『フォリアミン』と『ロイコボリン』、同じ葉酸の薬の違いは? ~メトトレキサートの副作用の予防と治療
記事の内容
回答:「メトトレキサート」の副作用の”予防”に使う『フォリアミン』、”治療”に使う『ロイコボリン』
『フォリアミン(一般名:葉酸)』と『ロイコボリン(一般名:ホリナート)』は、どちらも関節リウマチの薬「メトトレキサート」の副作用対策で使う薬です。
『フォリアミン』は、副作用を”予防”する目的で使う、通常の葉酸製剤です。
『ロイコボリン』は、重篤な副作用を”治療”する目的で使う、活性型の葉酸製剤です。

『フォリアミン』の方が圧倒的に値段は安いため、通常の葉酸補充や日常的な副作用回避には『フォリアミン』を使います。
回答の根拠①:副作用の”予防”に使う、通常の「葉酸」
関節リウマチの治療では、関節が不可逆的なダメージを受ける前に、炎症を抑え込むことが重要になりますが、その治療の中心となる薬が『リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)』です。
「メトトレキサート」は、病変部位での「葉酸」の働きを妨げることで炎症や病勢を抑える効果を発揮する”葉酸代謝拮抗薬”です。そのため、「メトトレキサート」を服用している人は副作用で「葉酸」が不足し、口内炎や吐き気、肝機能障害といった症状がよく現れることになります。
こうした副作用は、関節リウマチ治療を挫折し、病気が進行してしまう大きな要因になってしまいますが、「葉酸」を併用することで大きく減らせることがわかっています1,2)。

この副作用の”予防”効果に関しては、通常の「葉酸」と活性型の「ホリナート」で大きな違いは確認されていません3)。そのため、コスト面を考慮して、圧倒的に値段の安い『フォリアミン』など通常の「葉酸」が推奨されています4)。
※1錠(5mg)の薬価(2025改訂時)
『フォリアミン』・・・・ 10.10
『ロイコボリン』・・・・436.00
1) Cochrane Database Syst Rev . 2013 May 31;2013(5):CD000951. PMID:23728635
2) Arthritis Rheum.36(6):795-803,(1993) PMID:8507221
3) Br J Dermatol.160(3):622-8,(2009) PMID:18945303
4) 日本リウマチ学会 「関節リウマチ診療ガイドライン2024」
葉酸を補充する際も、通常の「葉酸」製剤で十分
葉酸は赤血球の正常な発達にも深く関わっているため、不足すると貧血の原因にもなります。こういった症状に対して葉酸を補充する際も、選択肢になるのは通常の「葉酸」だけで、活性型の「ホリナート」は使いません(適応症もありません5))。
5) ロイコボリン錠 5mg 添付文書
回答の根拠②:副作用の”治療”を目的に使う、活性型の「ホリナート」
「ホリナート」は活性型の葉酸で、通常の葉酸よりも高い効果を期待できる、とされています5)。そのため、「メトトレキサート」を使っていて重篤な副作用が現れた際の”治療”には、活性型の「ホリナート」が用いられます6)。

6) 日本リウマチ学会 「関節リウマチにおけるメトトレキサート使用と診療の手引き(2023)」
薬剤師としてのアドバイス:葉酸は、「メトトレキサート」の服用から24~48時間後に使う
「メトトレキサート」の効果は葉酸の働きを抑えることで発揮されるため、副作用対策の葉酸を同時に飲むと、治療効果が弱まってしまう恐れがあります7)。
そのため、葉酸は「メトトレキサート」を飲んでから24~48時間後(翌日あるいは翌々日)に服用するのが一般的です。こうした適切なタイミングと適切な量で葉酸を使っていれば、治療効果を大きく損ねることなく、副作用を減らすことができる1,2)からです。

薬の複雑な使い方には、必ず理由があります。用法・用量を自己流でアレンジしたりしないよう、注意してください。また、葉酸はサプリメントや健康食品等にもよく配合されているため、利用する前に必ず医師・薬剤師に相談するようにしてください。
7) Arthritis Rheum.52(10):3030-8,(2005) PMID:16200612
ポイントのまとめ
1. 「メトトレキサート」の日常的な副作用予防には、値段の安い『フォリアミン(葉酸)』がよく使われる
2. 「メトトレキサート」で重篤な副作用が現れた際には、効果の高い『ロイコボリン(ホリナート)』が選ばれる
3. 葉酸を「メトトレキサート」と同時に服用すると、治療効果が弱まってしまう恐れがある
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| 葉酸 | ホリナート (5mg) | |
| 先発医薬品名 | フォリアミン | ロイコボリン |
| 葉酸のタイプ | 通常の葉酸 | 活性型の葉酸 |
| 適応症 | 葉酸欠乏症・補給、葉酸欠乏による各種貧血、呼吸不全症候群 | 葉酸代謝拮抗剤の毒性軽減 |
| 1錠(5mg)の薬価 | 10.10円 | 436.00円 |
| メトトレキサートの日常的な副作用対策 4) | 推奨(コスト面から) | – |
| メトトレキサートによる重篤な副作用の治療 6) | – | 推奨(効果の面から) |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【A】 | オーストラリア基準【A】 |
| 国際誕生年 | 1951年 | 1984年 |
| 剤型の規格 | 錠(5mg)、散1% | 錠(5mg、25mg)、注(3mg/mL) |
| 先発医薬品の製造販売元 | 富士製薬 | ファイザー |
| 同成分のOTC医薬品 | サプリメント等に多数 | (販売なし) |
+αの情報①:「ホリナート」の5mg錠と25mg錠は別の薬
「ホリナート」には、5mgと25mgの錠剤がありますが、それぞれ適応症が異なる全く別の薬です。
5mg錠は、「メトトレキサート」などの葉酸代謝拮抗薬による副作用軽減のための薬です。
25mg錠は、『ユーエフティ(一般名:テガフール + ウラシル)』などの抗がん剤の効果を高めるための薬です。
+αの情報②:葉酸は、妊娠前からの摂取が大切
妊娠を計画している女性が、妊娠前から「葉酸」を補充しておくことで、胎児に神経管閉鎖障害が起こるリスクが大幅に軽減される8,9)ことがわかっています。
そのため日本でも、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、サプリメント等を活用して1日400μgの葉酸を追加摂取することが推奨されています10)。
しかし、サプリメントは医薬品ではないため厳格な製剤化がされておらず、服用しても十分に崩壊・溶出せず、必要量の葉酸を吸収できない恐れのあるものも一部混ざっている可能性があります11)。なるべく国内の信頼できるメーカーの商品を選ぶことをお勧めします。
8) N Engl J Med.341(20):1485-90,(1999) PMID:10559448
9) JAMA.330(5):460-466,(2023) PMID:37526714
10) 厚生労働省「食事による栄養摂取量の基準」
11) 医療薬学.50(9):486-493,(2024)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











この記事へのコメントはありません。