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緑内障治療薬 似た薬の違い

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『キサラタン』・『タプロス』・『トラバタンズ』・『ルミガン』、同じプロスタノイド受容体関連薬の違いは?~効果・副作用と特徴の比較

回答:副作用が少なめの『キサラタン』、国内開発の『タプロス』、塩化ベンザルコニウム不使用の『トラバタンズ』、効果が強めの『ルミガン』

 『キサラタン(一般名:ラタノプロスト)』・『タプロス(一般名:タフルプロスト)』・『トラバタンズ(一般名:トラボプロスト)』・『ルミガン(一般名:ビマトプロスト)』は、緑内障の治療に使う点眼薬「プロスタノイドFP受容体関連薬」です。

 『キサラタン』は、充血などの副作用が少ない薬です。
 『タプロス』は、日本で開発された、使いやすいボトルの薬です。
 『トラバタンズ』は、「塩化ベンザルコニウム」を含まず角膜にやさしい薬です。
 『ルミガン』は、眼圧を下げる効果の強い薬です。

 厳密な使い分けの基準はありませんが、効果や副作用、使い勝手、値段などの違いから、個々の患者さんに合わせた薬を選べるようになっています。

 

回答の根拠①:充血などの副作用が少ない「ラタノプロスト」

 「ラタノプロスト」・「タフルプロスト」・「トラボプロスト」・「ビマトプロスト」で、基本的な治療効果は大きく変わらない、とされています1,2,3)。そのため、これら4つの薬はどれも開放隅角緑内障の第一選択薬に選ばれています4)。

 ただ、「ラタノプロスト」は眼の充血やまつ毛の伸長といった局所の副作用が少ない3,5)ため、初回治療に選びやすい薬と言えます。

 1) Am J Ophthalmol.135(5):688-703,(2003) PMID:12719078
 2) Clin Exp Ophthalmol.34(8):755-64,(2006) PMID:17073898
 3) Clin Ophthalmol.10:1633-7,(2016) PMID:27601879
 4) 日本眼科学会 「緑内障診療ガイドライン(第5版)」(2022)
 5) Medicine (Baltimore).98(30):e16597,(2019) PMID:31348303

 

「ラタノプロスト」は値段も安い

 「ラタノプロスト」は、プロスタノイド受容体関連薬として最初に開発された薬のため、使用実績も豊富で、薬の値段も安めです。長期間に渡って治療を続けることになる緑内障治療では、こうした経済的なコストも重要な判断材料になります。

※プロスタグランジン関連薬の国際誕生年と薬価(2025年改訂時)

製剤開発年先発医薬品の薬価後発医薬品の薬価
ラタノプロスト1996年305.50/mL151.00~232.10/mL
タフルプロスト2008年541.70/mL279.10~308.00/mL
トラボプロスト2001年389.80/mL232.00/mL
ビマトプロスト2001年485.00/mL148.30~214.40/mL

 

回答の根拠②:日本で開発された「タフルプロスト」

 アメリカで開発された他3剤と違って、「タフルプロスト」は日本で開発された国産の薬です。そのため、臨床試験も日本人を対象に行われ、日本人での有効性と安全性データが豊富です3,6)。

 特に先発医薬品の『タプロス』は、点眼容器も扱いやすいもの(ディンプルボトル)に工夫されていて、患者満足度の点で優れているとする報告もあります7)。

 小さな点眼容器を上手に扱うのが難しい高齢者などでは、こうした製剤工夫が治療の負担を大きく軽減できることもあります。

 6) タプロス点眼液 インタビューフォーム
 7) 臨床眼科.66巻6号:913-6,(2012)

 

回答の根拠③:塩化ベンザルコニウムを含まない「トラボプロスト」

 「トラボプロスト」製剤は、「プロスタノイド受容体関連薬」の中で唯一、添加物として「塩化ベンザルコニウム」を使っていない製剤です8)。
 そのため、「塩化ベンザルコニウム」の影響で結膜充血などを起こしてしまう場合には、その負担を減らす9)良い選択肢になります。

 8) トラバタンズ点眼液 添付文書
 9) Clin Ophthalmol.2(3):613-21,(2008) PMID:19668762

 

