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似た薬の違い 筋弛緩薬

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『テルネリン』と『ミオナール』、同じ筋弛緩薬の違いは?~効果と副作用・相互作用

回答:強力な『テルネリン』、副作用・相互作用の少ない『ミオナール』

 『テルネリン(一般名:チザニジン)』と『ミオナール(一般名:エペリゾン)』は、どちらも筋肉の緊張・凝りをほぐす筋弛緩薬です。

 『テルネリン』は、効果が強力です。
 『ミオナール』は、副作用や相互作用が少なめです。

 そのため、効果を重視する際は『テルネリン』、安全性を重視する際は『ミオナール』を選ぶのが一般的です。

 

回答の根拠①:効果が強力な「チザニジン」

 「チザニジン」と「エペリゾン」は、どちらも中枢性の筋弛緩薬に分類される薬で、筋肉の強張りや凝りを和らげる目的で使います。筋弛緩作用が強力な「チザニジン」1)は、より高い効果を期待して使われる傾向にあります。

 1) テルネリン錠 インタビューフォーム

 

頭痛治療にも使われる「チザニジン」

 「チザニジン」は、慢性的な頭痛の頻度や痛みを和らげるのにも有効です2,3)。そのため、緊張型頭痛の治療薬や片頭痛の予防薬としてもガイドラインに掲載されています4)。

緊張型頭痛急性期治療薬として
エビデンスの確実性【B】
片頭痛予防薬として
Group2(ある程度有効)、エビデンスの確実性【C】

2) Headache.31(9):601-4,(1991) PMID:1774177
3) Headache.42(6):470-82,(2002) PMID:12167135
4) 日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン2021」

 

回答の根拠②:副作用や相互作用リスクの低い「エペリゾン」

 「エペリゾン」は、「チザニジン」よりも作用がやさしめなぶん、眠くなる、口が渇く、脱力する、といった副作用も少ない5)傾向にあります。
 また、中枢のアドレナリンα2受容体刺激作用によって効果を発揮する「チザニジン」1)と違って、「エペリゾン」はγ-運動ニューロンの抑制作用などで効果を発揮する6)ため、低血圧もあまり起こしません。

 さらに、CYP1A2阻害作用を持つ薬と併用禁忌の指定がある「チザニジン」1)に比べて、「エペリゾン」とは併用禁忌の薬がない6)など相互作用リスクも低く、既に薬をたくさん使っている人でも安全に併用しやすい薬と言えます。

※併用禁忌の薬 1,6)
チザニジン:『ルボックス(一般名:フルボキサミン)』、『シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)』
エペリゾン:(なし)

5) Minerva Med.103(3):143-9,(2012) PMID:22653094
6) ミオナール錠 添付文書

 

薬剤師としてのアドバイス:「筋弛緩薬」は大きくわけて2種類ある

 「筋弛緩薬」はその作用の違いによって、「中枢性」と「末梢性」の2種類に大別することができます。
 「中枢性」の筋弛緩薬は、「チザニジン」や「エペリゾン」のように肩凝りなどにもよく使われる薬です。
 「末梢性」の筋弛緩薬は、悪性症候群の治療に使う『ダントリウム(一般名:ダントロレン)』や、痙攣の治療に使う『ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)』など、健康な人は普段あまり目にしない薬です。

 「筋弛緩薬」とは骨格筋を弛緩させる効果を持つ薬の総称で、「中枢性」と「末梢性」では作用メカニズムや使う目的、副作用のリスク・扱いの難しさが全く異なります。医療事故などでは「末梢性の筋弛緩薬」がよく話題になりますが、「中枢性の筋弛緩薬」のことまで怖い薬だ、と勘違いをしないようにしてください。

 

ポイントのまとめ

1. 『テルネリン(チザニジン)』は筋弛緩作用が強力で、頭痛の治療や予防にも使う
2. 『ミオナール(エペリゾン)』は眠気や口渇・低血圧が少なく、併用禁忌の薬もない
3. 筋弛緩薬は「中枢性」と「末梢性」で作用も使用目的も全く違うため、混同しないよう注意

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

チザニジンエペリゾン
先発医薬品の名称テルネリンミオナール
薬理作用中枢性のアドレナリンα2受容体刺激脊髄反射およびγ-運動ニューロン自発発射の抑制
主な適応症各種疾患による筋緊張状態の改善、痙性麻痺の治療各種疾患による筋緊張状態の改善、痙性麻痺の治療
用法1日3回、食後1日3回、食後
慢性頭痛のガイドライン緊張型頭痛の急性治療薬片頭痛の予防薬として掲載あり(掲載なし)
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害のガイドライン掲載あり(掲載なし)
筋委縮性側索硬化症(ALS)のガイドライン掲載あり掲載あり
特徴的な副作用眠気、口の乾き、脱力、血圧低下眠気、口の乾き、脱力
日本版抗コリン薬リスクスケール【3】【2】
服用後の自動車運転禁止禁止
代謝に関わるCYP主にCYP1A2
併用禁忌フルボキサミン、シプロフロキサシン(なし)
併用注意降圧薬、アルコール、抗不整脈薬、CYP1A2阻害薬・誘導薬メトカルバモール
国際誕生年1984年1982年
授乳中の安全性評価MMM【L4】
世界での販売状況欧州、北欧、南米など18ヵ国以上中国、韓国、フィリピン、インド、イタリアなど
規格の種類錠(1mg)、顆粒(0.2%)錠(50mg)、顆粒(10%)
代表製剤の製造販売元サンファーマエーザイ
同成分のOTC医薬品(販売されていない)(販売されていない)

 

 

+αの情報①:「チザニジン」と「フルボキサミン」を併用した場合のリスク

 併用禁忌の組み合わせである「チザニジン」と「フルボキサミン」を併用した場合、「チザニジン」の最高血中濃度が32倍、AUCが104倍に上昇し、収縮期血圧が79mmHgまで低下したケースが報告されています7)。非常に影響の大きな相互作用リスクのため、注意が必要です。

 「エペリゾン」は、「フルボキサミン」と併用しても血圧低下などのトラブルは起こさない8)ことが確認されていますが、その代謝経路は明確にはわかっていません。

7) Clin Pharmacol Ther.75(4):331-41,(2004) PMID:15060511
8) 医療薬学.31(6):470-4,(2005)

+αの情報②:「CYP1A2」は喫煙の影響も受ける

 代謝酵素「CYP1A2」は喫煙によって誘導されることが知られています9)。

 そのため「チザニジン」のようにCYP1A2で代謝・分解される薬は、喫煙者では薬の効果が得られにくかったり、あるいは禁煙を始めると血中濃度が上昇して薬の副作用が現れたりすることがあります。
 喫煙状況が急に変わると、薬の効果や副作用の現れ方も大きく変わる可能性があるため、喫煙や禁煙を行う場合には必ず医師・薬剤師に伝えるようにしてください。

9) Clin Pharmacokinet.36(6):425-38,(1999) PMID:10427467

 

+αの情報③:慢性腰痛に対する効果

 慢性的な腰痛に伴う筋肉の強張りや凝りに対する効果は、「チザニジン」と「エペリゾン」でほぼ変わらない、という報告もあります10)。
 特に「エペリゾン」は脱力感が少なく、リハビリテーションの運動を妨げにくいことから、整形外科領域では「エペリゾン」が好まれる傾向にあります。

10) Pharmacol Rep.68(5):903-12,(2016) PMID:27371896

 

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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