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高齢者 薬物動態学

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高齢者が避けるべき薬、約50種を指定へ~高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015


 4月1日、日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」の制定に向けて、約50種の薬を指定しました。今後、4月下旬まで専門家らの意見を集めた後、6月を目途に正式決定します。

ガイドラインって何?

 この「ガイドライン」は医療従事者向けのもので、”どういった治療を行うのが基本か”といった基本軸を示すものです。高齢者向けのものだけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、気管支喘息や季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)などの疾患についても個別の「ガイドライン」が存在します。

 この「ガイドライン」の策定にあたっては、様々な研究機関や学会が携わり、非常に多くの臨床データを使用して行っています。そのため現在の医療において、特に何の理由もなくこの「ガイドライン」から逸脱することは全く合理的ではありません。しかし、時には個人の事情によって多少の融通を効かせることも必要です。

 平たく言うと、医師や薬剤師らが薬物治療を行う際に、「まず”基本”として考える治療方法の手引き」と考えて頂くのが最も近いと思います。

なぜ高齢者に特別なガイドラインが必要?

 高齢者では一般的に副作用が起こりやすく、また起きた副作用の症状が重篤になる傾向があるからです。また、多種の薬を服用していることも多く、状態をコントロールすることが難しく、さらに飲み間違いによる有害事象も多いという点が挙げられます。

 そもそも高齢者は肝臓や腎臓の機能が若年層よりも衰えていますので、薬を分解・解毒するのに時間がかかります。これによって薬の血中濃度が高くなったり、高い血中濃度が続いたりする傾向があります。
 また、筋肉が減ってくるため、全体重に占める脂肪の割合が高くなってきます。臓器や皮膚でも水分量が低下するため、更に全体的に脂の割合が高くなります。これによって水溶性の薬はより血液中に分布するようになり、逆に脂溶性の薬は全身に分布するようになります。

 他にもβ遮断薬に対する感受性は鈍くなる一方、Ca拮抗薬に対する感受性は高くなる等、薬が若年層とは異なる動き(動態)を示すことが多くあります。

 そのため、ほぼ全ての薬は添付文書に「高齢者への投与」という項目を設けて、特別な注意喚起を行っています。しかし、具体的にどんな薬を使っている時のどういった症状に注意すべきか、代わりの薬はどんなものを使えば良いか、といった指針が統一されておらず、医師や薬剤師の経験と勘に頼らなければならない部分もありました。
 こうした状況を踏まえ、統一された「ガイドライン」を策定することによって、地域差や担当医師・薬剤師の技量差を減らし、質の高い医療を実現していこうと全国の医療従事者が努めています。

 よく誤解される方がおられますが、「高齢者が安全に薬を使うための指針」であって、「高齢者が使ってはいけない薬リスト」というわけではありません。

新しいガイドラインは、どんなところが変わるの?

 従来のガイドラインでは「高齢者に対して特に慎重な投与を要する」という表現であったものを、「ストップ」と改称し、使用中止を原則と改訂します。その際、変更する薬の候補や、どうしても個人の事情により中止できない場合にはどういった使用方法が推奨されるか、といった内容も加筆されることになります。

 例えば、認知症患者への『セレネース(一般名:ハロペリドール)』や『コントミン(一般名:クロルプロマジン)』といった抗精神病薬の投与は、脳血管障害などの副作用の危険が高いために「ストップ」に分類されています。

 また、「ストップ」で使用中止を定める代わりに、約20種程度の薬を「スタート」という分類に指定し、新たに使用を強く推奨していく姿勢を定めています。

 例えば、認知症患者の妄想や不安定な感情を抑えるためには、先述の「ストップ」に分類される抗精神病薬を使用するのではなく、漢方薬である『抑肝散』を使用しましょう、といったようなものが挙げられています。「スタート」には他にも、PPIなどの薬のほか、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなども盛り込まれる予定です。

自己判断では絶対に中止しない

 今回のガイドラインは、先にも述べたように「医師や薬剤師が”基本”にする治療の手引き」です。あくまで基本であって、治療は個人の体質や状況などによって臨機応変に対応するものです。ご自身やご家族の方が飲まれている薬が「ストップ」に掲載されているからといって、自己判断で薬を中止することは絶対にやめてください。

 もし薬の使用について不安を感じることがあれば、主治医の先生と治療方法について相談したり、薬剤師に「どんな症状が出てきたら気を付けるべきなのか」といった注意事項を予め聞いておくことをおすすめします。

 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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