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似た薬の違い 吐き気・つわり

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『ナウゼリン』と『プリンペラン』、同じ吐き気止めの違いは?~血液脳関門と中枢に対する効果・副作用

 

回答:脳まで届くかどうか

 『ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)』と『プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)』は、どちらも「ドパミン受容体遮断薬」に分類される、同じ作用の吐き気止めです。

 『ナウゼリン』は脳まで届きませんが、『プリンペラン』は脳にまで届きます。
ナウゼリンとプリンペラン~脳に届くかどうか
 そのため、『ナウゼリン』は脳での副作用(錐体外路障害)を起こす心配が少ないのが特徴です。
 一方、脳にまで届く『プリンペラン』は『ナウゼリン』より錐体外路障害のリスクは高いですが、脳が原因の吐き気(中枢性)にも効果があり、適応が広いのが特徴です。

 妊婦や授乳婦への安全性評価でも多少の差があり、妊娠中は『プリンペラン』、授乳中は『ナウゼリン』を選ぶのが一般的です。

回答の根拠①:血液脳関門と錐体外路障害

 脳は生命にとって重要な器官なため、老廃物や毒物などが簡単に入り込まないようにする「血液脳関門」と呼ばれるフィルターが備わっています。
ナウゼリンとプリンペラン~血液脳関門と錐体外路障害
 『ナウゼリン』は、この「血液脳関門」を通り抜けにくいため、薬がほとんど脳に届きません1)。そのため、震えや歩行困難など運動機能障害を起こす「錐体外路障害」の心配が少なく、またパーキンソン病の患者にも使うことができます
 一方、『プリンペラン』は「血液脳関門」を通り抜け、脳にも届きます2)。そのため、「錐体外路障害」を起こすリスクが『ナウゼリン』よりも高い傾向にあります。

 1) ナウゼリン錠 添付文書

 2) プリンペラン錠 インタビューフォーム

回答の根拠②:「中枢性」の吐き気、「末梢性」の吐き気

 吐き気は、その原因によって「中枢性」と「末梢性」の2種類に分類することができます。

※「中枢性」の吐き気の例

①不安や嫌悪感、うつ病など、精神的な要因で起こるもの
②薬の副作用やアルコール、つわりなど、血液中の化学物質(薬物やホルモンなど)が原因で起こるもの
③「メニエール病」や「乗り物酔い」といった、三半規管の異常で起こるもの

※「末梢性」の吐き気の例
④胃炎や胃下垂、消化不良など、胃腸のトラブルで起こるもの
⑤喉や舌を刺激した時など、物理的な反射で起こるもの

 『ナウゼリン』と『プリンペラン』は、どちらもドパミンD2受容体遮断作用によって、「CTZ抑制」と「消化管運動改善」の効果を発揮します1)。
ナウゼリンとプリンペラン~ドパミン受容体遮断作用による効果
 その結果、「中枢性」のうち「CTZ」を介して起こる吐き気(②③)や、「末梢性」のうち胃腸のトラブルで起こる吐き気(④)に効果を発揮します。

 

「CTZ」には血液脳関門が無い

 脳の「第四脳室底」には、血液やホルモン・薬物・毒素など、様々な催吐性刺激を感知する「化学受容器引金帯(CTZ:Chemoreceptor Trigger Zone)」と呼ばれる場所があります。

 この「CTZ」には「血液脳関門」が存在しません3)。そのため『プリンペラン』だけでなく、血液脳関門を通りにくい『ナウゼリン』も「CTZ」には作用することができます4)。
ナウゼリンとプリンペラン~血液脳関門のないCTZ
 3) 日本緩和医療学会 「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン(2011)」
 4) ナウゼリン錠 インタビューフォーム

 「中枢性」と「末梢性」の両方に効果があると明記されているのは『プリンペラン』だけですが2)、このように『ナウゼリン』も「CTZ」を介し、一部の「中枢性」の吐き気に効果を発揮します。

