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似た薬の違い 点眼薬

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『ヒアレイン』と『ジクアス』、同じドライアイ治療薬の違いは?~涙の量・質への効果と刺激の差

回答:刺激の少ない『ヒアレイン』、効果の高い『ジクアス』

 『ヒアレイン(一般名:精製ヒアルロン酸)』と『ジクアス(一般名:ジクアホソル)』は、どちらもドライアイの治療に使う点眼液です。

 『ヒアレイン』は、涙の乾燥を防ぐ薬で、少ない刺激・不快感で治療できます。
 『ジクアス』は、涙の量と質を改善する、治療効果の高い薬です。

 値段が安く副作用も少ない『ヒアレイン』の方が気軽に使えますが、より高い効果が必要なときには『ジクアス』を選ぶ、というのが一般的です。

 

回答の根拠①:刺激の少ない「ヒアルロン酸」~安価で保険適用も広い

 「ヒアルロン酸」は多くの水を抱え込む性質があるため、優れた保水作用を発揮します。この「ヒアルロン酸」を点眼すると、涙が乾燥しにくくなり、ドライアイの症状が改善する1)、という効果を得られます。

 この「ヒアルロン酸」による治療効果は、単に人工涙液を補充する治療法よりも優れている2)ことがわかっています。
 また、「ヒアルロン酸」は値段が比較的安く、さらに点眼した際の刺激や不快感も少ない3)ため、多くの人にとって使いやすいドライアイ治療薬と言えます。

 1) ヒアレイン点眼液 インタビューフォーム
 2) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.244(1):109-12,(2006) PMID:15983814
 3) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.261(12):3355-3367,(2023) PMID:37162564

 

角膜の傷を治す効果もあり、保険適用も広い

 「ヒアルロン酸」には、角膜にできた傷の修復を促す効果もあります1)。そのため、ドライアイに限らず、目の手術やコンタクトレンズの着脱の際にできた物理的な傷、あるいはシェーグレン病やスティーブンス・ジョンソン症候群といった疾患で生じた眼の障害にも保険適用があります1)。

 

回答の根拠②:「ジクアホソル」の高い治療効果~涙の量と質を改善する作用

 「ジクアホソル」は、「ヒアルロン酸」よりもドライアイの治療効果が高いことがわかっています3,4)。ただし、そのぶん「ジクアホソル」の方が値段は高めで、さらに点眼した際の刺激・不快感も多い3)傾向にあります。
 そのため、より症状が重い人、しっかりと治療を行いたい人向きの薬と言えます。

※点眼液の値段 (2025年改訂時)
ヒアレイン:0.1%(223.60/瓶)、0.3%(323.50/瓶)
ジクアス:3%(343.50/瓶)、LX3%(770.50/瓶)

 4) Br J Ophthalmol.96(10):1310-5,(2012) PMID:22914501

 

涙の量と質を改善する「ジクアホソル」

 ドライアイの原因には、涙の分泌が減る「量の問題」と、乾きやすい涙しか作れなくなる「質の問題」とがあります。
 「水」の分泌が減ると涙の「量」も減るため、目は乾きやすくなります。
 「ムチン」の分泌が減ると涙の「質」が悪化し、乾きやすい涙になります。

 「ジクアホソル」は、この「水」と「ムチン」両方の分泌を促すことで、涙の「量」と「質」の両面からドライアイを治療する作用があります5)。こうした作用が、「ジクアホソル」の高い効果の要因と考えられています。

 5) ジクアス点眼液 添付文書

 

薬剤師としてのアドバイス:ソフトコンタクトレンズを装着したまま使える製剤、使えない製剤がある

 添加物に「塩化ベンザルコニウム」が使われている点眼薬は、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使うことは避ける必要があります。これは、「塩化ベンザルコニウム」がレンズに吸着6)し、角膜炎などを起こす恐れがあるからです。

 「ヒアルロン酸」や「ジクアホソル」の点眼液では、『ヒアレイン』や『ジクアス』といった先発医薬品にも発売当初は「塩化ベンザルコニウム」が使われていましたが、現在は添加物から削除されています。ただ、一部のジェネリック医薬品にはまだ「塩化ベンザルコニウム」が添加されているため、切り替えの際には注意が必要です。

※「塩化ベンザルコニウム」が使われていた製剤
ヒアレイン:0.1%の製造番号 1HT6679、0.3%の製造番号 3HT1084まで(2015年ころ)
ジクアス:製造番号MS1161まで(2018年ころ)

