『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』、同じビタミンBの薬の違いは?~誘導体の違いとB2の配合意義、実際の効果
記事の内容
回答:ビタミンB群の細かな成分は異なるが、だいたい同じ
『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』は、いずれもビタミンB群(B1・B6・B12)を補給するための薬です。

同じビタミンB群でも誘導体が違っていたり、『ビタノイリン』と『ノイロビタン』には補助的にビタミンB2も配合されていたりと、成分には細かな違いがあります。
ただ、薬としての性能が大きく変わるほどのものではなく、適応症も共通のため、”だいたい同じ薬”として扱われています。
回答の根拠①:使う目的や適応症は全て同じ
ビタミンB1(チアミン)・ビタミンB6(ピリドキシン)・ビタミンB12(コバラミン)は、それぞれを単独で使うよりも、3種を併用した方が神経痛や神経障害に対する効果は相乗的に高まることが知られています1,2)。
『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』は、これらビタミンB1・B6・B12を配合した薬で、適応症も全て同じです3,4,5)。

※共通の適応症
食事からの摂取が不十分な際のビタミンB群の補給
ビタミンB群の欠乏による神経痛・筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・麻痺の症状改善
1) Nutr Neurosci.26(3):235-253,(2023) PMID:35156556
2) CNS Neurosci Ther.26(1):5-13,(2020) PMID:31490017
3) ビタノイリンカプセル インタビューフォーム
4) ノイロビタン配合錠 インタビューフォーム
5) ビタメジン配合カプセル インタビューフォーム
回答の根拠②:細かな配合成分の違い
『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』の配合成分は少しずつ異なります3,4,5)。
| ビタノイリン | ノイロビタン | ビタメジン | |
| ビタミンB1 | フルスルチアミン | オクトチアミン | ベンフォチアミン |
| ビタミンB6 | ピリドキサール | ピリドキシン | ピリドキシン |
| ビタミンB12 | ヒドロキソコバラミン | シアノコバラミン | シアノコバラミン |
| ビタミンB2 | リボフラビン | リボフラビン | – |
これは、同じ「ビタミンB1」と言っても、基本の形である「チアミン」と、「フルスルチアミン」や「オクトチアミン」、「ベンフォチアミン」といった誘導体があるからです。
厳密には、これら誘導体によって生理活性に多少の違いはありますが、どれかの薬が突出して優れる、といった報告はありません。そのため、配合成分よりも、カプセル剤・錠剤・散剤といった剤型の違いなどの方が重要な選択基準になっています。
※剤型の違い
『ビタノイリン』・・・カプセル剤のみ
『ノイロビタン』・・・錠剤のみ
『ビタメジン』・・・・カプセル剤、散剤、静注
「ビタミンB1」の違い
ビタミンB1とは、「チアミン」とその誘導体の総称のことで、主に神経機能の維持に関わっています(※「脚気」はビタミンB1の欠乏によって起こります)。
※ビタミンB1の配合成分
『ビタノイリン』・・・フルスルチアミン
『ノイロビタン』・・・オクトチアミン
『ビタメジン』・・・・ベンフォチアミン

『ビタノイリン』に含まれる「フルスルチアミン」は、「チアミン」と比べると消化管からの吸収が良く、血液中や臓器内に高い濃度で長時間維持される特徴があります3)。
『ノイロビタン』に含まれる「オクトチアミン」は、ビタミンB6・B12との併用した際の神経炎の改善効果や神経再生の促進効果が高い可能性が示唆されています4,6)。
『ビタメジン』に含まれる「ベンフォチアミン」は、「チアミン」と比べると高い血中濃度で維持され、特に心筋・肝臓・腎臓・骨格筋などに分布しやすい、という特徴があります5,7)
6) 日本耳鼻咽喉科学会会報.(2):178,(1967)
7) Chem Pharm Bull.15(3):295-302,(1967) PMID:6075482
「ビタミンB6」の違い
ビタミンB6とは、「ピリドキシン」とその誘導体の総称のことです。主に神経伝達や皮膚の形成、ホルモン調節に関与し、不足するとてんかん・痙攣・貧血・口内炎などの原因となります。
アルコール型の「ピリドキシン」、アルデヒド型の「ピリドキサール」、アミン型の「ピリドキサミン」がありますが、全て体内では「ピリドキサールリン酸」に代謝されて作用します。
※ビタミンB6の配合成分
『ビタノイリン』・・・ピリドキサール
『ノイロビタン』・・・ピリドキシン
『ビタメジン』・・・・ピリドキシン
『ビタノイリン』に含まれる「ピリドキサール」は、「ピリドキシン」に比べて生理活性が高い3)とされていますが、そのぶん光などにも不安定な傾向にあります。
「ビタミンB12」の違い
ビタミンB12とは、コバルト(Co)を含むビタミン類の総称です。「シアノコバラミン」・「ヒドロキソコバラミン」・「アデノシルコバラミン」・「メチルコバラミン」の4種類がありますが、どれも主にアミノ酸代謝や葉酸合成に関与し、不足すると貧血や神経障害などの原因になります。
※ビタミンB12の配合成分
『ビタノイリン』・・・ヒドロキソコバラミン
『ノイロビタン』・・・シアノコバラミン
『ビタメジン』・・・・シアノコバラミン
「ヒドロキソコバラミン」は、「シアノコバラミン」よりも体内に貯留しやすく、効果が持続する3)傾向がある、とされています。
「ビタミンB2」の違い
詳しいメカニズムはわかっていませんが、ビタミンB1類を投与し続けていると、一過性に体内のビタミンB2濃度が減少することがあります。そのため、病気の治療目的でビタミンB1類を使う際には、ビタミンB2を併用しておくことがあります3)。
※ビタミンB2の配合成分
『ビタノイリン』・・・リボフラビン
『ノイロビタン』・・・リボフラビン
『ビタメジン』・・・・(なし)
薬剤師としてのアドバイス:ビタミンB2を使っていると、尿が黄色っぽくなる
『ビタノイリン』や『ノイロビタン』を服用中は、尿が黄色くなることがあります。これは「ビタミンB2」が尿中に排泄されているだけのことなので、心配の必要はありません。ビタミン剤や風邪薬を飲むと尿が濃い黄色になるのと同じです。