回答の根拠③:妊娠中と授乳中の安全性評価の違い

 妊娠中と授乳中では、安全に使える薬が異なります。
 どちらも基本的に安全性の高い薬ですが、妊娠中は『プリンペラン』、授乳中は『ナウゼリン』を使うのが一般的です。

妊娠中の安全性~オーストラリア基準による評価

 妊娠中の薬の安全性評価である「オーストラリア基準」では、『ナウゼリン』は7段階中3番目の【B2】、『プリンペラン』は最も安全な【A】と評価されています。

 『ナウゼリン』は、添付文書上は「妊婦に禁忌」とされていますが、絶対に避けなければならないというわけではありません。原因不明の吐き気に『ナウゼリン』を処方されていたが、後になって妊娠(つわり)だったことが判明した場合でも、その時点で主治医に連絡して対応することで十分です。

授乳中の安全性~Medications and Mother’s Milkによる評価

 授乳中の薬の安全性評価である「Medications and Mother’s Milk」では、『ナウゼリン』は最も安全な【L1】、『プリンペラン』は5段階中2番目の【L2】と評価されています。

 どちらも安全性は高く評価されているため、授乳中はどちらを使っても問題ありませんが、特にこだわりが無ければ、『ナウゼリン』を選ぶのが一般的です。

薬剤師としてのアドバイス:吐くことは、必ずしも悪いことではない

 吐き気は気分の良いものではありませんが、体内の異物や毒物を外へ排出しようとする生物としての正当な防衛反応です。
 そのため、食中毒などを起こした際の吐き気を薬で止めてしまうと、異物や毒物を体の外に出せなくなってしまいます。

 これは下痢なども同じで、なんでもかんでも薬で症状を止めてしまうことが良いとは限りません。まずは吐き気の原因を正しく突き止めることが必要です。

 

ポイントのまとめ

1. 『ナウゼリン』は血液脳関門を通りにくいため、錐体外路障害のリスクが低い
2. 『ナウゼリン』と『プリンペラン』は、CTZと消化管運動を介して「中枢性」や「末梢性」の吐き気に効く
3. 妊娠中は『プリンペラン』、授乳中は『ナウゼリン』を使うのが一般的

 

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆成人の適応症
ナウゼリン:慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時
プリンペラン:胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢・胆道疾患、腎炎、尿毒症、薬剤(制癌剤・抗生物質・抗結核剤・麻酔剤)投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後

◆用法
ナウゼリン:1日3回、食前
プリンペラン:1日2~3回、食前

◆剤型
ナウゼリン:錠、OD錠、ドライシロップ、細粒、坐剤
プリンペラン:錠、シロップ、細粒、注射液

◆製造販売元
ナウゼリン:協和発酵キリン
プリンペラン:アステラス製薬

+αの情報①:片頭痛で起こる吐き気にも効果がある

 片頭痛の発作時に起こる吐き気に対して、『ナウゼリン』と『プリンペラン』はどちらも効果的です。ガイドラインにおいても、最も高い【グレードA】の評価で使用が推奨されています5)。

 5) 日本頭痛学会 「慢性頭痛診療ガイドライン2013」

+αの情報②:乗り物酔いには『トラベルミン』の方が有効

 乗り物酔いは、三半規管の異常によって起こります。
 このときの吐き気は、一部「CTZ」を介して生じているため、『ナウゼリン』や『プリンペラン』でもある程度の効果は期待できます

 しかし、「CTZ」を介さずに「嘔吐中枢」が刺激されて起こる部分もあり、必ずしも十分な効果が得られるとは限りません。
 また平衡感覚の失調や急性の眩暈といった随伴症状も起こるため、専用の『トラベルミン(一般名:ジフェンヒドラミン + ジプロフィリン)』を使う方が理に叶っています6)。

 6) トラベルミン配合錠 添付文書

+αの情報③:二日酔いには、水分補給と休息が最優先

 二日酔いによる吐き気は、胃炎や脱水・低血糖、アセトアルデヒドの蓄積など、様々な要因で起こります。

 確かに、胃炎による吐き気には『ナウゼリン』や『プリンペラン』で効果が期待できます。しかし、どちらかと言えばまずは水分補給と休息が優先で、薬はどうしても治らない場合に限って使うべきです。

 これは、二日酔いによる頭痛に『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』があまりお勧めできないのと同じです。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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