『デパス』と『ソラナックス』、同じ抗不安薬の違いは?~作用時間による頓服の使い分け
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回答:突発的な症状が現れた時の『デパス』、外出などのイベントに備える時の『ソラナックス』
『デパス(一般名:エチゾラム)』と『ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)』は、どちらも速効性のある”頓服”向きの、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。
『デパス』は、作用時間が特に短いため、突発的な症状が現れた時のピンポイントな治療に便利な薬です。
『ソラナックス』は、効果が半日ほど続くため、外出などのイベントに備えて使う時に便利な薬です。

ただし、不安障害の治療の中心はSSRIなどの抗うつ薬で、『デパス』や『ソラナックス』といった薬は一時的・補助的な使い方に留める必要があります。
回答の根拠:作用時間で使い分ける抗不安薬~短時間型の「エチゾラム」と中間型の「アルプラゾラム」
「エチゾラム」と「アルプラゾラム」は、色々な疾患や環境要因によって起こる”不安”や”焦燥”の症状を和らげるベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。
本来、不安障害の治療には抗うつ薬のSSRI(例:『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』)が優先されますが、SSRIの効果は現れるのに2週間程度かかる1)ため、速効性が必要な場合には「エチゾラム」や「アルプラゾラム」といった薬が選択肢になります。

「エチゾラム」と「アルプラゾラム」で抗不安効果に大きな違いはない2)ため、睡眠薬と同様に作用時間の長さで使い分けるのが一般的です。
半減期が6.3時間と短い「エチゾラム」3)は、突発的に現れた症状をピンポイントで治療するのに適した短時間型の薬です。
半減期が14.0時間の「アルプラゾラム」4)は、ちょうど半日ほど効果が続くため、外出などのイベントに備えて服用しやすい中間型の薬です。

ただし、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は依存しやすいため、あくまでSSRIの補助的な位置づけで用いる必要があります。
1) Depress Anxiety.24(1):1-14,(2007) PMID:16894619
2) Curr Med Res Opin.11(9):543-9,(1989) PMID:2692969
3) デパス錠 インタビューフォーム
4) ソラナックス錠 インタビューフォーム
1日を通した症状には、長時間型の抗不安薬を使う
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬には、他にも作用時間の長い長時間型の薬もあります。
こうした長時間型の薬は”頓服”というより、1日を通して不安症状が強い場合に、予期せぬ症状や夜間・早朝の強い症状が現れるのを防ぐ目的で使うのが一般的です。
ただし、作用が長続きするぶん、眠気やふらつきといった副作用も長引くことに注意が必要です。
※主なベンゾジアゼピン系の抗不安薬の血中濃度半減期
エチゾラム:6.3時間
クロチアゼパム:6.3時間
ロラゼパム:12.0時間
アルプラゾラム:14.0時間
ブロマゼパム:20.0時間
ジアゼパム:57.1時間
メキサゾラム:76.4時間
ロフラゼプ酸エチル:122時間
薬剤師としてのアドバイス:ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と抗不安薬の作用は同じ
ベンゾジアゼピン系の薬には「睡眠薬」と「抗不安薬」がありますが、作用メカニズムは全く同じです。催眠作用の強いものを睡眠薬、抗不安作用の強いものを抗不安薬として扱っていますが、基本的にはどの薬も催眠と抗不安の作用を両方持ち合わせています。
そのため、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は、不眠と不安どちらの症状も強い場合に良い選択肢になりますが、抗不安薬でも眠気が強く現れることがあります。
また、ベンゾジアゼピン系の薬には筋弛緩作用もあるため、睡眠薬でも抗不安薬でも足元のふらつき・転倒が起こりやすく、特に高齢者ではこれが骨折の原因になる5,6)ことにも注意が必要です。
5) Eur J Clin Pharmacol.70(7):873-80,(2014) PMID:24810612
6) Eur Geriatr Med.14(4):625-632,(2023) PMID:37256475
ポイントのまとめ
1. 不安障害の第一選択薬はSSRIだが、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬にはSSRIにない”速効性”がある
2. 『デパス(エチゾラム)』は短時間型の薬で、突発的な症状の治療に使いやすい
3. 『ソラナックス(アルプラゾラム)』は中間型の薬で、外出などのイベントに備えて使いやすい
薬のカタログスペックの比較
| エチゾラム | アルプラゾラム | |
| 先発医薬品名 | デパス | ソラナックス |
| 向精神薬の指定 | あり(第3種) | あり(第3種) |
| 主な適応症 | 不安・緊張・抑うつ・睡眠障害、頚椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛の筋緊張 | 不安・緊張・抑うつ・睡眠障害 |
| t1/2 | 6.3時間(短時間型) | 14.0時間(中間型) |
| 1日量 | 1~3mg | 1.2~2.4mg |
| 高齢者の1日量 | 1.5mgまで | 1.2mgまで |
| 代謝に関わるCYP | CYP2C9、CYP3A4 | CYP3A4 |
| 閉塞隅角緑内障に対する投与 | 禁忌 | 禁忌 |
| 国際登場年 | 1983年 | 1984年 |
| 妊娠中の安全性評価 | – | オーストラリア基準【C】 |
| 授乳中の安全性評価 | – | MMM【L3】 |
| 世界での販売状況 | 韓国、イタリア | アメリカ、カナダ、フランス、イギリスなど110ヵ国 |
| 剤型の規格 | 錠(0.25mg,0.5mg,1mg)、細粒(1%) | 錠(0.4mg,0.8mg) |
| 先発医薬品の製造販売元 | 田辺三菱製薬 | ヴィアトリス製薬 |
| 同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | (販売されていない) |
+αの情報①:「エチゾラム」は筋弛緩作用を目的に使うこともある
「エチゾラム」は筋弛緩作用を目的として、頚椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛に使うこともできます1)。実際、緊張型頭痛に対して「エチゾラム」はNSAIDsよりも効果的なケースがあり7)、不安や不眠を伴うひどい肩凝りや頭痛には”切り札”となる薬です。

ただし、筋肉の緊張によって起こる肩凝りや緊張型頭痛には、依存などの問題がなく、より安全に使える『テルネリン(一般名:チザニジン)』や『ミオナール(一般名:エペリゾン)』といった筋弛緩薬が優先的に使われます。ガイドライン等でも、「エチゾラム」に関する推奨はなく、あくまで有効とする報告があるという紹介に留まっています8)。
7) Intern Med.46(8):467-72,(2007) PMID:17443036
8) 日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン2021」
+αの情報②:代謝にCYPが関与しない「ロラゼパム」
ほとんどのベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は、代謝にCYPが関係しているため、CYP誘導/阻害作用を持つ薬と併用した場合に作用が不安定になる可能性があります。
そんな中、『ワイパックス(一般名:ロラゼパム)』は代謝にCYPが関与しない9)ため、肝障害がある人や、相互作用リスクの高い薬を使っている人でも選択肢にしやすい薬です。

9) ワイパックス錠 インタビューフォーム
+αの情報③:構造がほとんど同じの「トリアゾラム」「アルプラゾラム」「エスタゾラム」
『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』、『ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)』、『ユーロジン(一般名:エスタゾラム)』は、ほとんど同じ構造の薬ですが、「Cl-」や「CH3-」といった側鎖がつくごとに代謝を受けやすくなり、半減期は短くなっていきます。

※血中濃度半減期
トリアゾラム:2.9時間
アルプラゾラム:14.0時間
エスタゾラム:24.0時間
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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