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似た薬の違い インスリン

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『ランタス』と『ノボラピッド』、同じインスリン製剤の違いは?~作用時間とインスリンの基礎・追加分泌

回答:『ランタス』は持効型、『ノボラピッド』は超速効型のインスリン

 『ランタス(一般名:インスリン グラルギン)』と『ノボラピッド(一般名:インスリン アスパルト)』は、どちらもインスリンの注射薬です。

 『トレシーバ』は持効型のインスリンで、不足しているインスリンの基礎分泌を補うために使います。
 『ノボラピッド』は超速効型のインスリンで、食事の後などに起こる血糖値の上昇を防ぐために使います。

 インスリンを使った治療では、こうした作用時間の異なる薬を使って、生理的なインスリン分泌を再現するのが基本になります。

 

回答の根拠①:作用が長続きする「インスリン グラルギン」~インスリンの基礎分泌を補うための薬

 「インスリン グラルギン」は、1日1回の注射で24時間効果が続く持効型のインスリン製剤1)です。

 1日を通して分泌される基礎的な「インスリン」の量が不足している1型糖尿病や、他の薬ではうまく血糖値をコントロールできない2型糖尿病では、こうした持効型の薬を使ってインスリンの基礎分泌を補う治療を行います2)。

 1) トレシーバ注 インタビューフォーム
 2) 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」

 

持効型インスリンの豊富なバリエーション

 持効型に分類されるインスリン製剤には、他にも朝夕で細かく用量調節が可能な『レベミル(一般名:インスリン デテミル)』作用がより穏やかで低血糖の少ない『トレシーバ(一般名:インスリン デクルデク)』があるほか、2024年には1週間に1回の注射で良い『アウィクリ(一般名:インスリン イコデク)』という便利な薬も登場しています。

 そのため、自分に合った薬でインスリンの基礎分泌を補う治療ができるようになっています。

 

回答の根拠②:作用が速い「インスリン アスパルト」~食後の過血糖を防ぐための薬

「インスリン アスパルト」は、注射すると10~20分で効果が現れる超速効型のインスリン製剤3)です。

 食事の後などには「インスリン」の必要量が急激に増加するため、持効型の薬で基礎分泌を補っていても「インスリン」が不足し、血糖値が急上昇することがあります。そのため、こうした超速効型の薬を使ってインスリンの追加分泌を補う治療を行います。

 3) ノボラピッド注 インタビューフォーム

 

超速効型のインスリンは、注射のタイミングが難しい

 超速効型のインスリンの効果は長続きしません。そのため、血糖値が上昇するタイミングで効果が現れるように、食事の15分前くらいを目安に注射しておくのが基本になります。
 しかし、このタイミングを合わせる作業が難しいために、食前や食事中の低血糖、あるいは食後の高血糖を起こしてしまうことが少なくありません4)。

 『フィアスプ(一般名:インスリン アスパルト)』は、有効成分は同じですが、添加物を工夫することよって、「注射してから効果が現れるまでのタイムラグ」をおよそ2分程度にまで短縮5)し、”食直前に注射すれば良い”というシンプルな使い方ができるようになった改良型の超速効型インスリン製剤です。

 4) Diabetes Obes Metab.24(9):1689-1701,(2022) PMID:35593434
 5) ルムジェブ注ミリオペン インタビューフォーム

 

薬剤師としてのアドバイス:生理的なインスリン分泌を再現する

 インスリンを使った治療では、身体の生理的なインスリン分泌に近い状況を再現することが重要です。そのため、持効型インスリンで基礎分泌を、超速効型インスリンで追加分泌を補う、というのが基本になります。

 しかし、糖尿病の人が感染症などにかかると、身体が必要とするインスリンの量も大きく変わり、急激な高血糖を起こしたり、逆に食事を摂れないことで低血糖を起こしたりと、血糖コントロールが非常に難しくなることがあります。

