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似た薬の違い 便秘薬

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『マグミット』と『プルゼニド』、同じ便秘薬の違いは?~刺激性と非刺激性の効果と副作用、使い分け

回答:腹痛や耐性を起こしにくい『マグミット』、頓服薬として使いやすい『プルゼニド』

 『マグミット(一般名:酸化マグネシウム)』と『プルゼニド(一般名:センノシド)』は、どちらもお通じを良くする便秘薬です。

 『マグミット』は、腸に水分を集めて便を柔らかくするタイプの薬(非刺激性)で、腹痛や耐性を起こしにくいのが特徴です。
 『プルゼニド』は、腸を刺激して動きを活発にさせるタイプの薬(刺激性)で、効き目が現れる時間を予測しやすいのが特徴です。

 通常は腹痛や耐性を起こしにくい『マグミット』が優先されますが、効果が不十分な場合には『プルゼニド』を頓服で追加する、という使い分けが一般的です。

 

回答の根拠①:副作用が少ない「酸化マグネシウム」~便秘治療の第一選択薬

 「酸化マグネシウム」と「センノシド」は、どちらも古くから使われている便秘薬ですが、その効果に大きな差はありません1)。

 「酸化マグネシウム」は、腸内の浸透圧を高めることで水分を集め、便を柔らかくするタイプの便秘薬です。このタイプの薬は、「センノシド」のように腸を直接刺激するタイプの便秘薬(刺激性)に比べて腹痛などの副作用が現れにくい耐性がつきにくい=効果が弱まりにくい、といった特徴があります2,3)。
 そのため、便秘の治療では「酸化マグネシウム」のような副作用の少ない薬から優先的に使われるのが一般的です4,5)。

1) Am J Gastroenterol.116(1):152-161,(2021) PMID:32969946
2) Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 4;(9):CD011448.PMID:26342714
3) Nutrients.13(2):421,(2021) PMID:33525523

4) 日本消化器学会「便通異常症診療ガイドライン2023」
5) Gastroenterology.164(7):1086-1106,(2023) PMID:37211380

 

高齢者や腎機能の低下した人では、高マグネシウム血症に注意

 「酸化マグネシウム」を、高齢者や腎機能の低下した人が高用量(1,650mg/日以上)で長期間(36日間以上)使い続けている、といった条件が重なると、高マグネシウム血症の副作用を起こすことがあります6)。
 「酸化マグネシウム」は、確かに大部分の人にとって安全な便秘薬ではありますが、こうしたリスク要因を多く抱える人の場合には特別な注意を払う必要があります。 

6) J Pharm Health Care Sci.5:4,(2019) PMID:30805197

 

回答の根拠②:効果が現れるタイミングを予測しやすい『プルゼニド』~頓服薬としての使いやすさ

 「センノシド」のように、腸を刺激するタイプの便秘薬(刺激性)は、他の薬では効果が不十分なときに”切り札”として使うような薬です4,5,7)。

 特に「センノシド」は、腸内細菌の働きで「レインアンスロン」に変換されてから効果を発揮しますが、この変換にはおよそ8~10時間かかります8)。つまり、「センノシド」は服用から8~10時間後に効き始めるということです。

 このことから、「センノシド」は”夜寝る前に飲んでおけば翌朝のお通じに効く”といったように、効き始めを逆算した飲み方ができるため、必要に応じて使う頓服薬として非常に扱いやすいという特徴があります。

 ただし、「センノシド」は連用していると耐性ができて薬が効きにくくなる9)ため、どうしても必要なときだけに限って使う必要があります。

7) Digestion.105(1):40-48,(2024) PMID:37696258
8) Pharmacology.20 Suppl 1:50-7,(1980) PMID:7375506
9) プルゼニド錠 添付文書

 