同様に、薬によっては尿が独特の色に変化するものがいくつかあります。びっくりしないよう、薬剤師の事前説明をきちんと聞いておくことをお勧めします。
ただし、脱水や腎障害といった重要な体調変化や副作用(例:横紋筋融解症)でも尿の色は変わることがあることに注意は必要です。
※尿が着色する代表的な薬の例
| 赤 | 赤色 | セフジニル、チペピジン、チメピジウム |
| 黄赤色 | センノシド、エパルレスタット、サラゾスルファピリジン | |
| 橙赤色 | リファンピシン、リファブチン | |
| 赤褐色 | エンタカポン | |
| 暗赤色 | メトロニダゾール | |
| 黄 | 黄色 | ビタミンB2(リボフラビン) |
| 橙黄色 | カルバゾクロム | |
| 茶褐色 | ミノサイクリン | |
| 青 | 琥珀~黄緑色 | フルタミド |
| 青~緑色 | ミトキサントロン、ミノサイクリン | |
| 黒 | 黒色 | レボドパ、メチルドパ |
ポイントのまとめ
1. 『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』はビタミンB群の薬で、B1・B6・B12の併用は相乗効果を期待できる
2. 『ビタノイリン』や『ノイロビタン』には、ビタミンB2も配合されている
3. 誘導体によって生理活性に細かな違いはあるが、薬の性質として大きな差は確認されていない
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| ビタノイリン | ノイロビタン | ビタメジン | |
| 配合されているビタミンB群 | B1・B6・B12・B2 | B1・B6・B12・B2 | B1・B6・B12 |
| ビタミンB1 | フルスルチアミン | オクトチアミン | ベンフォチアミン |
| ビタミンB6 | ピリドキサール | ピリドキシン | ピリドキシン |
| ビタミンB12 | ヒドロキソコバラミン | シアノコバラミン | シアノコバラミン |
| ビタミンB2 | リボフラビン | リボフラビン | – |
| 適応症 | 食事からの摂取が不十分な際のビタミンB群の補給、ビタミンB群の欠乏による神経痛・筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・麻痺の症状改善 | 食事からの摂取が不十分な際のビタミンB群の補給、ビタミンB群の欠乏による神経痛・筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・麻痺の症状改善 | 食事からの摂取が不十分な際のビタミンB群の補給、ビタミンB群の欠乏による神経痛・筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・麻痺の症状改善 |
| 剤型 | カプセル | 錠剤 | カプセル、散 |
| 尿の着色に関する注意喚起 | あり(ビタミンB2由来) | あり(ビタミンB2由来) | なし |
| 販売開始年 | 1967年 | 1966年 | 1965年 |
| 剤型の規格 | カプセル(25,50) | 配合錠 | カプセル(25,50)、散、静注 |
| 先発医薬品の製造販売元 | 武田テバ薬品 | LTLファーマ | アルフレッサファーマ |
| 同成分のOTC医薬品 | ビタミンB群の商品は多数 | ビタミンB群の商品は多数 | ビタミンB群の商品は多数 |
+αの情報①:水溶性のビタミン・脂溶性のビタミン
ビタミンには、水溶性のものと、脂溶性のものがあります。
※水溶性のビタミン:B、C、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ニコチン酸アミド
※脂溶性のビタミン:A、D、E、K
このうち、水溶性のビタミンはちょっとくらい多めに摂取しても尿として排泄されるため、身体に蓄積しにくい性質があります。
一方で、脂溶性のビタミンは身体に残りやすく、摂取量が多くなると副作用も現れやすい傾向にあります。特に、妊娠中のビタミンAの過剰摂取は先天奇形のリスクに繋がります。
世の中には色々なビタミン剤やサプリメント、健康食品がありますが、脂溶性のビタミンの摂り過ぎに繋がるような商品の摂取・連用には十分注意するようにしてください。
+αの情報②:微量元素「コバルト(Co)」とドーピング禁止薬物
「コバルト(Co)」はビタミンB12を構成する微量元素で、造血にも深く関わっています。そのため、”造血に影響を与える因子”として、「エリスロポエチン」と同じ項目でドーピングの常時禁止薬物に指定されています8)。

ビタミンB12は禁止薬物ではありませんが、サプリメント等には「コバルト(Co)」を配合したものがある(例:『マスチゲンS錠』)ため注意が必要です。
8) 世界アンチ・ドーピング規定「2025禁止表国際基準」
+αの情報③:口内炎に対する効果
口内炎は、ビタミンB群の不足によっても起こります。実際、口内炎を繰り返している人の2~3割程度はビタミンB群の欠乏状態にあるという調査結果もある9)ことから、口内炎治療にビタミンB群の補給を試すのは合理的な方法と言えます。
特に、肉や魚をあまり食べない人はビタミンB群が不足しやすい10)ため、食生活の見直しと併せて検討してみても良いかもしれません。
ただし、ビタミンB群が不足していない人がビタミンB群を使っても特に意味はないため、効果を実感できないのに漫然と使い続けないよう注意が必要です。
9) J Oral Pathol Med.20(8):389-91,(1991) PMID:1941656
10) Mol Nutr Food Res.68(11):e2300315,(2024) PMID:38766917
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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