 こうした著しく体調の悪い日(シックデイ)のインスリンの調節方法は、その人の病状や普段の治療内容などによって様々なため、予め主治医や薬剤師に確認しておくようにしてください。

 

 

ポイントのまとめ

1. 『ランタス(グラルギン)』は持効型、1日1回の注射でインスリンの基礎分泌を補う
2. 『ノボラピッド(アスパルト)』は超速効型、注射から10~20分で効果が現れ、インスリンの追加分泌を補う
3. シックデイの対応は人によって異なるため、予め主治医・薬剤師と相談しておく

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

グラルギンアスパルト
先発医薬品名ランタスノボラピッド
適応症インスリン療法が適応となる糖尿病インスリン療法が適応となる糖尿病
タイプ持効型超速効型
用法1日1回(朝食前または就寝前)毎食直前
効果発現までの時間(ピークなし)10~20分
効果持続時間24時間3~5時間
妊娠中の安全性オーストラリア基準【B3】オーストラリア基準【A】
世界での販売状況世界141ヵ国世界100ヵ国以上
剤型の規格フレックスタッチ、フレックスペン、イノレット、ペンフィル、注フレックスタッチ、ペンフィル
同成分の改良版製剤『ランタスXR』
→濃度を3倍にすることで作用をより穏やかに
『フィアスプ』
→添加物を改良することで、約2分で効果発現
先発医薬品の製造販売元サノフィノボノルディスクファーマ
同成分のOTC医薬品(販売されていない)(販売されていない)

 

 

+αの情報①:作用時間の異なるインスリンを組み合わせた配合製剤

 インスリン製剤には、作用時間の異なるインスリンを組み合わせた配合製剤があります。持効型や超速効型のインスリン単独ではうまく血糖値をコントロールできない場合や、注射の手間を少しでも減らしたい場合などに便利な選択肢になっています。

中間型+超速効型のインスリン製剤

 『ノボラピッド30ミックス』や『ノボラピッド50ミックス』は、超速効型の「インスリン アスパルト」と、一部を結晶にして作用を持続化させた中間型の「プロタミン結晶性インスリン アスパルト」を混合した製剤です6)。
 食後の血糖コントロールがうまくいかない場合などには、こうした作用時間をやや長めにしたインスリン製剤を使うことがあります。

※配合比率
ノボラピッド30ミックス:超速効型30%+中間型70%
ノボラピッド50ミックス:超速効型50%+中間型50%

 6) ノボラピッド30ミックス注 インタビューフォーム

 

持効型+超速効型のインスリン製剤

 『ライゾデグ』は、持効型の「インスリン デグルデク」と超速効型の「インスリン アスパルト」を7:3の割合で混合した注射薬です7)。

 インスリンの基礎分泌と追加分泌をまとめて1回の注射で補充できるため、注射の回数が少なくて済むほか、注射前の混濁操作も必要ない7)ため、シンプルな操作で注射ができます。さらに、それぞれの薬を個別に使うよりも低血糖を起こしにくい8)など、安全性の面でも改良されているのが特徴です。

 7) ライゾデグ配合注 インタビューフォーム
 8) J Diabetes.9(3):243-247,(2017) PMID:
27059529

 

+αの情報②:同じ場所に注射し続けない

 右利きの人は左の腹部に注射をする傾向があります。しかし、毎日のようにピッタリ同じ場所にインスリンを注射し続けていると、皮膚や皮下組織が硬くなってきて、徐々にインスリンの吸収は悪化していきます9)。そのためインスリン注射は、場所を少しずつズラしながら行うことが大切です。

 なお、皮膚が硬くなってしまった場所に注射を続けていた人は、急に注射部位を変えると、インスリンの吸収が急に高まって低血糖を起こすこともあるため、注意してください。

 9) 糖尿病.58:94-99,(2015)

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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薬の比較と使い分け100(2017年)
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■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
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薬ゼミ、診断と治療社
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【講義・講演等】
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学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

 

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