『ニコチネル』と『チャンピックス』、同じ禁煙補助薬の違いは?~禁煙の始め方と成功率、副作用
記事の内容
回答:禁煙の継続を助ける『ニコチネル』、自然と禁煙を促す『チャンピックス』
『ニコチネル(一般名:ニコチン)』と『チャンピックス(一般名:バレニクリン)』は、どちらも禁煙補助薬です。
『ニコチネル』は、タバコの代わりに「ニコチン」を補充することで、”禁煙の継続を助ける”薬(貼り薬)です。
『チャンピックス』は、喫煙による満足感を減らすことで、自然と”禁煙を促す”薬(飲み薬)です。

そのため、禁煙に対する姿勢で使い分けるのが一般的ですが、『ニコチネル』の方が不快な副作用は少ない、『チャンピックス』の方が禁煙成功率は高い、といった違いで選ぶこともあります。
回答の根拠①:自らの意志で始めた禁煙の”継続”を助ける「ニコチン」貼付剤
禁煙を失敗する最大の原因は、「ニコチン」の摂取が減ることによる離脱症状です。そこで、タバコの代わりに薬で「ニコチン」を補充し、離脱症状を回避しながら禁煙の継続を助ける1)、というコンセプトで作られたのが、『ニコチネル』などの「ニコチン」製剤です。

こうした「ニコチン」補充をしながらの禁煙は、薬を使わない禁煙に比べて1.5~1.6倍成功しやすいことがわかっています2)。そのため、自らの意志で禁煙を始めた人にとって、その挑戦を支えてくれる薬と言えます。
特に『ニコチネル』などの貼り薬を使った「ニコチン」補充では、稀に不眠や動悸などは現れるものの、重篤な副作用や不快な副作用もほとんどない2)というのも、使いやすさに繋がっています。
1) ニコチネルTTS インタビューフォーム
2) Cochrane Database Syst Rev . 2018 May 31;5(5):CD000146. PMID:29852054
「ニコチン」補充を始めた日から禁煙を始める
薬で「ニコチン」補充を始めた人がタバコを吸うと、「ニコチン」の過剰摂取を起こすことになります。そのため、薬を使い始めたその日から禁煙を始める必要があります1)。
回答の根拠②:自然と禁煙を促す「バレニクリン」~「ニコチン」よりも高い禁煙成功率
通常、タバコを吸うと「ニコチン」の作用によって脳で「ドパミン」等が放出されるため、満足感が得られます。「バレニクリン」は、α4β2ニコチン受容体に対する部分作動によってこの「ドパミン」の放出を抑えるため、タバコを吸っても”美味しい”と感じなくなります3)。
そのため、「バレニクリン」を服用し始めた喫煙者は、自然と喫煙量が減っていくことになります。

「バレニクリン」には、こうした”喫煙への欲求”を減らす効果があるため、禁煙成功率は薬を使わない場合に比べて2.2倍ほど高く4)、「ニコチン」補充をしながらの禁煙よりも成功しやすい5)とされています。
また、「ニコチン」補充で禁煙に失敗した人も、「バレニクリン」への切り替えで禁煙に成功できる可能性もあります6)。
3) チャンピックス錠 インタビューフォーム
4) 日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書(第8.1版)」
5) Cochrane Database Syst Rev.(5):CD009329,(2013) PMID:23728690
6) JAMA.331(20):1722-1731,(2024) PMID:38696203
「バレニクリン」では不快な副作用が現れやすい
禁煙成功率の高い「バレニクリン」ですが、吐き気や不眠・悪夢・消化不良といった不快な副作用は「ニコチン」補充に比べて多い7)ため、禁煙の前に服薬を継続できない、といったことが起こらないよう注意が必要です。

