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似た薬の違い インスリン

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『ランタス』・『レベミル』・『トレシーバ』、同じ持効型インスリン製剤の違いは?~値段、注射回数・時間やデバイスの違い

回答:価格の安い『ランタス』、朝夕で調節できる『レベミル』、時間指定のない『トレシーバ』

 『ランタス(一般名:インスリン グラルギン)』、『レベミル(一般名:インスリン デテミル)』、『トレシーバ(一般名:インスリン デグルデク)』は、いずれもインスリンの注射薬(持効型)です。
ランタスとレベミルとトレシーバ
 『ランタス』は最初に登場した持効型のインスリン注射で、値段も安いため広く使われています。
 『レベミル』は1日2回に分けて使うことができるため、朝夕で血糖値が変動する場合には薬の量を調節することができます。
 『トレシーバ』は注射の時間指定がなく、また注射を忘れた場合でも8時間以上の間隔をあければ使えるなど、時間管理の難しい人でも使いやすい薬です。

 3つとも薬としての本体がインスリンであることを含め、副作用の頻度や注意点も同じです。そのため、値段や注射の時間・回数、デバイスの使い勝手の良さなどから、最も都合の良いものを選ぶことができます。

回答の根拠①:『ランタス』~最初に出た薬で最も安く、使い勝手が良い

 『ランタス』は、1日1回で24時間の安定した効果が続く「持効型」のインスリンとして初めて登場した薬です。ちょうど効き目が24時間で1)使い勝手も良く、今でも広く使われています。

 1) ランタス注ソロスター インタビューフォーム

 また値段が最も安く、経済的負担が少ないのも特徴です。

※販売開始年と、代表的なキットの薬価
ランタス:2001年(ソロスター1キット2,069円)
レベミル:2007年(フレックスペン1キット2,601円)
トレシーバ:2013年(フレックスタッチ1キット2,619円)

より血中濃度が安定する『ランタスXR』

 『ランタス』の濃度を3倍にした『ランタスXR』では、より安定したインスリンの血中濃度が得られます2)。
 『ランタス』のようなインスリンの基礎分泌を補う薬の場合、24時間の安定した効果が必要なため、こうした血中濃度の変動が少ない薬を選ぶことも重要です。
ランタスXRとランタス~濃度と持続性
 2) Diabetes Care.38(4):637-43,(2015) PMID:25150159

回答の根拠②:『レベミル』~1日2回に分けて調節できる

 『レベミル』は「持効型」のインスリン製剤の中で唯一、1日2回に分けて使うことができます3)。

 3) レベミル注フレックスタッチ インタビューフォーム

 1日1回の注射で安定している場合、わざわざ手間を増やす必要はありません。しかし、1日の中で血糖値に変動があり、朝と夕とで必要なインスリン量が異なるような場合、『レベミル』であれば薬の量を調節し、よりその人の状況に合わせた使い方ができます。

妊娠中の安全性評価で、やや優れる『レベミル』

 『レベミル』は、アメリカ食品医薬品局(FDA)による妊娠中の安全性評価で【B】と評価され、【C】と評価された『ランタス』よりも安全性の点で優れています1,3)

 FDAによる基準は2015年に廃止されましたが、これを一つの判断基準として、妊娠中や今後妊娠する可能性が高い場合には『レベミル』を選ぶ場合があります。

回答の根拠③:『トレシーバ』~注射の時間が少しズレても問題がない

 『トレシーバ』は1日1回、毎日一定の時間であれば、朝・昼・夕どのタイミングで使っても良い薬です4)。
 そのため、介護施設等で朝食前や夕食前・就寝前といった忙しい時間帯の注射が難しい場合でも使いやすい薬と言えます。

 4) トレシーバ注フレックスタッチ 添付文書

注射を忘れた場合でもリカバリーしやすい

 『トレシーバ』は作用時間が42時間以上と長いため、注射を忘れた場合でもすぐには血中濃度に影響しにくく、リカバリーしやすいという特徴があります。
 実際に、注射時刻を曜日ごとに変更し、月・水・金は朝、火・木・土・日は夕方で使っても、長期的な血糖値のコントロールには影響しなかったことが報告されています5)。

 このことから、『トレシーバ』は投与を忘れた場合でも、次の投与まで8時間以上の間隔があれば気づいた時点で注射して良い、とされています5)。

 5) トレシーバ注フレックスタッチ インタビューフォーム

薬剤師としてのアドバイス:作用の違いより、使いやすさで選ぶことも多い

 『ランタス』・『レベミル』・『トレシーバ』は、効果が持続するように施された工夫の違いによって、「インスリン」として作用するまでに若干の違いがあります。
 しかし、最終的に効果を発揮する「インスリン」の作用は同じもので、副作用の頻度にも大きな違いはありません。

