にとって最も悪いのは、”眠れない”という症状をずっと引きずることです。どうしても眠れず健康を害する恐れがある場合には、睡眠薬の力を借りるようにしてください。

 特に、睡眠薬は不眠や睡眠薬に対するこだわり・不安が無くなって4~8週間が経ってから、薬を減らし始めるのが一般的です。必ず、医師・薬剤師の指示に従って薬を減らしていくようにしてください。
睡眠薬の減薬や休薬を始めるタイミング
 焦って急に薬を減らしたり止めたりすると、不眠症がぶり返し、かえって薬の量が増えたり、薬を飲む期間が長引いたりすることになります。



+αの情報:新しい睡眠薬も登場している

 最近は副作用も少なく、様々なタイプの不眠に効果のある新しい睡眠薬が登場しています。

※新しい睡眠薬の例
・昼夜逆転に効果のある、体内時計を調整する『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)
・入眠障害と中途覚醒の両方に効果がある『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)
・睡眠を司るホルモン「オレキシン」の作用を助ける『ベルソムラ(一般名:スボレキサント)



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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