『ワーファリン』と『バイアスピリン』、同じ血液をサラサラにする薬の違いは?~抗凝固薬と抗血小板薬
記事の内容
回答:『ワーファリン』は抗凝固薬、『バイアスピリン』は抗血小板薬
『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』と『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』は、どちらも”血液をサラサラにする薬”ですが、『ワーファリン』は抗凝固薬、『バイアスピリン』は抗血小板薬と、作用も目的も全く異なる薬です。
『ワーファリン』は、不整脈や心不全などで血液の流れが滞ってできやすくなる血栓(静脈血栓/赤色血栓)を防ぐための薬です。
『バイアスピリン』は、高血圧や糖尿病・脂質異常症などによる動脈硬化が原因でできやすくなる血栓(動脈血栓/白色血栓)を防ぐための薬です。

そのため「抗凝固薬」と「抗血小板薬」は、血栓ができやすくなっている原因によって正しく使い分ける必要があります。また、病気の状況によっては両方を使うこともあります。
回答の根拠①:「ワルファリン」などの抗凝固薬の作用と目的~血液の流れが滞ってできる「静脈血栓/赤色血栓」を防ぐ
不整脈や心不全などによって心臓の働きが悪くなると、血液の流れが滞り、固まりやすくなります。

このとき、特に血液の流れが遅くなる静脈で、赤血球や血液凝固因子(フィブリンなど)を巻き込みながら血栓を作るため、これを「静脈血栓」あるいは「赤色血栓」と呼びます。
こうしてできた血栓が全身の血管を詰まらせてしまう事態を防ぐために使うのが、血液凝固因子の働きを阻害し、血液を固まりにくくする「抗凝固薬」です。
※抗凝固薬の例
『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』
『プラザキサ(一般名:ダビガトラン)』
『イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)』
『エリキュース(一般名:アピキサバン)』
『リクシアナ(一般名:エドキサバン)』
※抗凝固薬は他にも、がん等で血液の凝固因子が異常を起こした場合にできやすくなる血栓の予防にも使います。
「抗凝固薬」は、新しいDOACが中心に使われる
「抗凝固薬」は、長らく1950~1960年代に登場した「ワルファリン」しかありませんでしたが、2010年代に入って「ダビガトラン」や「リバーロキサバン」といった直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が登場し、選択肢が大きく広がりました。
DOACは従来の「ワルファリン」に比べて、頭蓋内出血リスクを低く抑えられるなど特に安全性に優れる1)ことや、”納豆を食べられない”といった食事制限がないことなどから、近年の治療の中心になっています。
ただし、「ワルファリン」の方が安価に使える、適応症が広い、腎機能が低下していても使いやすい、半減期が長く飲み忘れの影響が小さい、薬の効果を検査値(PT-INR)で客観的に把握できる、といったメリットもあるため、状況に応じて使い分けられています。
1) Lancet.383(9921):955-62,(2014) PMID:24315724
回答の根拠②:「アスピリン」などの抗血小板薬の作用と目的~動脈硬化が原因でできる「動脈血栓/白色血栓」を防ぐ
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの状態が長く続くと、血管がダメージを受けて動脈硬化が進み、血管の内側には「プラーク」と呼ばれる塊ができます。この「プラーク」が何らかの原因で剥がれたり破れたりすると、そこに血小板が集まってきて血の塊(血栓)ができてしまいます。