7) JAMA.315(4):371-9,(2016) PMID:26813210
「バレニクリン」を服用し始めた人は、1週間はタバコを吸える
「バレニクリン」の服用を始めても、最初の1週間はタバコを吸い続けることができます1)。この時に吸ったタバコを”美味しくない”と感じる経験をした上で、1週間後から「禁煙」を始めることになります。
薬剤師としてのアドバイス:「ニコチン」のガムも市販されている
基本的に、禁煙補助薬を処方されるのは、禁煙をしないと循環器・呼吸器などの疾患が悪化する恐れがあり、医師からも禁煙が必要と判断されているにもかかわらず、「ニコチン」に対する依存があって禁煙ができないなど、一定の条件がある人に限られます。
ただ、「ニコチン」を補充するタイプの禁煙補助薬は、”ガム”の製剤などがOTC医薬品としても販売されている(例:ニコレット)ため、ドラッグストア等で購入することができます。
| バレニクリン | ニコチン | |
| 医療用医薬品 | 〇 | 〇 |
| OTC医薬品 | – | 〇 |
禁煙をしたいが、タバコを吸わないとイライラしてしまう…といったときに、タバコを吸う代わりにガムを噛む、といった方法で使えるため、禁煙に挑戦する際には良い選択肢になります。
ポイントのまとめ
1. 『ニコチネル(ニコチン)』は、タバコの代わりに「ニコチン」を補充して離脱症状を防ぐことで、禁煙の継続を助ける
2. 『チャンピックス(バレニクリン)』は、タバコの満足感を減らすことで、自然と禁煙を促す
3. 不快な副作用は『ニコチネル(ニコチン)』の方が少ない、禁煙成功率は『チャンピックス(バレニクリン)』の方が高い
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| ニコチン | バレニクリン | |
| 先発医薬品名 | ニコチネル | チャンピックス |
| 投与方法 | 貼り薬 | 飲み薬 |
| 適応症 | 医師により禁煙が必要と診断された禁煙意志の強い喫煙者が、医師の指導の下に行う禁煙の補助 | ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助 |
| ニコチンの含有 | あり | なし |
| 禁煙開始日 | 使用初日から | 服用開始の1週間後から |
| 禁煙成功率 2,4) | 通常の1.5~1.6倍 | 通常の2.2倍 |
| 主な副作用 | 不眠、動悸など | 吐き気、不眠・悪夢、消化不良、頭痛、便秘など |
| 基礎疾患に関連した禁忌 | 不安定狭心症、急性期の心筋梗塞、重篤な不整脈、脳血管障害の回復初期 | (特になし) |
| 妊娠中の安全性 | オーストラリア基準【D】 | オーストラリア基準【B3】 |
| 授乳中の安全性 | MMM【L3】 | MMM【L4】 |
| 世界での販売状況 | 世界60ヵ国以上 | 世界90ヵ国以上 |
| 剤型の規格 | TTS(10,20,30) | 錠(0.5mg、1mg) |
| 先発医薬品の製造販売元 | Haleonジャパン | ファイザー |
| 同成分のOTC医薬品 | 『ニコレット』など | (販売されていない) |
+αの情報①:「バレニクリン」と「ニコチン」の併用
「バレニクリン」では「ニコチン」を補充できないため、実際に禁煙を開始するとニコチンの離脱症状が起こることがあります。こういった場合、離脱症状がピークになるタイミングに合わせて「ニコチン」製剤を併用する方法があります8)。
ただ、こうした併用療法をしても「バレニクリン」単独に比べて禁煙成功率が明確に高まるわけではない9,10)ため、基本的にはどちらか1つで治療を行います。
8) JAMA.312(2):155-61,(2014) PMID:25005652
9) BMC Med.11:140,(2013) PMID:23718718
10) BMC Med.12:172,(2014) PMID:25296623
+αの情報②:「バレニクリン」の精神系リスク
「バレニクリン」は以前、精神疾患をもつ人への「警告」が添付文書に記載されていました。しかし、大規模臨床試験等でリスクが確認されなかった11)ことから、この記載は2017年7月に削除されています3)。
11) Lancet.387(10037):2507-20,(2016) PMID:27116918
+αの情報③:「ニコチン」補充は、禁忌が多い
「ニコチン」には血圧を高める作用があるため、狭心症や心筋梗塞・脳卒中・不整脈などの心血管系の疾患を悪化させる恐れがあります12)。そのため、こうした基礎疾患を持つ人には「ニコチン」補充による禁煙補助は”禁忌”制限があり、使用できません1)。
12) Circulation.129(1):28-41,(2014) PMID:24323793
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











この記事へのコメントはありません。