『タプロスミニ点眼液(※1回使い切りタイプ)』も「塩化ベンザルコニウム」不使用

 「タフルプロスト」の1回使い切りタイプ『タプロスミニ点眼液』も、「塩化ベンザルコニウム」が使われていない製剤です10)。ただし、保険診療で使えるのは、「塩化ベンザルコニウムに対して過敏症(の疑い)がある」または「角膜上皮障害がある」患者に対して使った場合に限られています10)。

 10) タプロスミニ点眼液 添付文書

 

回答の根拠④:効果の強力な「ビマトプロスト」

 「プロスタノイド受容体関連薬」の基本的な治療効果に大きな違いはありませんが、眼圧を下げる効果に関しては「ビマトプロスト」がやや強めとされています5,11,12)。

 ただし、眼が充血するなどの副作用の発生頻度も高い傾向にある13)ため、他の薬では十分な効果を得られないような場合の”切り札”としてよく用いられます。

 11) J Glaucoma.17(8):667-73,(2008) PMID:19092464
 12) Ophthalmology.123(1):129-40,(2016) PMID:26526633
 13) Am J Ophthalmol.135(1):55-63,(2003) PMID:12504698

 

薬剤師としてのアドバイス:点眼後は、眼の周りに溢れた薬液を拭き取る

 「プロスタノイド受容体関連薬」の薬液が皮膚に付着したまま放置していると、その部分に色素沈着が起きて皮膚が黒っぽくなることがあります。そのため、点眼をした後は、眼から溢れた薬液をティッシュ等できれいに拭き取るか、あるいは洗顔を行うことをお勧めします。
 もしくは、1日1回の点眼を「入浴前」に行うことで、点眼後に洗顔をするようにスケジュールを組んでしまうことも効果的です。

 なお、こうした対策を行っていても色素沈着が大きな問題になる場合は、別の緑内障治療薬(例:β遮断薬、α2刺激薬、炭酸脱水酵素阻害薬、Rhoキナーゼ阻害薬)に切り替えることもあります。

 

ポイントのまとめ

1. 『キサラタン(ラタノプロスト)』は、安価で副作用も少なく、最初の治療に使いやすい
2. 『タプロス(タフルプロスト)』は、国産の薬で、先発医薬品は点眼ボトルも親切設計
3. 『トラバタンズ(トラボプロスト)』は、塩化ベンザルコニウム不使用で、角膜にやさしい製剤

4. 『ルミガン(ビマトプロスト)』は、効果も副作用もやや強め

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

ラタノプロストタフルプロストトラボプロストビマトプロスト
先発医薬品名キサラタンタプロストラバタンズルミガン
適応症緑内障・高眼圧症緑内障・高眼圧症緑内障・高眼圧症緑内障・高眼圧症
国際誕生年1996年2008年2001年2001年
開発した国アメリカ日本アメリカアメリカ
用法1日1回1日1回1日1回1日1回
塩化ベンザルコニウムの添加ありあり
(※ミニ点眼液は添加なし)
なしあり
pH
(※先発医薬品)
6.5~6.95.7~6.35.76.9~7.5
浸透圧比
(※先発医薬品)
約1.01.0~1.10.9~1.11.0
世界での販売状況世界130ヵ国世界60ヵ国世界120ヵ国世界30ヵ国
規格の種類点眼液(0.005%)点眼液(0.0015%)、ミニ点眼液(0.0015%)点眼液(0.004%)点眼薬(0.03%)
妊娠中の安全性評価オーストラリア基準【B3】オーストラリア基準【B3】オーストラリア基準【B3】オーストラリア基準【B3】
先発医薬品の製造販売元ファイザー参天製薬ノバルティス千寿製薬
同成分のOTC医薬品(販売されていない)(販売されていない)(販売されていない)(販売されていない)

 

+αの情報:まつ毛を増やす外用薬としての活用

 「プロスタノイド受容体関連薬」で起こる副作用のうち、”眼周辺の多毛化”は、まつ毛が少なく短い「睫毛貧毛症」の人にとっては有益な作用になります。そのため、『ルミガン』と同じ有効成分「ビマトプロスト」の外用剤が、「睫毛貧毛症」の治療薬『グラッシュビスタ』として販売されています14)。

 なお、緑内障治療薬の点眼液を”美容”目的で販売しているようなWebサイトもありますが、こうした不適切使用では、虹彩の色素沈着といった不可逆的な副作用に気づきにくいだけでなく、万が一、重大な副作用が起きても「医薬品副作用被害救済制度」の対象外になるため、注意してください。

 14) グラッシュビスタ外用液剤 添付文書

 

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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