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スタチン 薬の特別な使い方

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「スタチン」と「フィブラート」の併用は可能?~横紋筋融解症のリスクと、低HDLの脂質異常症

回答:原則できないが、治療効果や安全性の報告もある

 脂質異常症に使う「スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)」と「フィブラート」は、通常は併用することができません。
 これは、併用によって「横紋筋融解症」という副作用を起こすリスクが高まるとされているからです。

 しかし、場合によっては「スタチン」と「フィブラート」を併用することで治療効果が高まること、また「横紋筋融解症」のリスクも増えないことが報告されています。
スタチンとフィブラートの併用
 このことから、腎機能に問題がない場合などでは「スタチン」と「フィブラート」の併用が治療の選択肢となることがあります。

回答の根拠①:添付文書上は「原則併用禁忌」

 『クレストール(一般名:ロスバスタチン)』などの「スタチン」製剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)と、『リピディル(一般名:フェノフィブラート)』などの「フィブラート」製剤は、原則併用できません1,2)。

 1) クレストール錠 添付文書
 2) リピディル錠 添付文書

 これは、それぞれを単独で使用する場合よりも、併用すると「横紋筋融解症」のリスクが高まるという報告があるからです3)。中には、この「横紋筋融解症」による入院リスクがおよそ10倍高くなるという報告もあります4)。

 3) Am J Cardiol.106(11):1594,(2010) PMID:21094360
 4) JAMA.292(21):2585-90,(2004) PMID:15572716

 ただし、「横紋筋融解症」は極めて稀(0.1%未満)な副作用で、腎機能に問題がなければリスクも少ないことから、絶対にダメというわけではなく、治療のメリットが上回る場合には併用治療が行われることもあります。

 このことから、添付文書上も「原則併用禁忌」という記載がされています。

回答の根拠②:ACCORD Lipid試験による併用の有効性と安全性

 「スタチン」製剤である『リポバス(一般名:シンバスタチン)』と、「フィブラート」製剤である『リピディル』を併用して治療した場合、中性脂肪(TG)が高く善玉コレステロール(HDL)が低い人では治療効果がより高くなることが示唆されています5)。
スタチンとフィブラートの併用~TGが高くHDLが低い

 更に、『リポバス』単独の場合と副作用のリスクが変わらなかったことも併せて報告されています3)。また、『リピトール(一般名:アトルバスタチン)』と『リピディル』の組み合わせでも有効性と安全性が報告されています6)。

 5) N Engl J Med.362(17):1563-1574,(2010) PMID:20228404
 6
) J Am Coll Cardiol.45(10):1649-53,(2005) PMID:15893182

 このことから、「スタチン」と「フィブラート」の併用は必ずしも絶対にダメというわけではなく、腎機能に問題がなければ、選択肢の一つとして考えることができます。
 特に、悪玉コレステロール(LDL)は高くないものの善玉コレステロール(HDL)が低い、というタイプの脂質異常症に対しては重要な選択肢になります。

 ただし、併用する場合にはそれぞれの薬の上限量に注意する必要があります7)。(例:「フィブラート」製剤と併用する場合の『リポバス』の上限量=1日10mg)

 7) リポバス錠 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:「横紋筋融解症」という名前に必要以上に怯えない

 最近は医師や薬剤師でなくとも、インターネットを使えば薬の添付文書など専門的な文書を読むことができます。
 しかし、そこに書かれた「横紋筋融解症」という専門用語の「見た目」の恐ろしさに、不必要に、過剰に怯えてしまう人が少なくありません8)。

 8) 医療薬学 35(8):542-550,(2009)

 「横紋筋融解症」は、何も筋肉がドロドロに溶けてゾンビになってしまう副作用のことではありません

 「横紋筋融解症」は、極めて稀(0.1%未満)にしか起こらない副作用です。
 さらに、万が一「横紋筋融解症」が起こったとしても、定期的な血液検査や、脱力感や筋肉痛などの自覚症状に気を付けておくことで早期発見ができ、重症化を防ぐことができます。

 過剰に「横紋筋融解症」を恐れて薬を飲まなくなってしまうと、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクが高くなります。こうしたリスクは、「横紋筋融解症」のリスクよりも何百倍・何千倍も高いリスクです。

 処方されている薬はきちんと指示通りに服用し、病気や治療・薬に関して疑問や不安を感じた時は、必ず医師・薬剤師などの専門家に相談するようにしてください。

+αの情報:「横紋筋融解症」の実情

 2005年度には、最も「横紋筋融解症」を起こす頻度が高かった薬として『リピトール』の年間45件が報告されています9)。
 一方、『リピトール』は世界でも最も処方頻度の高い医薬品のTOP20に入るような薬で、日本でも年間600~700億円を売り上げています10)。

 9) 薬事法第77条の4の2に基づく副作用報告件数 (2005)
 10) アステラス製薬 主な製品の売上高[IFRS]

 確かに、「横紋筋融解症」は絶対に起こらないものではありませんが、医療従事者でも出遭うことの少ない副作用のため、過剰に怯える必要はありません。
 定期的に血液検査をしてもらう、脱力感や筋肉痛などの自覚症状には気を付けておくなど、早期発見のための注意をしておくことで十分と言えます。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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