 6) CLAO J.24(4):227-31,(1998) PMID:9800062

 

ポイントのまとめ

1. 『ヒアレイン(ヒアルロン酸)』は、刺激や不快感が少なく、安価で使える
2. 『ジクアス(ジクアホソル)』は、ドライアイの治療効果が高い
3. 「塩化ベンザルコニウム」の含有は、先発医薬品or後発(ジェネリック)医薬品で異なることがある

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

ヒアルロン酸ジクアホソル
先発医薬品名ヒアレインジクアス
適応症下記疾患に伴う角結膜上皮障害
→シェーグレン病、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼球乾燥症候群(ドライアイ)等の内因性疾患
→術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用等による外因性疾患
ドライアイ
用法1日5~6回1日6回
(※LXは1日3回)
薬液のpHと浸透圧比
(※先発医薬品)
pH 6.0~7.0
浸透圧比 0.9~1.1
pH 7.2~7.8
浸透圧比 1.0~1.1
塩化ベンザルコニウムの使用先発医薬品は不使用先発医薬品は不使用
薬価収載年1995年2010年
世界での販売状況東アジアを中心に12ヵ国東アジアを中心に9ヵ国
規格の種類点眼液(0.1%、0.3%)、ミニ点眼液(0.1%、0.3%)点眼液3%、LX点眼液3%
先発医薬品の製造販売元参天製薬参天製薬
同成分のOTC医薬品『ヒアレインS』(販売されていない)

 

+αの情報①:「ヒアルロン酸」の0.1%と0.3%製剤

 「ヒアルロン酸」の点眼液には、0.1%と0.3%の製剤があります。どちらも使い方は同じですが、0.3%製剤の方が効果はやや高め2)です。そのため、0.1%製剤で十分な効果が得られない場合には0.3%製剤に切り替えて使うことがあります。
 なお、「ミニ点眼液」は防腐剤不使用の使い切りタイプですが、ドライアイではなく、シェーグレン病やスティーブンス・ジョンソン症候群による角結膜上皮障害にのみ適応があります1)。

+αの情報②:点眼回数が少ない「ジクアホソル」のLX点眼液

 「ジクアホソル」の点眼液は、通常は1日6回の点眼が必要ですが、これを添加物(粘稠化剤)の改良によって1日3回の点眼で済むように改良したのがLX点眼液です7)。
 点眼回数が少なくなることで服薬アドヒアランスが改善し、より確実に治療できるようになることが期待できます8)が、1日6回の従来製剤の方が良いという人も1割弱ほど居るようです9)。

 7) ジクアスLX点眼液 インタビューフォーム
 8) Adv Ther.41(6):2477-2485,(2024) PMID:38709396

 9) PLoS One.19(9):e0305020,(2024) PMID:39325761

  

+αの情報③:OTC医薬品の人工涙液『ソフトサンティア』

 ドライアイの治療薬として、「ヒアルロン酸」よりもさらに安価で気軽に使えるのは、OTC医薬品の人工涙液(例:『ソフトサンティア(一般名:塩化カリウム + 塩化ナトリウム)』)です。
 『ソフトサンティア』は、平たく言うと”ただの生理食塩水”で、防腐剤も使われていない10)ため、コンタクトレンズ装着時の眼の渇きにも適しています。

※医療用医薬品の『人工涙液マイティア』は、ソフトコンタクトレンズ装着時には使用できません(※塩化ベンザルコニウムを含む)。

 10) ソフトサンティア 添付文書

 

+αの情報④:薬以外のドライアイ対策

 ドライアイの治療では、”薬以外の対策”も一緒に行うとより効果的です。

 たとえば、加湿器を使って部屋の湿度を上げるとドライアイの症状は大きく改善することが報告されています11)。特に空気が乾燥する冬場は、喉のケアも兼ねて部屋を加湿するのは良いアイデアになります。
 あるいは、ホットタオルを使った目の温浴も有効12)ですが、約2分おきに再加熱しないと効果的な温度(40~47℃)を維持できないことや、過加熱による火傷などに注意が必要です。

 11) Acta Ophthalmol.91(8):756-62,(2013) PMID:23279709
 12) Cont Lens Anterior Eye.46(2):101775,(2023) PMID:36715292

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学/和歌山県立医科大学)
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