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似た薬の違い 殺菌・消毒薬

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『アズノール』と『イソジン』、同じうがい薬の違いは?~消炎と消毒、効果・目的の違い

回答:炎症を抑える『アズノール』、消毒する『イソジン』

 『アズノール(一般名:アズレン)』と『イソジン(一般名:ポビドンヨード)』は、どちらも「うがい薬」です。

 『アズノール』は、炎症を抑える薬です。
 『イソジン』は、消毒のための薬です。

 同じ「うがい」に用いる薬ですが、目的も使い方も全く異なるため、混同しないよう注意が必要です。

 

回答の根拠①:口や喉の炎症を抑える目的で使う「アズレン」

 古くからカミツレ(カモミール)は”傷薬”として使われてきた歴史がありますが、「アズレン」はこのカミツレに含まれる有効成分で、炎症を抑える効果と傷の治癒を促す効果があります1)。
 実際、「アズレン」を使った口腔洗浄では、口内炎による痛みや炎症をより抑え、治癒を早める効果が確認されています2)。

 そのため「アズレン」のうがい薬は、口や喉の粘膜に炎症・傷ができているような状況で用いられます。口内炎の場合は口をすすぐように、咽頭炎の場合は喉の奥でガラガラと「うがい」をするようにして使います。

 ただし、「アズレン」に殺菌・抗ウイルス作用はないため、この薬を使って「うがい」をしても、感染予防効果を期待できるわけではありません。

 1) アズノールうがい液 インタビューフォーム
 2) J Clin Exp Dent.6(5):e535-8,(2014) PMID:25674322

 

「アズレン」は、胃薬(内服薬)としても使われている

 「アズレン」は、あまり濃いまま使うと口や喉に刺激を感じる1)ことがあるため、100mLの水に対して薬液を5~7滴ほどの割合で薄めて使います。
 なお「アズレン」は、胃薬(内服薬)としても使われています(例:『アズノール錠』)。内服しても副作用は少ない3)ため、多少たくさん使ったり、間違って薬液を飲み込んでしまったりしたとしても、大きな健康被害につながる心配はありません。そういった意味では、気軽に使える薬と言えます。

 3) アズノール錠 添付文書

 

回答の根拠②:消毒目的で使う「ポビドンヨード」

 「ポビドンヨード」は、様々な細菌やウイルスに対して不活化効果をもつ消毒薬です4)。そのため、喉が荒れていて普段よりも細菌やウイルスが感染しやすくなっているような状況で、口や喉を消毒する目的で用いられます。

 多くの細菌やウイルスに効果のある15~30倍くらいに希釈4)して使いますが、これは「小さじ1杯程度(5mL)の薬液を、コップ半分(100mL)の水に薄めるくらいの量です。
 なお、細菌やウイルスをしっかり不活化するには最低でも10秒、ものによっては60秒近く「ポビドンヨード」と接触していなければなりません4)。あまり短時間の簡単な「うがい」では十分な消毒効果は得られないことに注意が必要です。

 4) イソジンガーグル 添付文書

 

「ヨウ素」の過剰摂取にも注意

 「ポビドンヨード」に含まれる「ヨウ素(I)」は、ヒトが生きていくのに重要な元素ですが、過剰になると甲状腺などの機能に支障を来たすことがあります。

 実際、「ポビドンヨード」のうがい薬を何年も毎日使い続けていて、ヨウ素誘発性の甲状腺機能障害を起こした症例も報告されています5)。必要以上にたくさん使わないように注意してください。

 5) Intern Med.46(7):391-5,(2007) PMID:17409604

 

薬剤師としてのアドバイス:日常的な感染対策の「うがい」は、水道水で十分

 きちんと正しい方法で「うがい」をすれば、「水道水」でも感染予防効果は期待でき、「ポビドンヨード」を使っても特にこの感染予防効果が大きく高まるわけではありません6)。ヨウ素の過剰摂取というリスクも踏まえると、「ポビドンヨード」を日常的な「うがい」に使うのは避けた方が無難です。

 しかし、この正しい方法での「うがい」とは、1回15秒以上のものを連続3回、これを最低でも1日に3回行うという、相当に気合の入ったものです。通常、ここまで徹底した「うがい」をできる人は居ないため、インフルエンザ流行期や、喉を傷めているときなど、通常よりも感染しやすい状態のときには消毒作用のある「ポビドンヨード」を使って「うがい」をすることも考慮します。

 なお、「うがい」にはお茶やウイスキーを使えば良い、みたいな話もありますが、特にこうした方法が「水道水」よりも優れる、という明確な根拠はありません。もったいないので、お茶やウイスキーは飲んだ方が良いと思います。

 6) Am J Prev Med.29(4):302-7,(2005) PMID:16242593

 

ポイントのまとめ

1. 『アズノール(アズレン)』は、口や喉の炎症・傷の治癒促進を目的に使う
2. 『イソジン(ポビドンヨード)』は、口や喉の消毒を目的に使う
3. 『イソジン(ポビドンヨード)』には「ヨウ素(I)」が含まれるため、使い過ぎには注意が必要

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

アズレンポビドンヨード
代表的な医薬品名アズノールイソジン
薬理作用消炎、創傷治癒促進細菌・ウイルスに対する不活化
適応症咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒
禁忌(特になし)ヨウ素に対する過敏症
薬液の色暗青色暗赤褐色
希釈方法約100mLの水に5~7滴15~30倍に希釈
世界での販売状況なしアメリカ、イギリス、スイス、ドイツ、オーストリアなど
規格の種類錠(2mg)、ST錠口腔用(5mg)、軟膏(0.033%)、うがい液(4%)液(10%)、ゲル(10%)、クリーム(5%)、ガーグル液(7%)
代表製剤の製造販売元ロートニッテンiNova Pharmaceuticals Japan
同成分のOTC医薬品『アズレンのどスプレーマエック』など『イソジンうがい薬』など

 

+αの情報:スプレー型のヨウ素製剤の使用量注意

 OTC医薬品には、「ヨウ素」の薬液を喉にスプレーで噴霧するタイプの商品も販売されています(例:『のどぬ~るスプレーB』)。喉に高濃度の「ヨウ素」を直接吹きかけることができる便利な製剤ですが、これは4~5回噴霧するだけで1日耐容上限量(2mg)を上回る量の「ヨウ素」を摂取することになります。

 妊娠中の女性、あるいは甲状腺疾患のある人などは、特に安易な使用には気を付ける必要があります。

※『のどぬ~るスプレーB』を1回噴霧したときの「ヨウ素」摂取量
薬の濃度:0.5g/100mL
1回の噴霧量:0.1mL
→1回噴霧あたりの「ヨウ素」摂取量:0.5mg

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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