「センノシド」は、他の薬との相互作用もあまり問題にならない

 「酸化マグネシウム」に含まれるマグネシウムは、他の色々な薬の吸収に影響を与えることがあります10)。そのため、一部の薬とは2~4時間程度の間隔をあけて服用するなどの対応が必要です。

※「マグネシウム」で吸収が低下する薬の例
『ミノマイシン(一般名:ミノサイクリン)』などのテトラサイクリン系抗菌剤
『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』などのニューキノロン系抗菌剤
『ボノテオ(一般名:ミノドロン)』などのビスホスホネート製剤(骨粗鬆症の薬)

 「センノシド」では、こうした他の薬の吸収や作用に大きく影響することはない9)ため、服用のタイミングを選びやすいのも特徴です。

10) マグミット錠 添付文書

 

薬剤師としてのアドバイス:便秘の解消には「運動」や「食物繊維」、「正しい姿勢」も重要

 便秘の治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行うのが基本です。
 たとえば適度な運動や食物繊維が豊富な食材を、日常生活の中に少し積極的に取り入れてみること、あるいは洋式トイレの場合には、足を15~20cm程度の台に置いて、やや前かがみで座った姿勢をとる(ロダンの彫刻『考える人』のようなポーズ)こと7)も、便秘解消に重要な対策になります。

 どれも特に大きなリスクや出費を伴うことなくできるため、薬と併せて継続していくことが大切です。

 

ポイントのまとめ

1. 『マグミット(酸化マグネシウム)』は水分を集めて便を柔らかくする浸透圧性の薬で、腹痛や耐性を起こしにくい第一選択薬
2. 『プルゼニド(センノシド)』は腸を動かす刺激性の薬で、服用から8~10時間後に効果が現れる”頓服”向きの薬
3. 便秘の解消には、運動や食物繊維の摂取、正しい姿勢などの非薬物療法も重要

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

酸化マグネシウムセンノシド
代表的な医薬品名マグミットプルゼニド
分類浸透圧性(非刺激性)刺激性
用法1日3回、または1日1回就寝前1日1回就寝前
効果発現までの時間2~8時間8~10時間
腹痛の副作用(添付文書に記載なし)多い(注意喚起あり)
耐性なし連用による耐性に注意
併用注意の薬多数特になし
世界での販売状況世界各国で広く用いられている世界各国で広く用いられている
剤型の規格錠(200mg、250mg、330mg、500mg)、細粒83%錠(12mg)
代表製剤の製造販売元マグミット製薬サンファーマ
同成分のOTC医薬品『マグミットK』、『酸化マグネシウムE便秘薬』など『コーラックハーブ』など

 

+αの情報①:「酸化マグネシウム」は、1日1回にまとめても良いかもしれない

 「酸化マグネシウム」の効果は、1日の投与量が同じであれば、1日3回でも1日1回でもあまり変わらない可能性があります11)。
 相互作用による影響を避けるために、服薬のタイミングが複雑になり過ぎる場合には、薬を「1日1回就寝前」にまとめてしまう、というもの1つの方法になります。

11) J Rural Med.19(3):192-195,(2024) PMID:38975042

 

+αの情報②:「センノシド」の妊娠中の安全性

 「センノシド」は子宮収縮に影響する可能性があるため、妊娠中の大量服用は避ける必要があります9)。しかし、通常の使い方であれば概ね安全とされており12)、「オーストラリア基準」でも最もリスクが低い【A】に評価されています。
 そのため、妊娠中であっても必要に応じて「センノシド」を処方されることがあります。

12) Clin Colon Rectal Surg.25(1):12-9,(2012) PMID:23449608

 

+αの情報③:「ハーブ」や「植物系」が”やさしい”とは限らない

 「大黄(ダイオウ)」や「アロエ」などの生薬も便秘の治療に用いられることがありますが、これらは「センノシド」と同じ刺激性の薬に分類されます。ハーブや植物系の成分が必ずしも”やさしい薬”とは限らない、という点に注意が必要です。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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