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薬の誤解 副作用

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「横紋筋融解症」って、筋肉が溶けてしまう怖い副作用?~名前と実態の差

回答:腎臓への負担の方が問題

 「横紋筋融解症」という副作用は、筋肉が融解するというその名前のインパクトから、全身の筋肉が溶けてしまう怖い副作用である、と思われがちです。

 しかし、薬を使っていたら眼で見て分かるほどに全身の筋肉がドロドロに溶けてしまった、ということは起こり得ません。

 この副作用が怖いのは、筋肉が溶けてしまうという現象そのものではなく、壊死した筋肉から流出した成分によって腎臓などの臓器が障害されることです。

回答の根拠:腎障害の危険

 「横紋筋融解症」は、文字通り骨格筋が壊死・融解する病態です。

 骨格筋細胞が壊死する際、細胞に含まれていた「ミオグロビン」や「クレアチンキナーゼ」等の成分が流出し、血液中に大量に流れ込みます。
 大量に流れ込んだ「ミオグロビン」等の物質は腎臓の尿細管に沈着し、腎臓の機能を障害します。また、時には全身の臓器にも影響を及ぼし、多臓器不全などを起こす恐れもあります1)。
横紋筋融解症
 1) 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル:横紋筋融解症」

 つまり、筋肉が溶けてしまうことが怖いのではなく、溶けた筋肉から流れ出た物質によって、腎臓をはじめ全身の臓器が障害されることが怖い副作用です。

 メカニズムは異なりますが、クラッシュ症候群も、傷害を受けた筋肉などから流出した物質が全身に回ることで起こる症例です

 

薬剤師としてのアドバイス:自覚症状は乏しいが、違和感があったら医師にすぐ連絡を

 先述の通り、「横紋筋融解症」では眼で見てわかるほどに筋肉が溶けていってしまうものではありません。

 自覚症状は一般的に以下のようなものです。

横紋筋融解症の自覚症状

1. 筋肉痛になる
2.
尿の色が赤褐色になる
3. 手足が痺れる、力が入らない

 多くの場合、薬を飲み始めてすぐに、”筋肉痛”から始まります1)。一般的に、最も筋肉量の多い大腿部(太もも)で感じ始めることが多い傾向にあります。

 極めて稀な副作用ではありますが、運動をした覚えもないのに、薬を飲み始めたら筋肉痛になった、という場合は、この副作用を疑う必要があります。
 病院では血液検査をすることによって、本当に副作用かどうかの詳細な確認をすることができます。このような自覚症状を感じた場合には、早めに病院を受診するようにしましょう。

 また、「横紋筋融解症」は薬による副作用だけでなく、過度な筋力トレーニングや、細菌やウイルスへの感染、脱水・熱中症などによっても起こることがあります。

+αの情報①:副作用としての発生頻度は、極めて低い

 「横紋筋融解症」の副作用は、様々な薬で起こる可能性があります。しかし、いずれも発生頻度は極めて低く、医療従事者でも遭遇する可能性もほとんどないものです。

 2005年度には、最も頻度が高かった薬として『リピトール(一般名:アトルバスタチン)』が挙げられていますが、1年間で45例の報告です2)。
 一方、『リピトール』は世界でも最も処方頻度の高い医薬品のTOP20に入るような薬で、日本でも年間600~700億円を売り上げています3)。

 2) 薬事法第77条の4の2に基づく副作用報告件数 (2005)
 3) アステラス製薬 主な製品の売上高[IFRS]

 これらのことから、「横紋筋融解症」は頻繁に起こるような副作用ではなく、極めて稀な副作用であると言えます。
 また、万が一起きてしまった場合でも、すぐに対応することができれば重症化することもありません。名前のインパクトに怯えるのではなく、実態を正しく知っておくようにしましょう。

+αの情報②:アムロジピンとアジルサルタンの症例

 2016年1月、高血圧治療に用いるCa拮抗薬『アムロジン(一般名:アムロジピン)』やARB『アジルバ(一般名:アジルサルタン)』によって、薬との因果関係が否定できない「横紋筋融解症」を発症し、死者が出たと報道されたことで、新たに注目が集まっています4)。

 4) 読売新聞 1月12日(火)21時51分配信

 繰り返しになりますが、「横紋筋融解症」は様々な薬で起こる恐れがあるものの、極めて稀な症例であり、また初期段階で対応できれば重症化することもありません

 血圧の薬を自己判断で中止してしまうと、血圧が乱れて大きく健康を損なう恐れがあります。副作用については正しく実態と兆候を知った上で、高血圧治療は指示通りに続けるようにしてください。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • U
    • 2016年 4月 04日

    横紋筋融解症
    オーグメンチンなどはどうでしょう???

