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解熱鎮痛薬・NSAIDs 片頭痛

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『ロキソニン』が効かない頭痛がある?~片頭痛と緊張型頭痛

回答:「片頭痛」には効きにくい

 『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』では、効きにくいタイプの頭痛があります。

 特に、「片頭痛」は『ロキソニン』ではあまり効果がないため、一度きちんと病院(脳神経外科など)を受診し、片頭痛専用の痛み止めを処方してもらう必要があります。
 また、痛み止めをあまり頻繁に使うようであれば、予防の薬も併せて使うことをお勧めします。

 ただし、頭痛は脳卒中や高血圧など様々な病気の兆候としても現れます。薬が効きにくい場合には、まず頭痛の原因を明らかにするようにしてください。

回答の根拠:頭痛の種類と、『ロキソニン』の効果

 慢性の頭痛には、大きく分けて3種類のタイプがあります。

①緊張型頭痛・・・肩凝りや眼精疲労などによって筋肉がこわばり、血の巡りが悪くなって起こるもの。
②片頭痛・・・ストレスや疲れ、光や音、匂い等の原因によって、脳の血管が異常に拡張して起こるもの。
③群発頭痛・・・特定の季節に連続して起こる特殊なもの。
※③の群発頭痛はかなり特殊なため、ここでは①緊張型頭痛と②片頭痛の解説をします。

 通常、『ロキソニン』がよく効くのは「緊張型頭痛」だけです。

 「片頭痛」も、軽いものであれば『ロキソニン』で治ることもありますが、痛みが強い場合には片頭痛専用の痛み止め「トリプタン製剤」を使う必要があります1)。
慢性頭痛とロキソニン
 1) 日本頭痛学会 「慢性頭痛診療ガイドライン」

 「片頭痛」の痛みは、脳の血管が異常に拡張して起こることが原因とされています。『ロキソニン』は、こうした脳血管に対する作用を全く持っていません。

 つまり、『ロキソニン』を飲んでも頭痛が治らない場合、薬の量が足りていないからではなく、そもそも『ロキソニン』が効きにくい「片頭痛」である可能性を疑う必要があります。

「緊張型頭痛」と「片頭痛」が合併して起こるタイプ

 「緊張型頭痛」と「片頭痛」は合併して起こることがあります。
片頭痛と緊張型頭痛の重なり
 現在使われている「トリプタン製剤」は、『ロキソニン』などのNASIDsと併用しても問題ありません。そのため、『ロキソニン』を飲んでも治まらない場合に、「トリプタン製剤」を追加で使うといったこともできます。

現在使われている片頭痛治療薬「トリプタン製剤」
『ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)』
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』
『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』
『レルパックス(一般名:エレトリプタン)』
『マクサルト(一般名:リザトリプタン)』

薬剤師としてのアドバイス:『ロキソニン』が効かない「片頭痛」の見分け方

 痛みの感じ方には人それぞれ差がありますが、以下のような特徴がある頭痛は「片頭痛」である可能性があります1)。

※「片頭痛」の特徴
1.歩行や階段の昇り降りなど、日常的な動作で頭痛が悪化する。じっとしている方が楽。
2.頭痛とあわせて、吐き気やむかつきがある。
3.普段は気にならない光がまぶしく感じる。
4.普段は気にならない匂いが不愉快に感じる。

痛みの特徴

①緊張型頭痛・・・頭全体に「圧迫感」のある痛みが、じんわりと続く
②片頭痛・・・片側・両側のこめかみの部分を中心に、心拍のドクンドクンに合わせて痛みが強くなる
 頭痛の痛みイメージ

温めるべきか、冷やすべきか

①緊張型頭痛・・・温めると改善する
②片頭痛・・・冷やすと改善する

 「緊張型頭痛」は、筋肉の凝りによって血流が滞っているため、温めると改善します。
 「片頭痛」は、脳血管の拡張によって血流が増加しているため、冷やすと改善します。
緊張型頭痛と片頭痛~温めたとき
 マッサージや入浴、首や頭を温めることによって血流を良くすると良くなるのか悪くなるのか、によっても見分けることができます。

 また、「片頭痛」の時には光や音、匂いに過敏になるため、テレビの音や蛍光灯の光、食べものの匂いなどが非常に不快に感じ、痛みが悪化する傾向があります。

 女性の場合は、生理周期によって「片頭痛」が悪化することもあります。

+αの情報①:片頭痛専用の痛み止め「トリプタン製剤」は、使い方が難しい

 「トリプタン製剤」は「片頭痛」が起きてから使う薬で、予防で使う薬ではありません。また、「緊張型頭痛」には全く効果がありません。そのため、自分の頭痛が「緊張型頭痛」なのか、「片頭痛」なのかを見極めることは非常に重要です。

 あまり頻繁に「トリプタン製剤」を使っていると、今度は薬の過剰で「薬物乱用性頭痛」という別の頭痛を惹き起こす恐れがあります。
 こういった使い方が難しい薬なので、「トリプタン製剤」は市販されていません。病院で処方してもらう必要があります。

+αの情報②:「片頭痛」に対するNSAIDsの評価

 「片頭痛」に対する『ロキソニン』の効果は、ほとんど評価されていません。実際に飲んでみて効果があればそれで善し、という水準です。
 ただし一部のNSAIDsは、”患者自身が行える初期治療”として、軽い「片頭痛」には使用が推奨されています1)。

※軽い「片頭痛」の治療に使えるNSAIDsの例
『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』
『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』
『ブルフェン(一般名:イブプロフェン)』
『ナイキサン(一般名:ナプロキセン)』
『クロタム(一般名:トルフェナム酸)』
『ポンタール(一般名:フェナム酸)』
アスピリン
アセトアミノフェン+アスピリン+カフェイン

 片頭痛に対するNSAIDsの効果は不明確な部分が多いですが、患者自身が効果を実感できるのであれば併用も視野に入れるべきと考えています。

 また、NSAIDs単独では効果が得られにくい場合には、『ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)』や『プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)』といった吐き気止めを併用することで、より効果が高まることも報告されています2)。

 2) Curr Med Res Opin.16(3):190-7,(2000) PMID:11191009

 一方、生理周期で悪化した「片頭痛」には例外的に「プロスタグランジン」が関与しているため、『ロキソニン』が効きやすいとされています。

+αの情報③:緊張型頭痛には、筋肉の凝りをほぐす薬を使うことも

 緊張型頭痛の原因となっている肩や首の凝りがひどい場合、『デパス(一般名:エチゾラム)』や『ミオナール(一般名:エペリゾン)』、『テルネリン(一般名:チザニジン)』などの筋肉の凝りをほぐす薬を使うことで、痛みを和らげることができる場合があります1)。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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