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似た薬の違い 筋弛緩薬

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『テルネリン』と『ミオナール』、同じ筋弛緩薬の違いは?~効果と副作用・相互作用

回答:強力な『テルネリン』、副作用・相互作用の少ない『ミオナール』

 『テルネリン(一般名:チザニジン)』と『ミオナール(一般名:エペリゾン)』は、どちらも筋肉の緊張・凝りをほぐす筋弛緩薬です。

 効果が強力なのは『テルネリン』副作用や相互作用が少ないのは『ミオナール』です。

 特に明確な使い分けの基準はありませんが、強力な『テルネリン』の方が副作用や相互作用も多く、扱いは難しい傾向にあります。
 なお、『テルネリン』や『ミオナール』は「中枢性」の筋弛緩薬です。医療事故などで報道される「末梢性」の筋弛緩薬とは作用も目的も全く異なる薬のため、混同しないようにしてください。

回答の根拠①:『テルネリン』の強力な作用~効果・副作用どちらも強い

 『テルネリン』は、『ミオナール』と比べると作用が強力です1)。そのため、筋肉の強張りや凝りの治療に使う場合は、より高い効果を期待して使われることが多い薬です。
 ただしその分、『ミオナール』よりも副作用で眠くなりやすいことも報告されている2)ため、自動車運転や学業・業務成績への影響には注意する必要があります。

 1) テルネリン錠 インタビューフォーム
 2) Minerva Med.103(3):143-9,(2012) PMID:22653094

回答の根拠②:『テルネリン』の相互作用~CYP1A2と血圧降下

 『テルネリン』は、抗うつ薬SSRIの『ルボックス(一般名:フルボキサミン)』や抗菌薬の『シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)』と併用禁忌に指定されています1)。
 これは、『テルネリン』の代謝・分解に関わる酵素「CYP1A2」を、『ルボックス』や『シプロキサン』が強く阻害するため、『テルネリン』の血中濃度が必要以上に高くなってしまうからです。

※併用による『テルネリン』の血中濃度変化 1)
ルボックス・・・・AUCが33倍
シプロキサン・・・AUCが10倍

 『テルネリン』には中枢のアドレナリンα2受容体刺激作用がある1)ため、血中濃度が高くなり過ぎると低血圧症状を起こす恐れがあります。特に、『ルボックス』との併用では最大で、最高血中濃度が32倍、半減期が2.9倍、AUCが104倍となり、収縮期血圧が79mmHgまで低下したケースも報告されている3)ことから、併用することはできません。

 3) Clin Pharmacol Ther.75(4):331-41,(2004) PMID:15060511

 一方『ミオナール』には、併用禁忌の薬はありません4)。
 『ミオナール』の代謝酵素は明確に特定はされていませんが、『テルネリン』で相互作用が問題になる『ルボックス』と併用しても、血圧には影響しないことが報告されています5)。

 4) ミオナール錠 インタビューフォーム
 5) 医療薬学.31(6):470-4,(2005)

「CYP1A2」は喫煙の影響も受ける

 この代謝酵素「CYP1A2」は喫煙によって誘導されることが知られています6)。

 そのため、喫煙者は通常量で十分に効果が得られなかったり、禁煙を始めると薬の副作用が現れたり、といったことも起こり得ます。また、受動喫煙によってもこうした影響は受けるため、住宅環境の変化にも気を付けなければなりません。

 6) Clin Pharmacokinet.36(6):425-38,(1999) PMID:10427467

薬剤師としてのアドバイス:「筋弛緩薬」は大きくわけて2種類ある

 『テルネリン』や『ミオナール』は「筋弛緩薬」に分類される薬ですが、医療事故などで報道され怖いイメージを持たれている「筋弛緩薬」とは別の薬です。

 「筋弛緩薬」はその作用の違いによって、「中枢性」と「末梢性」の2種類に大別することができます。
 「中枢性」の筋弛緩薬は、『テルネリン』や『ミオナール』のように整形外科領域でもよく処方されるものです。
 「末梢性」の筋弛緩薬は、悪性症候群の治療に使う『ダントリウム(一般名:ダントロレン)』や、痙攣の治療に使う『ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)』など、健康な人は普段あまり目にしないものです。

 「筋弛緩薬」とは骨格筋を弛緩させる効果を持つ薬の総称で、「中枢性」と「末梢性」では作用メカニズムや使う目的、副作用のリスク・扱いの難しさが全く異なります。『テルネリン』や『ミオナール』を処方された際、インターネット等で調べて「筋弛緩薬」と書いてあるから怖い、という勘違いをしないようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 効果が強いのは『テルネリン』、副作用や相互作用のリスクが低いのは『ミオナール』
2. 『テルネリン』は、CYP1A2阻害作用を持つ薬と併用すると、血圧低下を起こす恐れがある
3. 筋弛緩薬は「中枢性」と「末梢性」で全く作用も使用目的も違うため、混同しないよう注意

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆分類
テルネリン:中枢性の筋弛緩薬
ミオナール:中枢性の筋弛緩薬

◆適応症
テルネリン:筋緊張状態の緩和、痙性麻痺
ミオナール:筋緊張状態の緩和、痙性麻痺

◆用法
テルネリン:通常、1日3回
ミオナール:通常、1日3回

◆併用禁忌の薬
テルネリン:フルボキサミンシプロキサシン
ミオナール:なし

◆血圧低下に対する注意喚起
テルネリン:あり
ミオナール:なし

◆喫煙に対する注意喚起
テルネリン:あり(作用減弱の恐れ)
ミオナール:なし

◆自動車運転に対する注意喚起
テルネリン:従事させない
ミオナール:従事させない

◆剤型の種類
テルネリン:錠(1mg)、顆粒
ミオナール:錠(50mg)、顆粒

◆販売元の製薬企業
テルネリン:田辺三菱製薬
ミオナール:エーザイ

+αの情報:緊張型頭痛と筋弛緩薬

 『テルネリン』や『ミオナール』といった筋弛緩薬は、緊張型頭痛の治療・予防に使われることがあります。ガイドラインでの推奨度は、『テルネリン』の方が『ミオナール』より1ランク高く設定されています7)。

※緊張型頭痛に対する推奨グレード 7)
テルネリン・・・【B
ミオナール・・・【C】

 7) 日本神経学会・日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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