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添付文書の記載内容が新しくなる?~20年ぶりの改訂で「原則禁忌」や「慎重投与」が廃止に

 2016年5月末に、厚生労働省が医薬品の添付文書の記載要領を20年ぶりに改訂することを発表しています1)。
 1) 厚生労働省医薬・生活衛生局 「医療用医薬品添付文書の記載要領改正案に係る意見の募集について」
 

 現在の形式では、可能性があるものは画一的になんでもかんでも記載しているため、重要な情報とそうでない情報とが入り混じっており、現場で情報を取り扱うにあたり不便であることは確かです。

 添付文書は、数ある薬の情報源の中でも「法的根拠」を持つ極めて重要な書類です。そのため、7月までは意見を集め、慎重な協議を経て2019年頃から新様式へと変わっていくことになっています。

「原則禁忌」や「慎重投与」といった項目は、実際の現場であまり役に立たなかった

 今回の改訂で廃止されるものに、「原則禁忌」や「慎重投与」といった項目があります。

 「原則禁忌」とは、使わないに越したことはないがやむを得ない場合は使うこともある、といったものです。そのため、医師が個別の事情を考慮したうえで、使った方が良いのか、使わない方が良いのかを判断します。

 「慎重投与」とは、腎臓が弱っている、高齢者である、妊娠中である・・・などの理由によって、普段より薬を慎重に使わなければならない、といったものです。そのため、医師が個別の事情を考慮した上で、使った方が良いのか、使わない方が良いのかを判断します。

 しかし、そもそも薬は全てそういうものなので、敢えて言われるまでもない、とも言えます。こういった情報が混ざっていると、本当に必要な情報を見落としてしまうリスクにもつながります。

「原則禁忌」と「絶対禁忌」が一緒になっていることがある

 「原則禁忌」の項目には、一つの大きな問題があります。

 「原則禁忌」はあくまで”原則”であって、いくらでも例外があります。ところが、禁忌には例外なく絶対に避けるべき「絶対禁忌」もあります。
絶対禁忌と原則禁忌
 これらが添付文書上で同じ「禁忌」として扱われていると、例外を作ってはいけない薬なのに安易に例外的な使い方をしてしまう、あるいは、いざとなれば使える薬なのに選択肢として挙がることがなくなってしまう、といった事態が起こり得ます

 

「慎重投与」は、慎重になるべき対象をより明確に

 「慎重投与」の項目は、慎重になるべき対象をより明確に記した「特定の患者集団への投与」という項目に受け継がれます。

 特別な注意が必要な集団を具体的に、妊娠中や授乳中、腎臓や肝臓に障害がある人、小児、高齢者、生殖可能な男女として挙げ、まとめて注意できるように整理するとされています。

 特に、妊娠中の薬の安全性評価については、現在の添付文書上の表現はそのほとんどが「有益性が上回ると判断された場合にのみ投与する」というものに留まっています。
 これでは、実際にどのようなリスクがどの頻度で存在するのか、といった情報がわかりにくいという問題があります(そのため、オーストラリア基準などの別の評価が必要になります)。

科学技術の進歩に合わせた内容に、添付文書も進化する

 前回に改訂された20年前と現在とでは、科学技術も大きく進歩しています。

 遺伝子型によって薬の効果に個人差が生まれること、光学異性体によって作用が異なること、小児や高齢者では筋肉や脂肪の割合が異なるため薬の効果にも違いが出ることなど、色々なことが明らかになっています。

 そのため、こうした技術の進歩に合わせて、添付文書の内容もより適切なものに進化すると言えます。

7月15日までは意見を募集している

 厚生労働省は7月15日まで、添付文書改訂に対する意見を募集しています2)。

 2) e-Govパブリックコメント 「医療用医薬品添付文書の記載要領改訂案に係る意見の募集について」

 こんな風に変えればより安全・効果的だ、といった良い意見がある場合はWebフォームからも意見を提出できます。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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