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回答:『シムビコート』は吸入ステロイドを含む喘息治療の薬、『アノーロ』は抗コリン薬を含むCOPDの薬
『シムビコート(一般名:ブデソニド+ホルモテロール)』と『アノーロ(一般名:ウメクリジニウム+ビランテロール)』は、どちらも吸入薬です。
『シムビコート』は、ステロイド+β2刺激薬(ICS+LABA)の喘息治療薬です。
『アノーロ』は、抗コリン薬+β2刺激薬(LAMA+LABA)のCOPD治療薬です。

気管支の炎症が主な原因である喘息ではステロイド、気道の閉塞が主な原因であるCOPDでは抗コリン薬が治療の中心になるため、吸入薬は病態によって明確に使い分ける必要があります。
回答の根拠①:喘息治療の中心となる『シムビコート』などのICS+LABA
気管支喘息は、アレルギーなどによって気道に炎症が起こり、咳や呼吸困難などの症状が現れる疾患です。そのため喘息の長期管理には、強力な抗炎症作用を持つ吸入ステロイド(ICS)が非常に重要になります1,2)。

ここで吸入ステロイドに加えて、気管支を広げる長時間作用型β2刺激薬(LABA)を併用すると喘息の増悪リスクを軽減できる3)こともわかっています。このことから、『シムビコート』のような「ICS+LABA」は喘息治療の中心的な役割を果たす薬になっています。
※「ICS+LABA」の製剤
シムビコート :ブデソニド+ホルモテロール
アドエア :フルチカゾンプロピオン酸エステル+サルメテロール
フルティフォーム:フルチカゾンプロピオン酸エステル+ホルモテロール
レルベア :フルチカゾンフランカルボン酸エステル+ビランテロール
アテキュラ :モメタゾンフランカルボン酸エステル+インダカテロール
1) 日本アレルギー学会 「喘息予防・管理ガイドライン2024」
2) 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023」
3) N Engl J Med.337(20):1405-11,(1997) PMID:9358137
回答の根拠②:COPD治療の中心となる『アノーロ』などのLAMA+LABA
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長年の喫煙などで肺や気道の空気の流れが悪くなり、咳や息切れ・呼吸困難を起こす疾患です。そのためCOPDの治療では、気管支を広げる効果のある長時間作用型抗コリン薬(LAMA)が中心になります4)。

COPDでも、この長時間作用型抗コリン薬(LAMA)に長時間作用型β2刺激薬を併用すると、症状はより大きく改善する5)ことがわかっています。このことから、『アノーロ』のような「LAMA+LABA」はCOPD治療の中心的な役割を果たす薬になっています。
※「LAMA+LABA」の製剤
アノーロ :ウメクリジニウム+ビランテロール
スピオルト :チオトロピウム+オロダテロール
ウルティブロ:グリコピロニウム+インダカテロール
ビベスピ :グリコピロニウム+ホルモテロール
4) 日本呼吸器学会 「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022」
5) Cochrane Database Syst Rev.(10):CD010177,(2013) PMID:24127118
喘息を併発しているようなCOPDでは、吸入ステロイドを使うこともある
基本的に、喘息は「ICS+LABA」、COPDは「LAMA+LABA」で治療を行います。
ただ、COPDでも喘息を合併しているような場合には、吸入ステロイドの効果を期待できる場合があります6)。そのため、一部の「ICS+LABA」製剤はCOPDに対する適応も持っています7)。

