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妊娠、授乳 ステロイド(内服)

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妊娠中の「ステロイド」の服用は危険か?~胎盤での不活性化と安全性評価

回答:大量でなければ、比較的安全な薬

 「ステロイド」は、薬の中では比較的安全に使える薬です。
 特に、1日20mgまでの『プレドニン(一般名:プレドニゾロン)』などの「プレドニゾロン」製剤であれば、胎児の成長に影響することはない、とされています。

 そのため、妊娠に気付かず「ステロイド」を服用していても、通常の服用量であれば心配の必要はありません。”ステロイド=怖い薬”と思い込んで、自己判断で薬を中断したりしないようにしてください。

 ただし、妊娠しているかどうかによって使う薬の優先度は大きく変わります。医師・薬剤師には必ず妊娠している旨を伝えるようにしてください。

回答の根拠①:胎盤での「プレドニゾロン」不活性化

 胎盤には、『プレドニン』などの「プレドニゾロン」を不活性化する「11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(2型)」が多く存在しています1)。
 実際、母体が服用した「プレドニゾロン」は胎盤で約90%程度が不活性化され、胎児にまで到達するのは僅か10%程度です2)。

胎盤でのプレドニゾロン不活性化
 1) Front Horm Res.36:146-64,(2008) PMID:18230901
 2) B J Dermatol.165(5):943-52,(2011)
 PMID:21729030
 
 このことから、1日20mg以下の「プレドニゾロン」であれば胎児に影響はなく、妊婦でも安全に使用できるとされています3)。

 3) 南江堂 今日の治療薬2016

回答の根拠②:『プレドニン』や『リンデロン』の安全性評価~オーストラリア基準

 妊娠中の薬の安全性評価の一つである「オーストラリア基準」では、『プレドニン』や『リンデロン(一般名:ベタメタゾン)』などの副腎皮質ホルモン「ステロイド薬」は多くがカテゴリ【A】に分類され、妊婦に対しても使用できる薬と評価されています。

※オーストラリア基準【A】の記述
 これまでに多くの妊婦や妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する有害作用の頻度が増す、という”いかなる証拠”も観察されていない。

 ただし『リンデロン』の場合、胎盤での不活性化は約33%と、「プレドニゾロン」のよりも胎児へ移行しやすい傾向があります2)。
 そのため、妊娠中にステロイドが必要になった場合には、より胎児へ移行しにくい「プレドニゾロン」製剤を使うのが一般的です。

リスクを示唆する報告は存在することに注意

 妊娠中に「ステロイド」を内服することで、胎児の体重増加が抑制されることや、口蓋裂のリスクが高まることを示唆する報告があります4,5)。

 4) Obstet Gynecol.99(1):101-8,(2002)PMID:11777519
 5) Teratology.62(6):385-92,(2000) PMID:11091360

 しかし、こうした胎児への悪影響は必ずしも服用した「ステロイド」のみの悪影響とは言えず、「ステロイド」が必要なほど、母体が不健康な状態であることが与える悪影響も考慮する必要があります(交絡バイアス)。
妊娠中のステロイド
 そのため、現状はこれらの報告が「ステロイド」によるヒト胎児への悪影響の、確固たる根拠とはなっていません。

 このことから、医師が妊婦に「ステロイド」を処方するのは、こうした薬の潜在的なリスクよりも、母体が不健康な状態であることが与える悪影響の方が大きく、「ステロイド」を使った方が母子ともに良い結果が得られると判断した場合だけです

薬剤師としてのアドバイス:妊娠していること、望む治療方法をきちんと伝える

 基本的に、「ステロイド」は薬の中では比較的安全に使える部類のものです。

 しかし、「ステロイド」が胎児に与えるリスクをインターネット等で見て不安になり、自己判断で薬を勝手に中止してしまった結果、母体が健康を損ね、かえって母子ともに悪影響を被ってしまう、といったケースは少なくありません。

 治療を受ける際には、必ず妊娠している旨を医師・薬剤師に伝えるようにしてください。
 その上で「ステロイド」が選択肢となる場合には、「ステロイド」を使うリスクや得られるメリットについて納得できる説明を受け、自分自身が望む治療方法を選ぶ
ようにしてください。

+αの情報:塗り薬や点鼻薬、吸入薬は血液中には入って来ない

 軟膏・クリーム・点眼・点鼻薬・吸入薬などの「ステロイド」は、母体の血液中にはほとんど移行しません。そのため通常の使用においては、多くの薬が胎児への影響についても心配なく使用することができます。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • Fizz-DI
    • 2016年 10月 18日

     『プレドニン』と『リンデロン』のリスク評価をひとまとめで扱っていましたが、不活化率の違いなどを踏まえて個別に記載するよう加筆・修正しました。

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