耳鼻科では、小児科より抗生物質の量が多いのは何故?~中耳炎・副鼻腔炎への高用量処方


回答:中耳炎や副鼻腔炎には、抗生物質を多めに使う

 中耳炎や副鼻腔炎は、症状によっては、他の感染症よりも抗生物質を多めに使う必要があります。
 そのため、耳鼻科では小児科より薬の量が多くなる傾向にあります。
抗生物質の処方量~耳鼻科と小児科
 抗生物質の量が多くなると下痢などの副作用も起こしやすくなりますが、抗生物質を中途半端に使うと耐性菌ができて治療が難しくなります
 たとえ症状が治まってきても自己判断で薬は中断せず、最後まで飲み切るようにしてください。



回答の根拠①:中耳炎・副鼻腔炎に対する抗生物質の処方量

 子どもの中耳炎や副鼻腔炎には、ペニシリン系の抗生物質である『サワシリン(一般名:アモキシシリン)[AMPC]』が第一選択薬として使われます。
 『サワシリン』などの「アモキシシリン」は、通常1回10~20mg/kgで使う抗生物質ですが、中耳炎や副鼻腔炎には1回25~30mg/kgの高用量で使う場合があります1)。
アモキシシリンの用量~中耳炎と副鼻腔炎に対する高用量
 1) 日本感染症学会・日本化学療法学会 「JAID/JSC感染症治療ガイド(2014)」


 またセフェム系の抗生物質も同様に、中耳炎・副鼻腔炎の症状によっては高用量で使います。

※高用量での使用が推奨されている抗生物質の例 1)
『メイアクト(一般名:セフジトレン)[CDTR-PI]』
 通常:1回3mg/kg → 中耳炎・副鼻腔炎:1回6mg/kg

『フロモックス(一般名:セフカペン)[CFPN-PI]』
 通常:1回3mg/kg → 副鼻腔炎:1回4.5mg/kg

『トミロン(一般名:セフテラム)[CFTM-PI]』
 通常:1回3mg/kg → 副鼻腔炎:1回6mg/kg


添付文書でも別記載に

 『メイアクト』では、中耳炎や副鼻腔炎に対する用量が添付文書でも別に記載されています。

※『メイアクト』の小児用量 2)
肺炎・中耳炎・副鼻腔炎の場合:1回3~6mg/kg
その他の感染症の場合:1回3mg/kg

 2) メイアクトMS小児用細粒 添付文書



回答の根拠②:なぜ高用量が必要なのか

 中耳炎や副鼻腔炎は、主に肺炎球菌やインフルエンザ菌が原因となって起こります。これらの菌に対しては上記の『サワシリン』や『メイアクト』が効果的なため、治療の中心として使われています。

 しかし、近年は薬の効かない耐性菌が増え、通常の量では十分に効果が得られなくなってきています。そこで、耐性菌にも効果のある高用量で使用する方法が示されています3,4)。

 3) 日本小児耳鼻咽喉科学会 「小児急性中耳炎診療ガイドライン(2013)」
 4) 日本鼻科学会 「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン 追補版(2013)」


 薬の量が増えるとそれだけ経済的な負担も大きくなりますが、最初から高用量で治療した方が予後も良く、最終的なコストが安く済むことも報告されています5)。

 5) J Med Microbiol.57(Pt 8):1015-1017,(2008) PMID:18628504


 こうした背景から、耳鼻科では小児科よりも最初から抗生物質の量が多くなる傾向があります。



薬剤師としてのアドバイス:下痢や軟便で抗生物質を止めてしまわないように

 抗生物質は、腸内細菌を整える善玉菌にまで作用するため、下痢や便秘などの副作用を起こす場合があります。
 しかし、お腹の調子が悪くなったからといって抗生物質を途中で止めてしまうと、治療ができないだけでなく、菌が耐性を獲得し、次からの治療が難しくなってしまう恐れがあります。
抗生物質で下痢をしたときの対応
 ひどい下痢をしている場合は一度、主治医と対応を相談するようにし、自己判断で勝手に薬を止めないようにしてください。

 また、こうした抗生物質によるお腹のトラブルは『ビオフェルミンR』などの整腸剤や、『アドソルビン(一般名:天然ケイ酸アルミニウム)』などの下痢止めを使うことで、ある程度防ぐこともできます。必要に応じて主治医と相談することをお勧めします。

 今では抗生物質によって比較的楽に治る中耳炎・副鼻腔炎でも、昔は命とりの病気でした。また、中耳炎・副鼻腔炎が長引くと聴力障害などのトラブルにつながる恐れがあります。早めに耳鼻科を受診し、きちんと薬を飲んで治療するようにしてください。



+αの情報:大人でも中耳炎や副鼻腔炎には高用量を使う

 子どもに限らず、大人の場合も中耳炎や副鼻腔炎の症状によっては、通常よりも多めの抗生物質を使う場合があります。
 そのため耳鼻科では、内科などでもらうよりも薬の量が多くなる傾向にありますが、勝手に飲む量を減らしたりせず、指示された量を服用するようにしてください。



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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