ただし、通常はCOPDには「ICS+LABA」よりも「LAMA+LABA」の方が効果的で、肺炎などの副作用リスクも低い7,8)ため、「ICS+LABA」は好酸球が多いなどの所見がある場合に限った使い方になります。
※COPDにも適応のある「ICS+LABA」製剤
シムビコート:タービュヘイラー
アドエア :250ディスカス、125エアゾール
レルベア :100エリプタ
6) Lancet Respir Med.3(6):435-42,(2015) PMID:25878028
7) Respirology.20(8):1153-9,(2015) PMID:26235837
8) Cochrane Database Syst Rev.2(2):CD012066,(2017) PMID:28185242
薬剤師としてのアドバイス:吸入薬の効果は、薬をどれだけきちんと使えるかにかかっている
喘息やCOPDは、吸入薬をいかに適切かつ根気よく使い続けられるかによって、得られる効果が大きく変わります9)。しかし、吸入薬は飲み薬に比べて複雑な上に面倒なため、きちんと薬を使い続けることができないケースも少なくありません10)。
そのため、自分にとって少しでも使いやすい・理解しやすいデバイス(吸入器)を選ぶ、ということが非常に重要になります11)。幸い、吸入薬のデバイスには色々な種類のものがあるため、もし使いにくさを感じた際には、より自分に合った薬を選べるように、どういったところが使いにくいのかを医師・薬剤師に具体的に伝えることをお勧めします。
9) Respir Med.107(10):1481-90,(2013) PMID:23643487
10) Respir Care.60(3):455-68,(2015) PMID:25118311
11) Respir Med.108(2):358-65,(2014) PMID:24209768
ポイントのまとめ
1. 『シムビコート』は、炎症が基本病態である喘息の治療に用いる「ICS+LABA」製剤
2. 『アノーロ』は、気道閉塞が基本病態であるCOPDの治療に用いる「LAMA+LABA」製剤
3. 喘息やCOPD治療では、吸入器の扱いやすさが病気のコントロールに大きく影響する
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| シムビコート | アノーロ | |
| 配合成分 | ブデソニド+ホルモテロール | ウメクリジニウム+ビランテロール |
| 薬効分類 | 吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型β2刺激薬(LABA) | 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA) |
| 適応症 | 気管支喘息、COPD | COPD |
| 喘息治療における位置付け1,2) | 長期管理薬 | 使用しない |
| COPD治療における位置づけ4) | 喘息を合併している症例では使うことがある | 治療薬の中心 |
| 基本的な用法 | 1回1~4吸入を1日2回 | 1回1吸入を1日1回 |
| デバイスのタイプ | タービュヘイラー (ドライパウダー製剤) | エリプタ (ドライパウダー製剤) |
| 国際誕生年 | 2000年 | 2013年 |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【B3】 | オーストラリア基準【B3】 |
| 授乳中の安全性評価 | MMM【L3】 | – |
| 世界での販売状況 | 世界125ヵ国 | 世界70ヵ国 |
| 剤型の規格 | タービュヘイラー(30吸入、60吸入) | エリプタ(7吸入,30吸入) |
| 先発医薬品の製造販売元 | アストラゼネカ | グラクソ・スミスクライン |
| 同じ組み合わせの配合剤 | アドエア、フルティフォーム、レルベア、アテキュラ | スピオルト、ウルティブロ、ビベスピ |
| 同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | (販売されていない) |
+αの情報①:「ICS+LAMA+LABA」の3剤を配合した製剤もある
喘息でもCOPDでも、「ICS+LABA」や「LAMA+LABA」のような2剤併用で十分な効果を得られない場合には、より高い効果を期待して「ICS+LAMA+LABA」の3剤を併用することがあります12,13)。このとき便利なのが、「ICS+LAMA+LABA」を1回にまとめて吸入できる、3剤配合剤です。
ただし、「ICS+LAMA+LABA」の配合剤は製剤によって適応症がそれぞれ異なることに注意が必要です。
| 製剤 | 規格 | 適応症 | ICS | LAMA | LABA |
| テリルジー | 100エリプタ | 喘息、COPD | フルチカゾンフランカルボン酸エステル | ウメクリジニウム | ビランテロール |
| 200エリプタ | 喘息 | フルチカゾンフランカルボン酸エステル | ウメクリジニウム | ビランテロール | |
| エナジア | 吸入用カプセル | 喘息 | モメタゾンフランカルボン酸エステル | グリコピロニウム | インダカテロール |
| ビレーズトリ | エアロスフィア | COPD | ブデソニド | グリコピロニウム | ホルモテロール |
12) Cochrane Database Syst Rev.2016(1):CD01172,(2016) PMID:26798035
13) Life (Basel).12(2):173,(2022) PMID:35207460
+αの情報②:吸入薬には、「ドライパウダー」・「加圧噴霧式」・「ソフトミスト」の3タイプがある
吸入薬には、粉末状の薬を自力で吸い込む「ドライパウダー(DPI)」、ガスの圧力で噴霧される薬を吸い込む「加圧噴霧式(pMDI)」、ゆっくりと霧状に吸入易が噴霧される「ソフトミスト(SMI)」の3タイプがあります。
扱いが最も簡単で安価なのは「ドライパウダー(DPI)」ですが、喘息やCOPDで”息を吸い込む力”が弱っている場合は、ガスの力で薬が噴霧される「加圧噴霧式(pMDI)」が適しています。ただし、「加圧噴霧式(pMDI)」のものは、薬を噴霧するのと同時に息を吸い込む必要があるなど、扱いが難しいという難点があります。
「ソフトミスト(SMI)」は、DPIよりも弱い力でも吸入できて、pMDIほど手技が難しくありませんが、ごく一部の薬にしか実装されていません。
| タイプ | 特徴 | 代表的なデバイス |
| ドライパウダー (DPI) | 扱いが簡単で安価 一定の吸気速度が必要 | ディスカス、タービュヘイラー、ブリーズヘラー、エリプタ、ジェヌエア、ハンディヘラー、ツイストヘラー、スイングヘラー、ディスクヘラー |
| 加圧噴霧式 (pMDI) | 吸気速度がなくても使用可 扱いが難しい、薬品臭がある | エアゾール、エアロスフィアなど |
| ソフトミスト (SMI) | DPIより弱い吸気で使用可 pMDIほど扱いが難しくない | レスピマット |
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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