このとき、動脈では血液の流れが速いため、赤血球などの大きなものは固まる前に流されてしまうため、血小板が主体になった血栓を作るため、これを「動脈血栓」あるいは「白色血栓」と呼びます。
こうしてできた血栓が全身の血管を詰まらせてしまう事態を防ぐために使うのが、血小板が集まる作用(凝集作用)を抑える「抗血小板薬」です。
※抗血小板薬の例
『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』
『パナルジン(一般名:チクロピジン)』
『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』
『エフィエント(一般名:プラスグレル)』
『ブリリンタ(一般名:チカグレロル)』
『プレタール(一般名:シロスタゾール)』
※抗血小板薬は他にも、狭心症や心筋梗塞の原因となっている”心血管の狭窄”を広げる「カテーテル処置(PCI:経皮的冠動脈インターベンション)」を行った後にできやすくなる血栓の予防にも使います。
「抗血小板薬」は”併用”することがある
PCI(経皮的冠動脈インターベンション)の際などには、「アスピリン」+「P2Y12阻害薬(チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル)」といったように、作用メカニズムの異なる抗血小板薬を複数組み合わせて使う2)ことがあります。
2) N Engl J Med.339(23):1665-71,(1998) PMID:9834303
薬剤師としてのアドバイス①:「抗凝固薬」と「抗血小板薬」は明確な使い分けが必要
「抗凝固薬」と「抗血小板薬」は、どちらも”血液をサラサラにする薬”として同じ薬のように認識されていることがありますが、薬の作用や使う目的は全く異なります。そのため、この2つの薬は”別の薬”として明確に使い分ける必要があります。
「抗凝固薬」が必要な病気と「抗血小板薬」が必要な病気が両方ある場合には、2つの薬を併用することもあります。特に、心房細動があってPCI(経皮的冠動脈インターベンション)直後…のように、”併用せざるを得ない状況”も多くあります。
ただし、この場合でも併用による出血リスクを最小限に抑えるため、”なるべく少ない薬で最大の効果を引き出す”ための戦略が色々と検討されています3)。
また、「抗凝固薬」は「抗血小板薬」の一定の代わりになることがある2,4)一方、「抗血小板薬」は「抗凝固薬」の代わりにはなり得ないことがほとんどです5,6)。そのため、どちらか1つの薬に絞って使う場合は「抗凝固薬」が優先的に選ばれるのが一般的です。
実際、「抗凝固薬」と「抗血小板薬」を併用するより、「抗凝固薬」単独で治療した方が、より安全にほぼ同等の効果を得られる、というケースも色々と報告されています7,8)。
3) J Arrhythm.40(5):1108-1114,(2024) PMID:39416245
4) N Engl J Med.345(20):1444-51,(2001) PMID:11794192
5) Stroke.37(2):447-51,(2006) PMID:16385088
6) Europace.16(5):631-8,(2014) PMID:24158253
7) N Engl J Med.381(12):1103-1113,(2019) PMID:31475793
8) JAMA Neurol.82(12):1227-1234,(2025) PMID:41051787
薬剤師としてのアドバイス②:手術などの前には、薬を一時的に”休薬”する必要がある
「抗凝固薬」や「抗血小板薬」を使っている間は、出血が止まりにくくなります。そのため、手術など大きな出血をする恐れがある際には、薬の服用を中断しておく必要があります。
特に一部の「抗血小板薬」は、血小板が生まれ変わるまでの7~14日程度は効果が持続するため、その”休薬”の期間は長くなることがあります。
ただし、休薬の具体的な方法や期間は、薬の種類や受ける手術のリスク、病状などによって大きく異なりますので、一般的な目安や他人の休薬期間をそのまま自分に当てはめることはできません。必ずかかりつけの主治医・薬剤師に相談し、個別に対応してもらうようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『ワーファリン(ワルファリン)』は「抗凝固薬」、血液の流れが滞ってできる静脈血栓/赤色血栓を防ぐために使う
2. 『バイアスピリン(アスピリン)』は「抗血小板薬」、動脈硬化が原因でできる動脈血栓/白色血栓を防ぐために使う
3. 「抗凝固薬」と「抗血小板薬」は併用することもあるが、どちらか1つに絞って使う場合は「抗凝固薬」を優先することが多い
4. 大きな手術の前には、出血を防ぐために「抗凝固薬」や「抗血小板薬」を”休薬”することがある
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| ワルファリン | アスピリン | |
| 代表的な医薬品名 | ワーファリン | バイアスピリン |
| 薬効分類 | 抗凝固薬 | 抗血小板薬 |
| 適応症 | 血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防 | 狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管障害における血栓・塞栓形成の抑制、冠動脈バイパス術・経皮経管冠動脈形成術施工後における血栓・促成形成の抑制、川崎病 |
| 国際登場年 | 1954年 | 1980年ころ |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【D】 | オーストラリア基準【C】 |
| 授乳中の安全性評価 | MMM【L2】 | MMM【L2】 |
| 世界での販売状況 | 世界各国 | 世界各国 |
| 剤型の規格 | 錠剤(0.5mg,1mg,5mg)、顆粒(0.2%) | 腸溶錠(100mg) |
| 代表的な医薬品の製造販売元 | エーザイ | バイエル |
| 同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | (販売されていない) |
+αの情報:「心原性脳塞栓症」には抗凝固薬、「アテローム血栓性脳梗塞」には抗血小板薬を使う
心臓でできた血栓が脳まで流れ、脳の血管を詰まらせるものを「心原性脳塞栓症」と呼びます。これは「静脈血栓/赤色血栓」によって起こるため、「抗凝固薬」を使う必要があります(※「抗血小板薬」の脳梗塞の適応症には、「心原性脳塞栓症」を除くと書かれています)。
一方で、頸動脈などの太い血管でできた血栓が血流に乗って脳まで到達し、脳の血管を詰まらせてしまうものを「アテローム血栓性脳梗塞」と呼びます。これは「動脈血栓/白色血栓」によって起こるため、「抗血小板薬」を使った治療が基本になります。

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











質問なのですが、抗血小板薬や抗凝固薬を患者さんは把握しておらず、我々は救急現場で「血をサラサラにする薬を飲んでますか?」と尋ねます。その後、医師に報告するのですが、適当な言葉が見つからず、「血液をサラサラにする薬を服薬しています。」と伝えることになります。(抗凝固薬か抗血小板薬かわからないため)
これだと幼稚な報告になり、良くないなーと思うのですが、最適な言い回しってありますか?つまり二種類の血液サラサラにする薬の総称が知りたいです。
南江堂の「今日の治療薬」なんかでは、「抗凝固薬」と「抗血小板薬」はまとめて「抗血栓薬」に分類されています。
薬の作用としても、血栓を防ぐ薬ですので、総称としてはこの「抗血栓薬」が最も妥当かと思います。
…が、「抗血栓薬」が「抗血小板薬」と若干紛らわしいことや、「血液サラサラの薬」が広く浸透していることから、
場合によっては医療従事者間でも「血液サラサラの薬」で済ますこともあります。
(Twitterで返答したものですが改めて記載しておきます)
はじめまして。救急救命士学習塾の空飯といいます。この度は大変役立つ記事ありがとうございます。救命士にも抗凝固薬や抗血小板薬の存在は大きく、医師に申し送る時にも服薬の有無は大変重要です。
そんな中でこの記事は両者を大変わかりやすく説明しており、参考になりました。
私のfacebookやTwitterでも紹介させていただきました。
両方フォローもしましたのでこれからもよろしくお願いします。