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統計学 検査値

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腫瘍マーカーの値が高かったら、確実に癌なの?~精密検査の要・不要を判断するふるい分け

回答:あくまで「可能性が高い」

 腫瘍マーカーが「陽性」を示した、「異常値」であったからといって、必ず「がん」があるわけではありません。
 逆に、腫瘍マーカーが「陰性」を示した、「正常値」であったからといって、絶対に「がん」が無いわけでもありません。

 色々な腫瘍マーカーに設定されている基準値の範囲は、あくまで「統計学的に処理した数値」であって、絶対的な基準ではありません。

 ただし、腫瘍マーカーの値が正常から大きく外れていた場合には、「がん」である可能性が高いため、さらに精密検査をする必要があります。
 

回答の根拠:腫瘍マーカーは、「ふるい分け」のための補助的な役割

 国民全員の全身を精密に検査していては、時間や病院がいくらあっても足りません。そのため、精密検査をする必要があるかどうかを、何かの基準で選ぶ必要があります。

 この時に用いる基準が、「腫瘍マーカー」です。
腫瘍マーカーのふるい分け
 つまり、「腫瘍マーカー」は「時間とお金をかけてまで、精密な検査をする必要があるかどうか?」という「ふるい分け(スクリーニング)」の方法として用いられています。

カットオフ値~どこかで線引きをする必要がある

 「腫瘍マーカー」が猛烈に高い人を集めると、全ての人に「がん」があります。
 「腫瘍マーカー」が非常に低い人を集めると、全ての人に「がん」がありません。

 「腫瘍マーカー」が微妙に高い人を集めると、たまに「がん」の人が混じっています。

 「がん」の人を効率良く見つけるためには、たまに「がん」の人が混じっているくらいの値で線引きをし、精密検査に回す必要があります。

 この線引きが「カットオフ値」で、これより低ければ正常、これより高ければ異常ということになります。
腫瘍マーカーとカットオフ値

 例えば①を「カットオフ値」とすると、「がん」の患者を見逃してしまう恐れはほとんどありませんが、「がん」でない人を無駄な検査に回してしまうことが増えます。
 例えば②を「カットオフ値」とすると、無駄な検査をする回数は減りますが、「がん」の患者を見逃してしまう恐れが高くなります。

 この「カットオフ値」をどこで設定するのか、という設定は、時代の推移や技術の進歩、検査に使用する試薬などによって変わることがあります。
 そのため、腫瘍マーカーの数値だけで「がん」の有無を判断することはできず、あくまでレントゲンやMRI、その他の精密検査の必要性を確認する、効率良い検査をするための補助的な役割を担っています。

薬剤師としてのアドバイス:病院によって検査値が変わることも

 この腫瘍マーカーは、抗原抗体反応を利用した方法で検出しています。こうした反応は、使う試薬・使う機械によって若干の差が生じます。
 そのため、ボーダーライン上の人では、健康診断で「異常値」が出たのに、近所のかかりつけ病院で再検査したら何ともなかった、ということが起こり得ます。

 このように、腫瘍マーカーは現在のところ絶対的な基準ではなく、あくまで補助的な基準として使われているものだ、ということを知っておくと良いでしょう。

 ただし、どちらかで「異常値」が出た場合には、念のため精密検査をしておくことをお勧めします

腫瘍マーカーの例①:AFP

 AFPはα-フェトプロテインという”肝臓がん”の腫瘍マーカーとして用いられている物質。
 基準値は0~10ng/mL(CLIA法)もしくは0~20ng/mL(RIA固相法)と、測定方法によって異なる。
 200を越えると肝臓がんの可能性もあるが、肝炎や肝硬変である可能性も高い。
 400を越えると肝臓がんの可能性が非常に高い。

腫瘍マーカーの例②:CEA

 CEAは現在最もよく用いられている腫瘍マーカーの1つ。
 基準値は0~5ng/mL。
 高齢者や喫煙者では若干高くなる傾向がある。
 10を越えると身体のどこかにがんがある可能性がある。
 20をこえると転移がんの可能性がある。

※他の腫瘍マーカーの例
・CA15-3:基準値は0~30U/mL。2倍以上の値になると、乳がんなどの可能性が高い。
CA19-9:基準値は0~37U/mL。2倍以上の値になると、膵臓などにがんがある可能性が高い。
・CA125:基準値は0~25U/mL(閉経後は0~40U/mL)。異常値の場合、卵巣がんや子宮がんの可能性が高い。
・CA602:基準値は0~63U/mL。200を越えると卵巣がんの可能性が高い。
・TPA:基準値は0~125U/mL。異常値の場合、身体のどこかにがんがある可能性がある。
PSA:基準値は0~4ng/mL。加齢と共に高くなるが、1年に0.75ng/mL以上増加すると、前立腺がんの可能性が高い。
・CYFRA:基準値は0~2ng/mL。基準値を越えた時点から、肺がんである可能性が高い。
・SCC:基準値は0~1.5ng/mL。異常値の場合、子宮がんや食道がんなどの可能性がある。
・NSE:基準値は0~10ng/mL。異常値の場合、神経細胞に腫瘍がある可能性がある。
・SLX:基準値は0~38U/mL。異常値の場合、身体のどこかにがんがある可能性が高い。
・hCG:基準値は0~0.2ng/mL。異常値の場合、卵巣や精巣、肺にがんがある可能性がある。
・PIVKA-Ⅱ:基準値は0~40mAU/mL。異常値の場合、肝臓がんである可能性がある。

 参考)臨床検査値ハンドブック(じほう社)

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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