■サイト内検索


スポンサードリンク

抗ヒスタミン薬 子どもの薬

/

2歳未満の乳幼児に「抗ヒスタミン薬」は使える?~熱性けいれんのリスクと市販薬を使う際の注意

回答:一部、使わない方が良い薬がある

 『ペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)』や『ザジテン(一般名:ケトチフェン)』など、脳に移行しやすい「抗ヒスタミン薬」は、熱性けいれんのリスクを高めることが指摘されています。そのため、熱性けいれんを起こしたことがある子どもや、発熱した2歳未満の乳幼児では避けた方が良いです。

 また、こうした脳に移行しやすい「抗ヒスタミン薬」は市販の小児用鼻炎薬にも広く使われていますが、発熱しているときは避けるなど、安易な使用は控える必要があります。基本的に、2歳未満の乳幼児の場合は、病院を受診することをお勧めします。

回答の根拠①:熱性けいれんのリスクと「抗ヒスタミン薬」の脳内移行性

 脳へ移行しやすい「鎮静性」の抗ヒスタミン薬は、熱性けいれんのリスクを高めることが報告されています1)。

 1) 脳と発達.46(1):45-6, (2014)

 「鎮静性」の抗ヒスタミン薬とは、脳に移行しやすいもの、定義としては脳内ヒスタミン受容体占有率が50%を超えるものを指します2)。
 古いタイプの「第一世代」の薬だけでなく、「第二世代」の薬でも『ザジテン』や『セルテクト(一般名:オキサトミド)』は脳へ移行しやすい「鎮静性」に分類され、避けるべき薬に挙げられています3)。実際に『ザジテン』では、「第一世代」の薬と同程度のリスクがあることも報告されています4)。

 このことから、熱性けいれんを起こしたことのある乳幼児に対して「鎮静性」の抗ヒスタミン薬を使うことは推奨されていません5)。「第一世代」や「第二世代」という括りではなく、脳への移行性をもとに薬を選ぶ必要があります。

※熱性けいれんのリスクを高める恐れがある「鎮静性の抗ヒスタミン薬」 3)
『ペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)』
『ポララミン(一般名:d-クロルフェニラミン)』
『レスタミン(一般名:ジフェンヒドラミン)』
『タベジール(一般名:クレマスチン)』
『アタラックスP(一般名:ヒドロキシジン)』
『ザジテン(一般名:ケトチフェン)』
『セルテクト(一般名:オキサトミド)』

※安全とされる「非鎮静性の抗ヒスタミン薬」 3)
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』
『アレジオン(一般名:エピナスチン)』

 2) 日本耳鼻咽喉科学会会報.112(3):99-112,(2009)
 3) 日本医事新報社.4732:105,(2015)
 4) Pediatr Neurol.42(4):277-9,(2010) PMID:20304332
 5) 日本小児神経学会「熱性けいれん診療ガイドライン2015」CQ7-1

回答の根拠②:2歳未満でも安全に使える「非鎮静性」の薬

 熱性けいれんの発症ピークは、1歳2ヶ月~1歳6ヶ月の間とされています6)。
 そのため、これまでに熱性けいれんを起こした経験がなくても、2歳未満の乳幼児の場合は「鎮静性」の抗ヒスタミン薬は避けた方が無難です。

 6) Behrman Nelson’s Textbook of Pediatrics.18th ed

 小児用の薬は「鎮静性」のものが多いですが、「非鎮静性」の薬でも『アレグラ』や『ザイザル』は0歳6ヶ月から使える抗ヒスタミン薬です7,8)。発熱した乳幼児など、熱性けいれんのリスクが高いときには貴重な選択肢になります。

※安全とされる抗ヒスタミン薬の小児用量 7,8,9)
『アレグラ』・・・・0歳6ヶ月~(ドライシロップ)
『ザイザル』・・・・0歳6ヶ月~(シロップ)
『アレジオン』・・・3歳~(ドライシロップ)

 7) アレグラドライシロップ 添付文書
 8) ザイザルシロップ 添付文書
 9) アレジオンドライシロップ 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:市販の鼻炎薬の扱いにも注意

 熱性けいれんは、1~2歳ころをピークに5~6歳くらいまでの子どもで起こる、比較的よくあるけいれん症状です。基本的に、このけいれんによって脳が悪影響を受ける、といったことはありません。
 しかし、一度熱性けいれんを起こした子どもは2回目、3回目と繰り返して起こすことが多く、また薬によってけいれんの症状が悪化する場合もあります。

 そのため、熱性けいれんのリスクが高い乳幼児では「抗ヒスタミン薬」の選択も慎重に行う必要があります。特に、市販されている子ども用の鼻炎薬には「鎮静性」の抗ヒスタミン薬が使われているため、熱性けいれんのリスクが高い2歳未満の乳幼児では、安易に市販薬を使わず、病院を受診することをお勧めします。

ポイントのまとめ

1. 「鎮静性」の抗ヒスタミン薬は、熱性けいれんのリスクを高める恐れがある
2. 2歳未満でも使える「非鎮静性」の薬には、『アレグラ』や『ザイザル』がある
3. 市販の鼻炎薬には「鎮静性」の薬がよく使われているため、2歳未満の乳幼児には安易に使用しない

+αの情報①:市販薬に書かれた注意事項

 市販の鼻炎薬のなかには2歳未満の乳幼児に使える商品も販売されていますが、いずれも使われているのは「第一世代」の抗ヒスタミン薬、つまり「鎮静性」に分類される薬です。
 「第一世代」の薬は速効性に優れ、鼻水を止める効果も高いことから、症状が出てからでも効く薬としてよく使われていますが、眠気の副作用だけでなく、熱性けいれんのリスクにも注意が必要です。

 このことから、子ども用の鼻炎薬に以下のような注意書きがされています。市販薬を使う際には必ず目を通すようにしてください。

※『ムヒの子ども鼻炎シロップS』の注意書き
2才未満の乳幼児には医師の診療を受けさせることを優先する
高熱がある場合は医師・薬剤師・登録販売者に相談する

+αの情報②:アメリカでの規制~2歳未満の乳幼児に対する感冒薬

 日本よりもセルフメディケーションが進んでいるアメリカでは、乳幼児が感冒薬として「抗ヒスタミン薬」を過量摂取している傾向にあり、様々なリスクが顕在化しています。そのため、米国食品医薬品局(FDA)は2歳未満の乳幼児に対して「抗ヒスタミン薬」が含まれる感冒薬の使用を禁止しています10)。

 10)  厚生労働省 医薬食品安全対策課「小児用かぜ薬・鎮咳去痰薬等の安全対策について」

 今後日本でもセルフメディケーションが進むにつれ、同様の問題は起こる恐れがあります。市販薬も正しく選んで使うことが大切です。

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

前のページ

次のページ

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

■おすすめ記事

  1. 『ジスロマック』と『クラリス』、同じマクロライド系抗菌薬の違…
  2. 『アドエア』と『シムビコート』、同じ喘息吸入薬の違いは?~デ…
  3. 『チャンピックス』と『ニコチネル』、同じ禁煙補助薬の違いは?…
  4. 『タミフル』・『リレンザ』・『イナビル』・『ラピアクタ』、同…
  5. 『アイトロール』と『ニトロール』、同じ硝酸薬の違いは?~初回…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

PAGE TOP