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似た薬の違い 去痰・鎮咳薬

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『ムコダイン』と『ムコソルバン』、同じ去痰薬の違いは?~痰と気道への作用と併用の意味

回答:『ムコダイン』は痰や鼻水、『ムコソルバン』は気道に作用する

 『ムコダイン(一般名:L-カルボシステイン)』と『ムコソルバン(一般名:アンブロキソール)』は、どちらも痰や鼻水を出しやすくする「去痰薬」です。

 『ムコダイン』は、痰や鼻水のねばつき(粘度)を減らし、サラサラにします。
 『ムコソルバン』は、気道の粘膜を整え、痰や鼻水をひっかかりにくくします。
ムコダインとムコソルバン3
 『ムコダイン』と『ムコソルバン』は、名前もよく似て同じ目的で使う薬ですが、作用は全く異なる別の薬です。そのため症状によって使い分けたり、より高い効果を期待して併用したりします。

回答の根拠①:痰や鼻水のねばつき(粘度)を減らす『ムコダイン』

 『ムコダイン』は、痰や鼻水のねばつき(粘度)を減らし、出しやすくする「気道粘液調整薬」です。

 喉や鼻の粘膜は常に粘液を出し、細菌やウイルスなどの外敵をひっつけて捕まえることで、体内への侵入を防いでいます。
気道粘液の役割
 喉や鼻に入ってくる外敵の量が増えてくると、外敵をより捕まえやすくするために高い粘度の粘液を作るようになります。このとき、粘度を高めるために「シアル酸(α-N-Acetylneuraminic acid:Sialic Acid)」や「フコース(α-L-Fucose)」といった糖を増やします1)。

 1) 日本気管支研究会雑誌 8(3),312-20,(1986) ※PubMed外

 通常は、こうした適度な防御機能によって身体が守られていますが、あまりに粘度が高くなってしまうと、痰や鼻水は絡み付き、吐き出せなくなります。
 『ムコダイン』は、この「シアル酸」と「フコース」の割合を適度に整えることによって、異常にねばついた痰や鼻水をサラサラにし、出しやすくする作用があります2)。
ムコダイン~シアル酸とフコース比の正常化
 2) ムコダイン錠 添付文書

慢性閉塞性肺疾患(COPD)にも効果

 『ムコダイン』には痰の粘度を下げるだけでなく、粘液そのものの出過ぎを抑える調整効果もあります2)。
 こうした複合的な作用によって、『ムコダイン』には慢性閉塞性肺疾患(COPD)で起こる呼吸困難や痰の増加といった急性増悪を減らす効果も報告されています3)。

 3) Lancet.371(9629):2013-8,(2008) PMID:18555912

回答の根拠②:気道の粘膜を整える『ムコソルバン』

 『ムコソルバン』は、気道の粘膜を整えることで痰を出しやすくする「気道潤滑薬」です。

 肺からは「肺表面活性物質(肺サーファクタント)」と呼ばれる物質が分泌され、気道の滑りを良くしています。
 『ムコソルバン』は、この物質を増やすことで気道の滑りを改善し、痰や鼻水を出しやすくする作用があります4)。
ムコソルバン~肺サーファクタントと去痰
 4) ムコソルバン錠 インタビューフォーム

肺表面活性物質(肺サーファクタント)の作用は、 洗剤と同じイメージ

 「肺表面活性物質(肺サーファクタント)」の性質は、洗剤などと同じ「界面活性剤」の一種です。
 洗剤がついたお皿は汚れが落ちやすくなり、ツルツルと滑りやすくなるように、気道も滑らかになって痰や鼻水を出しやすくなります。

回答の根拠③:『ムコダイン』と『ムコソルバン』を併用する意味

 『ムコダイン』は粘液、『ムコソルバン』は粘膜と、それぞれ作用するポイントが異なります。そのため、併用することで別方面から「去痰」という目的にアプローチすることができます。
ムコダインとムコソルバンの作用の違い
 このことから、『ムコダイン』と『ムコソルバン』の併用は理に叶っており、多くの病院で併用処方されています。実際、市販薬の『パブロンSゴールドW』ではこの2つの薬が配合された処方になっています5)。

 5) パブロンSゴールドW錠 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:薬を飲むと、一時的に痰や鼻水がたくさん出ることもある

 『ムコダイン』や『ムコソルバン』などの去痰薬は、あくまで痰や鼻水を「出しやすくする薬」であって「消し去ってしまう薬」ではありません。そのため、薬を飲むと一時的に痰や鼻水がたくさん出る場合があります。
 これは副作用だと勘違いされることも多い現象のため、注意が必要です。

ポイントのまとめ

1. 『ムコダイン』は、痰や鼻水の「ねばつき」を減らす薬
2. 『ムコソルバン』は、喉や鼻の「粘膜の滑り」を良くする薬
3. 別の作用で去痰にアプローチできるため、併用することもある

添付文書の記載内容の比較

◆薬効分類
ムコダイン:気道粘液調整・粘膜正常化剤
ムコソルバン:気道潤滑去痰剤

◆共通する適応症
急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核の去痰、慢性副鼻腔炎の排膿

※『ムコダイン』だけにある適応症
上気道炎の去痰、滲出性中耳炎の排液(※小児のみ)
※『ムコソルバン』だけにある適応症
塵肺症、手術後の喀痰喀出困難の去痰

◆剤型の種類
ムコダイン:錠剤、ドライシロップ、シロップ
ムコソルバン:錠剤、L錠・Lカプセル(徐放性:1日1回)、ドライシロップ、シロップ、内用液

◆製造販売元
ムコダイン:杏林製薬
ムコソルバン:帝人ファーマ

 

+αの情報①:即効性や劇的な効果は期待できないが、風邪の咳にも効果の報告がある

 風邪の咳は、「リン酸コデイン」などの麻薬性鎮咳薬や気管支拡張薬ではほとんど効果がなく6)、治療の選択肢が少ない厄介な症状ですが、『ムコダイン』や『ムコソルバン』で症状を和らげることができるという報告があります7,8)。
 眠気などの副作用も少ない薬のため、風邪で湿った咳が出る場合には良い選択肢になります。

 6) Cochrane Database Syst Rev.(11):CD001831,(2014) PMID:25420096
 7) Cochrane Database Syst Rev. 2013 May 31;(5):CD003124. PMID:23728642
 8) BMC Fam Pract.15:45,(2014) PMID:24621446

+αの情報②:「リン酸コデイン」は、痰の粘度を高める

 ひどい気管支喘息の場合、炎症で狭くなった気管支に粘度の高い痰が引っかかることで気道が完全に閉塞し、窒息死を起こすことがあります。特に、市販薬にも含まれる咳止め薬「リン酸コデイン」は痰の粘度を高めるため、喘息には禁忌であることにも注意が必要です9)。

 9) コデインリン酸塩散1%「タケダ」 添付文書

 咳が長く続く場合(特に、時間経過と共に自然に改善していかない場合)は、咳止めを使い続けるのではなく、病院で咳の原因を明確にし、適切な治療を受けるようにしてください。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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