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ベンゾジアゼピン系睡眠薬 薬の誤解

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睡眠薬は、どうやって減らしていけば良い?~正しい減量法を知る

回答:基本は短時間型から減らすが、必ず医師と相談しながらの減量を

 不眠症が治れば睡眠薬は減量・中止するのが鉄則です。生涯にわたって飲み続ける薬ではありません。

 睡眠薬を減らした際、一時的に眠りが浅くなったり、寝付きが悪くなったりすることがありますが、不眠症が治っていれば1~2週間程度で治まります。もし、治まらない場合は、不眠症が完治していない可能性があるため、治療を再開する必要があります。

 この時、睡眠薬は正しい方法で減量・中止する必要があります。特に、2種類以上の睡眠薬を使っている場合には、状況によって減量・中止する睡眠薬の順番も変わります。

 そのため、絶対に自己判断で睡眠薬は減らしたり止めたりせず、必ず主治医に相談した上で行うようにしてください。

詳しい回答:睡眠薬には、正しい減らし方がある

 睡眠薬の減量法については多くの研究がされています。その中でも、薬は急に止めるのではなく、少しずつ、順序に従って減らす(漸減法)という方法が推奨されています。

 現在、話題にもなっている「常用量依存」は、睡眠薬を正しい方法で使っていたにも関わらず、減薬・中止すると眠れないなどの症状が悪化して、結局睡眠薬を減らすことができない、という状態のことです。

 この「常用量依存」は、勝手な自己判断や、誤った方法で薬を減らしたり止めたりすることで起きてしまう部分が多くあります。

 インターネット上では特に、「一度薬を飲んだら止められない」、「薬漬けになる」といった極端な話題ばかりが取り上げられています。
 それを見た患者が、本来は薬が必要である状態にも関わらず、自己判断で誤った減薬・中止の方法をとってしまうことがあります。その結果、完治していない不眠症が再発する上に、誤った薬の減らし方をしたことによって反跳性不眠や日中の不安感などに襲われてしまう、という事態が起きています。

 こうした事態になると、かえって長期間たくさんの薬を飲まなければならない、ということになってしまいます。

 こうした悪循環を繰り返してしまった人が、「なんだこの薬は!」という想いで睡眠薬の危険性について情報発信をしている、という面があるように思います。

薬剤師としてのアドバイス:状況や要望はきちんと伝えた上で、医師・薬剤師の指示に従うのが一番

 睡眠薬を減らすにあたり、どれだけの量ずつ減らしていくのか、どの薬から減らし始めるのか、減らしたあと様子を見るのは何週間か・・・といったことは、その人の症状や状況によって様々です。

 そのため、他の人が成功した方法を真似したからといって上手くいくとは限りませんし、他の人が失敗した方法だからといって自分も失敗するとも限りません。

 どうやって睡眠薬を減らしていけば良いのかは、医師や薬剤師といった専門家に任せることが一番良い方法です。

 しかし、医師や薬剤師もエスパーではありません。任せっきりにするのではなく、自分自身の睡眠の状況がいまどんな状態なのか、どういったことが辛いと感じるのか、どういったことは良くなってきているのか、といったことをきちんと伝える必要があります

 自分自身の状況をきちんと伝え、不安や疑問も正しく伝えた上でそれに答えてもらい、薬を正しく使う、という治療を行うことができれば、睡眠薬は必ず減らしていけるものと考えています。

 また、睡眠は薬だけでなく生活習慣によっても改善することが可能です。薬を服用している間から、少しずつ睡眠習慣を改善していくような努力をしましょう。

+αの情報①:減量法の例

 睡眠薬の減量法の一例を紹介します。

 先述の通り、これはあくまで一例であって、この方法を推奨するものではありません。睡眠薬を減量する際は、必ず主治医に相談の上で行い、絶対に自己判断では行わないでください。

◆1種類の睡眠薬を使っていた人の例
①寝付きも良くなり、夜中にも目が覚めることがなくなり、日中も元気に過ごせるようになったことを確認する
②いつも2錠ずつ服用していた薬を1.5錠に減らし、2週間続ける
③1.5錠に減量した2週間のあいだ、特に問題がなければ、次の2週間は1錠に減らす
④1錠に減量した2週間のあいだ、特に問題がなければ、次の2週間は0.5錠に減らす
⑤0.5錠に減量した2週間のあいだ、特に問題がなければ、薬を完全に無くしてみる
⑥薬を完全に無くしてみても問題がなければ、そこで不眠症の治療を完了する

◆2種類の睡眠薬を使っていた人の例
①寝付きも良くなり、夜中に目が覚めることがなくなり、日中も元気に過ごせるようになったことを確認する
②寝付きに問題がないため、全体的な睡眠の質の維持が必要であることを確認する
③2種類のうち、寝付きを良くする「短時間型」の睡眠薬を「中~長時間型」のものに切り替える
④「中~長時間型」に切り替えた上で少しずつ薬の減量を開始する

+αの情報②:減量・中止がしやすい睡眠薬

 睡眠薬にもたくさんの種類があります。中には、減量や中止をしやすい睡眠薬というものが存在します。

 体内時計を調整することで昼夜逆転などを治療できる『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』は、6ヶ月以上続けて使った後、急に薬をやめても反動(反跳性不眠)が起きないことがわかっています1)。

 また、『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)』も、反跳性不眠を起こさない薬とされています2)。

 新しく睡眠薬を使う場合には、こういった”薬をやめる時を見据えた”選び方も必要です。

 1) Expert Rev Neurother.11(2):215-24,(2011) PMID:21306209
 2) ルネスタ錠 インタビューフォーム

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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