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ベンゾジアゼピン系睡眠薬 薬物動態学

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長時間型の睡眠薬を飲んでいると、一日中眠い?~半減期が長い睡眠薬の目的

回答:身体を睡眠できる状態にするだけで、眠くなるわけではない

 確かに長時間型の睡眠薬を毎日続けて服用していると、薬が切れている状態がなくなり、常に薬が効いている状態になります。しかし、だからといって一日中眠たい状態が続いたり、ずっと眠り続けたりする、というわけではありません。

 脳には本来、朝になると目が覚め、夜になると眠くなる・・・という自然なリズムを保とうというシステムがあります。これには自律神経や体内時計睡眠と覚醒を司るホルモンなど、様々なシステムがあります。

 長時間型の睡眠薬を飲むと、確かに一旦眠くなります。しかし、睡眠薬の力を借りて十分な睡眠を得られた場合には、脳は「起きよう」という方向へシステムを動かします。この「起きよう」とする力は、睡眠薬よりも遥かに強力なため、たとえ睡眠薬が身体に残っていても目を覚ますことができるようになります。

 睡眠薬は麻酔薬ではないので、この「起きよう」とするシステムにまで影響を与えるわけではありません。

 もし、長時間型の睡眠薬を飲んで一日中眠たくなっている場合には、”まだまだ睡眠が足りていない”か、あるいは”薬が合っていない”か、のどちらかの可能性を考える必要があります。

 

回答の根拠:半減期が長い睡眠薬の効き方

 現在主に使われているベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、作用する時間の長さによって使い分けされています
 この”作用する時間”は、血液中の薬が腎臓や肝臓で分解されて濃度が薄くなっていく(半分になる)速さ、つまり「半減期」によって分類されています。

 長時間型の睡眠薬では、半減期が20時間を越えるようなものもあります。こうした薬を毎日服用していると、薬が出ていく速さと、薬を飲む速さが同じになり、身体の中の薬の濃度はあまり変化しなくなります(下図:定常状態)。
長時間型の睡眠薬

 この状態は、常に薬が効いている状態です。一見、常に眠っている状態になる、と誤解しがちですが、通常はそういった状態にはなりません。
 不眠症の場合、何らかの原因によって身体は睡眠を得にくい状態にあります。薬を続けて飲んで、常に薬が効いている状態になることで初めて、通常の人と同じように「普通に睡眠を得られる」状態になります。

 ”起きて来なくなる”といったことが起こらないのは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が脳の覚醒機構そのものには作用せず、麻酔状態にはならない、という事実1)からもわかります。

 1) ユーロジン錠 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:睡眠薬は、症状にあったものを使おう

 寝付きが悪いだけ、という場合には、就寝の時だけ薬が効く短時間型の睡眠薬を使います。
 早朝に目が覚める、という場合には、早朝に薬が効いてくるような作用時間の睡眠薬を使います。

 しかし不眠症には、全体的に眠りの質が悪く、慢性的に寝不足で辛い、というものもあります。そういった場合、長時間型の睡眠薬を使って常に薬が効いている状態、つまり「普通に睡眠を得られる状態」に整えることが必要です。

 このように睡眠薬は症状に合わせた作用時間で選びます。現在使われている睡眠薬に、特に種類によって強い・弱いといった基準はありません

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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