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知っておくべきこと 殺菌・消毒薬

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消毒用エタノールの濃度(vol%,w/w%,w/v%)の区別と、日本薬局方・消防法の規程~消毒効果と濃度換算

 

 消毒用エタノールの濃度は何%のものが良いのか、70%以上でなければダメなのか、表記がない場合はどうすれば良いのか・・・といった質問を最近よく受けます。そこで、エタノールの濃度について知っておきたい「濃度の表記方法」と「日本薬局方や消防法の規程」について、基本的なところをまとめました。

 

「エタノール」の濃度には、3つの書き方がある

 「エタノール」は、濃度が低過ぎても高過ぎても、その消毒効果が低下します。そのため、適切な濃度に調製して使う必要があります。このとき、「エタノール」の最適濃度は70%程度だというのが一般的によく知られています。
 これは、その程度の濃度の時に「エタノール」と「水」の分子組成比が1:1となり、大きな疎水性表面を持つ集合体を形成するからだと考えられています1)。

 しかし一方で、日本薬局方の「消毒用エタノール」の濃度を見ると、その%の数字は「76.9~81.4」となっています。なぜ最適濃度をよりもやや高めの数字になっているのでしょうか。このズレを考える時にまず大前提として知っておかなければならないのが、「エタノール」の濃度表記には下記の3パターンが混在している、ということです。

①体積百分率(v/v%、またはvol%)
 「溶液100mL中に、エタノールが何mL含まれているか」を表わすパーセント。

②質量百分率(w/w%)
 「溶液100g中に、エタノールが何g含まれているか」を表わすパーセント。
 (※普通に「%」とだけ書いてある場合は、この質量百分率であるのが一般的)

③質量対体積百分率(w/v%)
 「溶液100mL中に、エタノールが何g含まれているか」を表わすパーセント。

 

 水は1mLで1.0gですが、エタノールは1mLで約0.79gのため、同じ数字の%でも①~③のどの表記であるかによって、その濃度の実態は少し変わってくることになります。
 例えば、日本薬局方で規程されている「消毒用エタノール」の濃度は76.9~81.4vol%ですが、これは溶液100mL中に、エタノールが76.9~81.4mL含まれる」ことを意味します2)。この①vol%で表記された濃度を、②w/w%と③w/v%にそれぞれ換算すると、およそ以下のような値になります3)。

※日本薬局方「消毒用エタノール」の濃度を3つの単位で表記した場合
①体積百分率   :76.9~81.4vol% (溶液100mL中に、エタノールが76.9~81.4mL含まれる)
②質量百分率   :69.9~75.3w/w%(溶液100g中に、エタノールが69.9~75.3g含まれる)
③質量対体積百分率:60.9~64.7w/v%(溶液100mL中に、エタノールが60.9~64.7g含まれる)

 つまり、「エタノール(76.9~81.4vol%)」と「エタノール(69.9~75.3w/w%)」と「エタノール(60.9~64.7w/v%)」は、全てだいたい同じ濃度の「エタノール」を表わしている、ということです(※だいたいです)。

 1) 化学と工業.47:168-171,(1994)
 2) 第十八改正日本薬局方
 3) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA) 「エタノール換算表」 ※PDFファイル

 

「70%が良い」、とよく言われている理由

 特に単位を細かく指定せずに「%」とだけ書いた場合は、ほとんどの場合「②質量百分率(w/w%)」のことを指します。日本薬局方では「消毒用エタノール」の濃度は「①体積百分率(vol%)」で76.9~81.4vol%と規程されていますが、これを「②質量百分率(w/w%)」に換算すると69.9~75.3w/w%となります。つまり、だいたい70%くらいになるわけです。

 「日本薬局方で定める濃度の範囲 ≒ およそ②質量百分率で70%くらい」ということから、一般的に「70%のエタノール」という言い方をよくされるのだと思われます。

 

「70%以下」の濃度では意味がない?