 そのため、注射の時間・回数、デバイスの使い勝手の良さなどから、自分が薬を使うにあたって最も使いやすいものを選ぶ、という認識で問題ありません。
 特に、手指が不自由な場合には最も弱い力で注射できる『トレシーバ』の「フレックスタッチ」を老眼でデバイスの単位設定が難しい場合には文字が大きい『レベミル』の「イノレット」を、といったように、それぞれデバイスの使いやすさという観点から選ぶこともあります。

ポイントのまとめ

1. 『ランタス』は、効き目が24時間で使い勝手が良く、値段も安い
2. 『レベミル』は、1日2回に分けて調節でき、妊娠中の安全性評価が比較的高い
3. 『トレシーバ』は、注射の時間指定がなく、忘れた場合のリカバリーもしやすい

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較


◆有効成分

ランタス:インスリン グラルギン
レベミル:インスリン デテミル
トレシーバ:インスリン デグルデク

◆用法
ランタス:1日1回(朝食前または就寝前)
レベミル:1日1回(夕食前または就寝前)、1日2回(朝食前と、夕食前または就寝前)
トレシーバ:1日1回

◆適応症
ランタス:インスリン療法が適応となる糖尿病
レベミル:インスリン療法が適応となる糖尿病
トレシーバ:インスリン療法が適応となる糖尿病

◆作用時間
ランタス:ほぼ24時間
レベミル:約24時間(最大効力は3~14時間)
トレシーバ:42時間以上

◆デバイスの種類
ランタス:注射(カート、ソロスター)
レベミル:注射(ペンフィル、フレックスペン、イノレット)
トレシーバ:注射(ペンフィル、フレックスタッチ)

◆製造販売元
ランタス:サノフィ
レベミル:ノボノルディスク
トレシーバ:ノボノルディスク

+αの情報①:効果を持続化させる工夫の違い

 『ランタス』・『レベミル』・『トレシーバ』は、いずれも「インスリン」ですが、作用が長続きするように施した工夫が違うため、薬の構造にも違いがあります。そのため、有効成分の表記にも若干の違いがあります。

※『ランタス』の構造と有効成分の表記
構造:ヒトインスリンA鎖21位のアスパラギンをグリシンに置換、B鎖C末端のスレオニンにアルギニンを2つ付加
名称:インスリン グラルギン

※『レベミル』の構造と有効成分の表記
構造:ヒトインスリンB鎖30位のスレオニンを欠損、29位のリジン残基にミリスチン酸を結合
名称:インスリン デテミル

※『トレシーバ』の構造と有効成分の表記
構造:ヒトインスリンB鎖30位のスレオニンを欠損、29位のリジンにグルタミン酸を介してヘキサデカン二酸を結合
名称:インスリン デグルデク

『ランタス』の作用が続く理由~pH差による等電点沈殿を利用した方法

 『ランタス』は、等電点がpH7.4に設計されています。そのため皮下注射すると、生体のpHでは溶解度が低くなり、一旦沈殿物を形成します(等電点沈殿)。
 その後、この沈殿物がゆっくりと溶けて血液中に移行するため、インスリンが徐々に作用する、という効果が得られます1)。
ランタス~効果が持続する理由
 濃度の高い『ランタスXR』では注射する液量が少ないため、生成される沈殿物が小さくなります。そのため溶けるスピードが遅くなり、より吸収が穏やかになります

『レベミル』の作用が続く理由~アルブミンとの結合

 『レベミル』は血液中に吸収された後、97%近くが血液中の「アルブミン」と結合します。
 その結果、「アルブミン」と結合した「結合型」と結合しなかった「非結合型」が平衡状態となり、薬として作用する「非結合型」のインスリンは量が少ない状態が長く維持されます3)。
レベミル~アルブミンと結合

『トレシーバ』の作用が続く理由~複合体の形成

 「インスリン」は、「インスリン」同士で複合体を形成する性質(自己会合)があります。しかし、薬として作用を発揮するのは、複合体を形成していない「単量体」だけです。

 『トレシーバ』は、もともと6つの「インスリン」からなる「6量体」が2個くっついた状態になっています。皮下注射すると、これらがいくつも連なった複合体を作ります。ここから少しずつ「単量体」の「インスリン」を解離していくため、作用も徐々に発揮され、長続きします5)。
トレシーバ~複合体からの解離

+αの情報②:『ランタス』の1日2回投与は可能か

 『ランタス』の用法は1日1回です。「適宜増減」の文言がありますが、「適宜増減」とは用量を増減させることであり、投与回数を増減させることではありません。そのため、保険適用外の使い方となります。

 ただし、生活状況や、デバイスの使い勝手、副作用などの関係から、やむを得ずこういった方法がとられるケースもあります。

+αの情報③:『トレシーバ』は低血糖リスクが低い可能性

 『トレシーバ』は、『ランタス』よりも維持期での症候性低血糖の発生頻度が低かったとする報告があります6)。

 6) JAMA.318(1):45-56,(2017) PMID:28672317

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
★6月22日のフジテレビ「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せました。
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