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抗生物質 似た薬の違い

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『クラビット』と『フロモックス』、同じ抗生物質の違いは?~抗生物質の使い分け、強弱の基準

回答:退治できる細菌の種類が違う

 『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』と『フロモックス(一般名:セフカペンピボキシル)』は、どちらも細菌を退治する抗生物質(抗菌薬)です。

 『クラビット』は「ニューキノロン系」の抗生物質、『フロモックス』は「セフェム系」の抗生物質で、それぞれ退治できる細菌の種類が異なります。
クラビットとフロモックス2
 一つの抗生物質で全ての細菌を退治できる、というわけではありません。薬によって、退治できる細菌、退治できない細菌が、それぞれあります。
 そのため、感染症の原因となっている細菌の種類によって、抗生物質は明確に使い分ける必要があります。

 また、抗生物質の種類によって、最も効果的な飲み方も違います。必ず指示された用法・用量を守って使うようにしてください。

回答の根拠①:抗菌スペクトル~薬と細菌の相性

 「細菌」の種類は、現在確認されているだけでも6,800種以上、非常に様々なタイプの細菌が存在しています。1剤だけでこれらの全ての種の細菌に効く抗生物質は、存在しません。

 抗生物質の種類によって、得意とする細菌の種、苦手とする細菌の種、つまり「相性」があります。この「相性」は「抗菌スペクトル」と呼ばれています。

『クラビット』と『フロモックス』の抗菌スペクトルの例

 『クラビット』と『フロモックス』も、得意とする細菌の種が異なります1)。そのため、どちらも効く菌、片方しか効かない菌、どちらも効かない菌、というものがあります。

(抗菌スペクトルの一例)
※『クラビット』でも『フロモックス』でも退治できる細菌
 大腸菌・レンサ球菌・肺炎球菌
※『クラビット』でしか退治できない細菌
 赤痢菌・サルモネラ属・レジオネラ属
※『フロモックス』でしか退治できない細菌
 バクテロイデス属
※『クラビット』でも『フロモックス』でも退治できない細菌
 ジフテリア菌・クロストリジウム属

 1) 南江堂 「今日の治療薬 (2017年版)」

 このように、抗生物質には得意・不得意といった相性、「抗菌スペクトル」で使い分けます。
 そのため、抗生物質が変更になった場合は、「強い抗生物質に変わった」というよりも、「より原因菌の退治に特化した抗生物質に変わった」と考えるのが妥当です。

 また、状況によっては得意分野の違う抗生物質を併用することもあります。

回答の根拠②:抗菌力を発揮できる飲み方の違い

 抗生物質はその種類によって、最も効果的な服用方法が異なります

 『クラビット』は、濃度依存性に抗菌力を発揮します。
 つまり、血中濃度を一度でガツンと高めた方が効果的です。そのため、通常は1日1回、1日量を1回にまとめて服用します2)。
濃度依存性の抗生物質

 『フロモックス』は、時間依存性に抗菌力を発揮します。
 つまり、ある程度の血中濃度(最小発育阻止濃度:MIC)以上をできるだけ長く維持した方が効果的です。そのため、通常は1日3回、1日量をできるだけ複数回に分けて服用します3)。
時間依存性の抗生物質

 2) クラビット錠 添付文書
 3) フロモックス錠 添付文書

 そのため、用法を守らずに抗生物質を使うと抗菌力が弱まり、治療ができないだけでなく、薬の効かない「耐性菌」を生む原因にもなります。

薬剤師としてのアドバイス:抗生物質は処方された時に必ず飲み切り、残さない

 症状が良くなったら、そこで抗生物質を止めてしまう人は少なくありません。しかし、こうした中途半端な使い方では効果がないばかりか、細菌に「耐性」を与えるためのトレーニングをしているようなもので、非常に危険です。
 「次の時のため」と、残った抗生物質を置いておく人も少なくありません。しかし、似た症状の感染症であっても、原因の菌が異なれば使うべき抗生物質も変わります。前回と同じ抗生物質が適しているとは限りません。

 このように、抗生物質は使い方が非常に難しく、自己判断で調節したり選んだりして使える薬ではありません
(※そのため市販もされていません)。抗生物質を処方された時には、症状が治まってきても必ず最後まで飲み切るようにしてください。

 ただし、脱水症状を起こす恐れのある酷い下痢をしている場合や、便に血液や粘液が混じっているといった場合には一旦飲むのを止め、主治医に連絡するようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 抗生物質には得意・不得意(抗菌スペクトル)があり、感染症の原因菌によって使い分ける
2. 抗生物質の種類によって、まとめて飲んだ方が良いか、分けて飲んだ方が良いかが異なる
3. 処方された抗生物質は、症状が治まっても最後まで飲み切る

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆薬効分類
クラビット:ニューキノロン系の抗生物質
フロモックス:セフェム系の抗生物質

◆細菌に対する作用機序
クラビット:細菌のDNAジャイレース・トポイソメラーゼに作用、DNA複製を阻害する
フロモックス:細菌のペニシリン結合蛋白に作用し、細胞壁合成を阻害する

◆用法
クラビット:1日1回
フロモックス:1日3回

◆小児への使用
クラビット:使用しない
フロモックス:小児用細粒が使える

◆製造販売元
クラビット:第一三共
フロモックス:塩野義製薬

+αの情報①:「細菌」と「ウイルス」は全くの別物

 「抗生物質」は、「細菌」を退治する薬です。「ウイルス」には全く効果がありません
抗生物質~細菌とウイルス
 季節性のインフルエンザやヘルペスなどは「ウイルス」が原因で起こる感染症のため、「抗生物質」では治療できません。
 また、いわゆる「風邪(風邪症候群)」も、ほとんどは「ウイルス」が原因の感染症であることにも注意が必要です。

+αの情報②:「抗生物質」と「抗菌薬」

 「抗生物質」は、細菌を退治したり増殖を抑えたりする物質のうち、細菌そのものが作り出した物質(ペニシリンなど)のことを指します。
 現在使われている薬は化学合成で作られているため、厳密には「抗菌薬」が正しい表現です。

 医師・薬剤師などの専門家は「抗菌薬」という表現を使うのは、このためです。

 ただし、本Q&Aでは一般的な知名度を考慮して「抗生物質」と表記しています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
★6月22日のフジテレビ「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せました。
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★12月28日のYahoo!ニュース動画「抗生物質が効かなくなる日」に監修として携わりました。

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