 このところ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、「消毒用エタノール」は品薄の状態が続いています。実際、医療機関でも不足しているため、「70~83vol%の範囲内のエタノールを使うことを原則」とする一方で、新型コロナウイルス対策については60vol%台のエタノールでも一定の効果が見込めるとして、代用可とする通知を出しています。

※「60vol%台のエタノール」を他の単位に換算した場合 3)
①体積百分率   :60.0vol%~
②質量百分率   :52.1w/w%~
③質量対体積百分率:47.5w/v%~

 そのため、家庭で手指消毒用のエタノール製剤が手に入らない場合でも、上記の濃度以上のものを目安に代替品を選ぶのが良いと思われます。なお、「手指消毒」と「手洗い」の効果は大きくは違いませんので、普通に手洗いをできる状況であれば無理に「消毒用エタノール」を探す必要はありません(※後述)。

 4) 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について(改定(その2))」

 

「%」の表記がない商品はどう考えれば良い?

 「エタノール」の濃度が明記されていない商品も少なくありません。そんな場合は、商品の「規制区分」が一つの参考になります。

※「第3類医薬品」と記載がある場合
 →日本薬局方で定める「76.9~81.4vol%」
 (≒ 66.9~75.3w/w%、または60.9~64.7w/v%)

※「危険物第4類(引火性液体)」と記載がある場合
 →消防法で定める「60.0w/w%以上」
 (≒ 67.7vol%以上、または54.4w/v%以上)

 なお、エタノールの引火点は常温(15~25℃)より低いため、火気や火花・直射日光を避けて保管する必要があります。また、密室での取り扱い、大量噴霧にも十分な注意が必要です。特に、一定量以上の保管には消防法の規制がかかることも覚えておいてください。

※「危険物第4類」に関する消防法の規制
80ℓ未満:規制なし
80~400ℓ未満:少量危険物貯蔵・取扱届(管轄の消防署所)
400ℓ以上:危険物設置置許可申請書または仮貯蔵・仮取扱承認申請書(消防局予防課)

 

薬剤師としてのアドバイス:「消毒用エタノール」がなくても「石鹸で手洗い」できればOK

 一般家庭の日常的な生活において、感染対策に「消毒用エタノール」は必要不可欠・・・というほどのものでもありません。流水と石鹸できちんと手洗いをできれば、基本的にそれで感染対策としては十分だからです。実際、「消毒用エタノールでの手指消毒」と「石鹸での手洗い」を比較した研究では、その感染予防効果に大きな差は示されていません4)。

 ただし、この時の「手洗い」とは、正しい方法での丁寧な手洗い5)です(通常、手の甲や指の間、手首までを丁寧に洗うと、手洗いには60秒くらいかかります)。そのため、時間的・技術的・環境的な何らかの事情によってこうした丁寧な手洗いができない場合には、「消毒用エタノールでの手指消毒」の方が効果的な可能性があります6)。

 なお、手洗いと手指消毒は必ずしも両方やる必要はありません。幸い、日本では上下水道が完備されており、非常に気軽に手を洗うことができます。「消毒用エタノール」が手に入りにくい場合は、「石鹸での丁寧な手洗い」を徹底するようにしてください。

 4) Pediatr Nurs.33(4):368-72,(2007) PMID:17907739
 5) 厚生労働省「手洗いポスター」 ※PDFファイル
 6) Pediatrics.142(5). pii: e20181245,(2018) PMID:30297500

 

ポイントのまとめ

1. エタノールは、薄くても濃くても消毒効果が弱まるので、適切な濃度で使う必要がある
2. エタノールの濃度には、「vol%」「w/w%」「w/v%」の3パターンの表記があることに注意
3. 丁寧な手洗いができていれば、エタノールを使った手指消毒はできなくても大丈夫

 

 

+αの情報:「エタノール」と「メタノール」の混同に注意

 「メタノール(メチルアルコール)」は、「エタノール(エチルアルコール)」と1文字しか違いませんが、その性質は全く異なります。致死量は0.3~1.0mg/kg程度、10mLの摂取でも失明を起こす恐れのある、非常に危険な物質です。
 たとえ直接飲用しなくても、揮発したものを吸い込む、皮膚に付着したものが吸収されるといった経路でも容易に摂取してしまいます。消毒用に「エタノール」が品薄だからといって、工業用の「メタノール」を使うことは絶対に止めてください。

 

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