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ベンゾジアゼピン系睡眠薬 薬の誤解

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睡眠薬を使っているが眠れない、もっと強い睡眠薬が欲しい

回答:睡眠薬に強い、弱いという基準はない

 睡眠薬の”強さ”にこだわる方が多くおられますが、現在主に使われている睡眠薬に「強い」「弱い」といった基準はありません。

 薬によって、効き目がピークになる時間が違うため、寝付きが悪いのか、深夜に目が覚めるのか、早朝に目が覚めるのか、全体的に睡眠の質が悪いのか・・・といった症状に合わせて、作用時間で薬を選びます。

 やや乱暴な表現ですが、作用の強さは同じで、作用する時間が異なるというのは、以下のようなイメージです。
睡眠薬の作用の強さと作用時間

 いま使っている薬であまり効果を実感できない場合は、この効き目がピークになる時間と、症状が現れる時間とが合っていない可能性があります。
 医師には「よく眠れない」と漠然と伝えるのではなく、どんな時間帯にどんな症状で困っているのか、を具体的に伝え、その症状にあった薬を処方してもらいましょう。

 ※眠り際に脚がむずむずして眠れないのは、むずむず脚(レストレスレッグス)症候群の可能性があります。

回答の根拠:”強さ”は量で調整する

 睡眠薬は、作用時間によって使い分けます。

 寝付きが悪い場合にはすぐに効果の現れる短時間の睡眠薬を、深夜や早朝に目が覚めてしまう場合には少し時間が経ってから効果が現れる長時間型を、といった使い分けをします。
 
 長く効果が続くからといって強い薬というわけでもありません。

 例えば、寝付きが悪くて悩んでいる時に、長時間型を”強い睡眠薬”と思い込んで薬を変えてしまったりすると、効果が現れる時間が遅くなって余計に寝付きが悪くなります。

 もし、”弱い”薬を使いたいのであれば、自分の症状にあった睡眠薬をできるだけ少ない量で使い、”強い”薬を使いたいのであれば、許容範囲内で多い量を使うという方法があります。

薬剤師としてのアドバイス①:薬剤師をうまく使って状況を医師に伝える

 睡眠薬を使うのに抵抗があって、毎晩1錠飲むよう指示されていたものを、実はこっそり半分に割って使っていたが、それでも眠れている・・・といったような相談を薬局で受けることが、時々あります。

 自分ではなかなか医師に言い出せなくても、薬剤師から”やんわり”と伝えてもらうことも可能ですので、医師に言い出せない悩みがある場合には是非薬剤師を活用してください。

 

薬剤師としてのアドバイス②:睡眠習慣の見直しも一緒に

 睡眠薬に関しては、抵抗の強い方と、薬に強く頼ってしまう方と、極端になることが多いように思います。非常にまれな副作用を恐れるあまり薬を拒否してしまったり、薬さえ飲んでいれば大丈夫と無責任になってしまったりすることは、非常に大きな問題です。

 睡眠薬は、生涯に渡って飲み続けるような薬ではありません。不眠症が治ればできるだけ早く、薬を飲まずに眠れる状態を目標に努力をしていかなければなりません。

 ”強い”睡眠薬を希望する前に、まず自分の睡眠習慣を見直すことも必要です。睡眠習慣を見直して、それでも眠れない場合に初めて、睡眠薬を増やすことが選択肢になります。

 ※2015年6月に発表された論文で、「認知行動療法」による不眠治療の効果が実証されました。

※薬剤師が行える睡眠習慣の指導

◆定期的な運動
 適度な有酸素運動を行うことで、その疲労感から眠りにつきやすくなります。また、眠りも深くなり、心身の疲労回復効果が高まります。

◆正しい食生活
 ダイエット等の空腹状態では睡眠の質は下がります。また、就寝前に炭水化物や脂を摂ると、消化活動が活発になるために眠りの妨げになります。寝る前にどうしても何かを口にする際には、暖かい飲み物などをお勧めします。

◆寝室の環境
 照明をつけたままでは眠りが妨げられます。寝室はできるだけ暗くしましょう。音も入ってこないよう、ドアをしっかり閉める、雨戸を閉める等の対策が必要です。また、自分が心地よく感じる温度を保つことも重要です。暖房や冷房の電気代を気にするのは、不眠症が治ってからで良いです。
 必要があれば、リラックス効果のあるアロマを枕元に置くことも効果的かもしれません。

◆カフェインの摂取
 カフェインは目を覚ます効果があり、寝付きを悪くしたり、眠りを浅くしたりします。日本茶、紅茶、コーヒー、コーラ、チョコレート等、カフェインの入ったものはなるべく避けた方が無難です。日中は問題も少ないですが、不眠に悩んでいるのであれば、布団に入る4時間前からは控えるべきです。

◆布団の中での行動
 考え事はあまりしない方が良いですが、考え事をするなというのは難しいことも多いです。どうしても考え事をしてしまうようであれば、ヒーリング音楽を小さな音で流すことも選択肢です。今はスマートフォンのアプリでも、自分の心地よい音楽を自由に組み立てられるものがあります(筆者が使っているアプリの例:Relax Melodies)。
 また、布団に入ってからスマートフォンなどの明るい液晶画面を見ることも非常に悪い習慣です。光は脳を活性化させていくので、布団に入ってからはあまりテレビやスマートフォン等の明るい画面は見ない方が良いです。

◆お酒
 お酒を飲むと、寝付きは良くなります。が、眠りは浅くなって夜中に目が覚めやすくなります。また、トイレも近くなるために目が覚めることもあります。特に「中途覚醒」に悩むのであれば、お酒は完全に逆効果です。

◆タバコ
 夜は喫煙を控えることをお勧めします。ニコチンは精神を刺激するため、寝付きも悪く、眠りも浅くなる方向へ働きます。

◆昼寝
 睡眠が足りていると人間は眠れません。あまりに長く昼寝をすると夜に眠れなくなり、身体の睡眠リズムが崩れてしまいます。諸説ありますが一般的には、昼寝は15時までの時間帯に、15~30分程度で行うのが適切とされています。また、起きた後は、身体を覚醒させるために太陽の光を浴びるようにしましょう。

+αの情報:強い催眠効果を持つバルビツール酸

 現在主流になっているベンゾジアゼピン系の薬が使われる以前は、バルビツール酸と呼ばれるタイプの睡眠薬が使われていました。
 このタイプの睡眠薬は、確かに”強い催眠効果”を持っています。しかし、薬が次第に効きにくくなる「耐性」や、薬をやめられなくなる「依存性」が強く、また過量に服用すると呼吸が止まる等の危険な作用を持っていたため、現在はより安全で「耐性」や「依存性」も少ないベンゾジアゼピン系の薬が使われています。
 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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薬の比較と使い分け100(2017年)
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■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
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医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
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【講演・シンポジウム等】
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