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消化性潰瘍治療薬 薬物動態学

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PPIは半減期が短いのに、1日1回の服用で良いのは何故?~プロトンポンプの新陳代謝

回答:非可逆的な阻害をするから

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸を分泌する「ポンプ」を「非可逆的」に阻害するからです。

 ”非可逆的”な阻害は一方通行で、一度阻害されたら元には戻りません。そのため、新陳代謝で新しい「ポンプ」と入れ替わるまで阻害されたままの状態が続きます。

 この結果、薬が身体から出て行ってしまった後にも、胃酸を抑える効果が続きます。

回答の根拠①:非可逆的な阻害とは

 薬には、以下の2タイプがあります。

1. 血液中の薬の濃度が下がると、薬の効果も切れてくるタイプ
2. 血液中の薬の濃度が下がっても、しばらく薬の効果が続くタイプ

 この違いは、薬の作用が「可逆的」か「非可逆的」かで生まれます。

 「可逆的」とは”水を凍らせると氷になり、氷を溶かすと水になる”ように、どちらの物質にも行き来ができるものを言います。
 「非可逆的」とは、”紙を燃やすと灰になるが、灰を紙に戻すことはできない”ように、一方通行しかできないものを言います。
可逆的と非可逆的

 いつでも元に戻れる「可逆阻害」の場合、血液中の薬の濃度が下がると、効果が切れてきます。
 元には戻れない「非可逆阻害」の場合、血液中の薬の濃度が下がっても、しばらく効果が続きます。

 PPIは、胃酸を分泌するプロトンポンプを「非可逆阻害」するため、身体から薬が出て行った後も効果が続きます。その効果は、プロトンポンプが新陳代謝によって新しく生まれ変わるまで続きます。

 こうした理由から、PPIは通常1日1回の服用で十分に効果が続きます。

回答の根拠②:プロトンポンプは毎日入れ替わる

 プロトンポンプは毎日新しいものと入れ替わっているため、PPIを一度服用したからといって何日も効果が続くわけではありません。PPIで阻害したプロトンポンプが新しいものと入れ替わるたび、薬の効果は徐々に弱まり、胃酸分泌が増えてくるようになります。

 この入れ替わりのサイクルは3日程度であると言われています1)。そのため、3分の1のプロトンポンプが毎日入れ替わっていることになります。

 1) エクセプタ・メディカ「胃の壁細胞」 p32,(1991)
プロトンポンプの再生1

プロトンポンプの再生2
 難治性の場合、PPIを1日2回に分けて服用すると効果が高まることがあるのは、新しく生まれたプロトンポンプを早めに阻害できるからと考えられます。

 

薬剤師としてのアドバイス:半減期が全てではない

 半減期という指標は、薬の成分が身体から出ていくのにどれくらい時間がかかるか、を考える重要な指標です。しかし、非可逆的な作用をする薬の場合、血液中に薬は残っていなくとも、薬の作用が続いている、ということが起こります。

 こうした現象はPPIだけでなく、血液をサラサラにする薬でも起こり、手術前の休薬期間の設定にも影響します。

 半減期の数字がわかったからといって、それで薬の効果を全て把握できるわけではありませんので、注意してください。

 
 
 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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