    それになれば医療使わなければ必然と死に。。ますよね。。
    仮に故意に見落とした場合なんですが
    筋組織が壊死してるだろうと目視できたとしたら
    クライアントはもってどれくらいですか?
    ちなみに。。
    全身の筋組織が急激に減退するような薬剤ってありますか?
    →肺炎、誤嚥性肺炎に用いられる薬品などで。。。

    • Fizz-DI
    • 2016年 4月 04日

    >Uさま
     いまひとつ質問の意図がわかりかねますが、記事内容に関して、改めて一般的な傾向・事実をお答えさせて頂きます。

     横紋筋融解症が発症するのは極めて稀なケースですが、薬に限らず急激な運動など、様々なきっかけで起こるリスクがあります。今はまだ報告されていない薬であっても、未来永劫100%起こらないとは言えません(悪魔の証明)。そのため、どんな薬であっても起こる潜在的なリスクはあります。
     ただし、投稿にもあるように、目視で筋肉組織が壊死しているとわかるほどに壊死が進むことは、通常起こり得ません。その前に何らかの臓器トラブルが起こるからです。

     一般的には、肺炎などで急激に筋肉が衰えるのは、寝たきりになるなど別の要因で起こったと考えるのが妥当かと思われます。

     もし横紋筋融解症の兆候があるのであれば、血液検査などきちんとで診断し、原因の薬を中止するなど、厚生労働省の定める「重篤副作用疾患別対応マニュアル」等を参考に対処する必要があるかと思います。

    • 松浦亮
    • 2016年 5月 24日

    目でみて筋肉の壊死がわかるまでにはならないと書いてありましたが触って筋肉がなくなったと感じる事はないということですか? それと腎障害は急性腎不全にならなくても障害は残る場合はありますか? また多尿になることもありますか?

    • Fizz-DI
    • 2016年 5月 24日

     ①「横紋筋融解症」によって、触って筋肉が無くなったと感じるほど筋肉が減ることもありません。通常、見たり触ったりしてわかるほど筋肉が無くなるのは、純粋に筋力が低下した、痩せたといったことが要因です。
     ②腎臓に対する負担は、基本的に軽いものであれば一時的ですが、副作用が重篤であったり、元々腎臓が弱かったり、別の病気があったりすると、必ずしも100%そうとは限りません。多尿になるか乏尿になるかも個人差があります。個別の対応が必要なケースもありますので、心配な場合は事情をよくわかっているかかりつけの医師・薬剤師に相談するようにしてください。

     どういった状況でどういった心配をされているのかわかりかねますが、基本的に「横紋筋融解症」では筋肉が無くなったことが傍目にも認識できる、といったことはありません。勝手に副作用だと思い込んで、自己判断で薬を中断したりしないようにしてください。

    • 松浦亮
    • 2016年 5月 25日

    返答ありがとうございます。ニューキノロンの抗菌剤なのですが投与量が途中から増えた場合や投与が長期になると発生しやすくなりますか? 期間や量は関係ないですか? また一度なったからと言って投与する度、横紋筋融解がおこるわけではないですか? 横紋筋融解をその度おこしていたとしても触って分かるほどの筋力低下にはなりませんか? 色々と調べていても多尿ではなく乏尿と書いてあったので多尿になるのはどうしてでしょうか? 腎臓にダメージを与えていても急性腎不全でない場合、軽度の腎障害ということですか? それは後遺症として残るのですか? 質問が多くなってしまいすみません。

    • Fizz-DI
    • 2016年 5月 25日

     色々とご自身が飲まれている薬について調べた結果、不必要な不安を煽られているのではないかと思われます。個別の事例については例外はいくらでもあるため正確な返答はできません。一度かかりつけの医師か薬剤師に相談することをお勧めします。

    ①ニューキノロンの抗菌剤
     本文中にもあるように、そもそも稀な副作用ではありますが、どんな薬でも起こるリスクはありますし、薬以外でも起こることがあります。「家に居たら飛行機が落ちてこないか?」と同じように、絶対に無いとは言い切れませんが、ほとんどありません。

    ②投与量が途中から増えた場合や投与が長期になると発生しやすくなるか
     副作用は一般的に多量・長期になれば起こりやすくなる傾向にありますが、少量・短期でも起こること場合もあり、一概にどうとは言えません。

    ③一度なったら繰り返さないか
     繰り返すリスクがあるので、よほどのことが無い限り、一度副作用を起こした薬は避けるのが一般的です。ただし、これも時と場合によるため一概にどうとは言えません。どうしてもその薬が必要であれば、対策をしながら服用することもあります。

    ④触って分かるほどの筋力低下
     何度も申し上げますが、外観や触感でわかるほど筋力が無くなる前に、体で別の不調が起こるので、起こりません。ただし、あくまでこれも一般論であって、未来永劫にわたってそういった事例が100%起こらないと断言できるかというと、人間の体では色々と例外もあるのでできません。個別の事例についてはかかりつけの医師・薬剤師に相談してください。

    →つづく

    • Fizz-DI
    • 2016年 5月 25日

    →つづき

    ⑤多尿になるのはどうして
     ろ紙が破れると、ろ過せず水が大量に出てきてしまいます。これと同じように、腎臓の機能が低下するとろ過しないままの尿が大量に出ることがあります。
     一方、ろ紙が詰まると、ろ過できず水も出てこなくなります。これと同じように、腎臓の機能が低下すると尿が出なくなることもあります。
     こうした機能低下がどういった症状として現れるのか、時と場合によって様々ですので、一概にどうなると断言はできません。

    ⑥腎臓にダメージを与えていても急性腎不全でない場合、軽度の腎障害か
     エンジンが熱を持つことと、エンジンが故障することが別なように、腎臓に一時的な負担がかかることと、腎障害になることは全く別の話です。

     おそらく、他にも色々と不安を抱かれていると思いますが、ここでお答えするには正しい情報伝達や個別の事情を汲むといった点から限界もあるため、かかりつけの医師・薬剤師に相談するようにしてください。

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★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
★6月22日のフジテレビ「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せました。
★3月23日発売の「異世界薬局(コミック版)」に薬学監修として携わりました。
★12月28日のYahoo!ニュース動画「抗生物質が効かなくなる日」に監修として携わりました。

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