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専門用語解説 統計学

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NNT(Number Needed to Treat)とは何のことか~コストを考える際の利点と、エンドポイント設定の問題点

回答:1人の患者を救うために、どれだけ患者に薬を普及させる必要があるのか

 NNT(Number Needed to Treat)とは、特定のエンドポイント(死亡や病気の発症など)に到達する患者を1人減らすために、何人の患者が薬を服用する必要があるか、という疫学の指標です。

 例えば、ある新薬Aを高血圧患者に飲ませたところ、10人中9人の血圧が下がったとします。
 この時、血圧が下がったお陰で、1人の心筋梗塞を防ぐことができたとします。

 この場合、新薬AのNNTは10人ということになります。
NNTとは
※厳密には、プラセボ群の治療効果を差し引く必要があります。
※算出方法は、1を絶対リスク減少率(薬とプラセボのリスク差:ARR)で割った値です。

 注意すべきは、心筋梗塞で死亡する等といった”エンドポイントに到達する”患者を1人減らすために必要な薬の量のことであることです。”血圧が下がる”という結果を1人出すために必要な薬の量ではありません。

 また、研究のエンドポイントは軽症なものから死亡など大きなものまで、様々なものに設定することができます。設定したエンドポイントの内容によって、NNTの大小が持つ意味が変わることにも注意が必要です。

 そのためNNTは、薬そのものの有効性や安全性の評価よりも、薬を使うことによる経済的な損得を、統計的に試算する際に重要な指標になります。

NNTの利点:薬による治療のコストがわかる

 先述の例の場合、新薬AのNNTは10です。

 つまり、新薬Aを10人が服用すれば、心筋梗塞で死亡する人を1人減らすことができます。

 同様に、NNTが100の新薬Bがあっとします。この新薬Bを100人が服用すれば、心筋梗塞で死亡する人を1人減らすことができます。
NNTの大小比較

 新薬Aと新薬Bの値段が同じであった場合、心筋梗塞による死亡者を1人減らすためのコストは、新薬Aの方が少ないことになります。

 つまり、NNTが小さければ小さいほど、1人の患者を救うために必要なコストが少なくなります。

 

NNTの問題点:エンドポイントの設定内容によって、NNTの大小が持つ意味は変わる

 NNTには、予め設定された”エンドポイント”があります。この時のエンドポイントの設定内容によって、NNTの大小が持つ意味も大きく変わります。

 先述の例の場合、”エンドポイント”は「心筋梗塞による死亡」です。

 一人の人間が死亡する、ということの経済的損失は極めて大きなものです。そのため、例えNNTが多少大きくとも、十分な見返りがあると言えます。経済的に見ても、数千万円をかけてでも、薬を普及させるべきものです。

 一方、”エンドポイント”は非常に軽症なものに設定することもできます。例えば「入院」などが挙げられます。

 入院によって起こる経済的損失が数百万円程度である場合、その「入院」に至る患者を減らすため、数千万円規模のコストをかける必要があるのかどうか、議論の余地があります。
NNTとエンドポイントの設定

薬剤師としてのアドバイス:NNTは、薬価やエンドポイントの内容を踏まえて読む

 以上のように、NNTの数字が同じであっても、薬価によってコストは変わります。

 また、設定されたエンドポイントの内容によっても、NNTが大きくても使うべき薬なのか、NNTが小さければ使うメリットのある薬なのか、といった評価は変わります。

 つまり、NNTの数字は、薬価やエンドポイントの内容を踏まえて読むことで、”薬のコストパフォーマンス”を理解することができる、と言えます。

 当然、医学・薬学の視点からは”病気で苦しむ人が居る限り治療方法を探し確立する”という理想を追い求める必要があります。

 しかし、保険会社や製薬企業は薬に対するコストパフォーマンスを考える必要があります。

 特に、民間の医療保険制度が発達しているアメリカなどでは、エンドポイントが軽症のもので、かつ、NNTが大きな薬の場合、支払い請求が拒否されてしまう、といったことが起こり得ます。

 NNTの数字が持つ意味や、こうした指標が必要になる背景を知っておくことで、文献や研究発表の内容をより深く理解することができます。
 あまり統計に触れる機会がない薬局薬剤師と言えど、必要な統計リテラシーは備えておくようにしましょう。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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