「劇薬」と赤文字で書いてある薬は、普通の薬より効果も副作用も強い薬?


回答:そうとは限らない

 「劇薬」という言葉は、「効果も副作用も強い」というイメージがありますが、医薬品の「劇薬」はあくまで法律上の分類です。
 そのため、薬理学的に必ずしも劇薬の方が効果や副作用が強いとは限りません。

 「劇薬=危ない」という安易な発想は、劇薬以外は安全と思い込んだり、劇薬を無意味に敬遠してしまったりと、極めて不利益が大きい考え方です。



詳しい回答:劇薬の方が弱い例

 「劇薬」の方が、普通の薬よりも効果や副作用が弱い、といったケースはいくらでもあります。

 例えばステロイド外用剤の『メサデルム(一般名:デキサメタゾンプロピオン酸エステル)』はⅢ群(5ランク中の3番目)に分類される「劇薬」です。
 一方、『マイザー(一般名:ジフルプレナード)』はⅡ群(5ランク中の2番目)に分類されるにも関わらず、「劇薬」ではありません。
メサデルムとマイザー~劇薬の強弱

 つまり、ステロイド外用剤としてより強力な『マイザー』が「普通薬」で、それより弱い『メサデルム』が「劇薬」ということになります。

 このことからもわかるように、必ずしも「劇薬」に分類される薬が常に強力である、というわけではありません。



回答の根拠①:半数致死量(LD50)による劇薬の指定基準

 薬は、どんなものでも大量摂取すれば命に関わります。
 どのくらいの量を摂取すると命に関わるのか?といった危険性を表す尺度の1つに「半数致死量(LD50)」という基準があります。

 半数致死量(LD50):100人がその量を摂取した場合、半分の50人に致命的な影響が出る、という摂取量

 このLD50が経口投与で30~300mg/kgであることが、「劇薬」である基準の1つになっています1)。
LD50による劇薬指定
 1) 薬事法 第44条第1項及び第2項

 「劇薬」よりも少量で致命的になり得る薬、LD50が30mg/kg未満のものは「毒薬」に指定され、更に厳格な管理が必要になります。



回答の根拠②:普段、薬として使う量がLD50に近い薬は厳密な管理が必要

 「劇薬」の基準になるLD50と、薬としての用量は別のものです。

 LD50が同じ300mg/kgの薬でも、普段薬として使う量が250mg/kgと多ければ、少しでも摂取量が増えるだけで危険です。
 ところが、普段薬として使う量が1mg/kgと少なければ、多少摂取量が増えたくらいで安全な範囲からはみ出ることはありません。
LD50と用量

 このように、薬の危険性は、普段薬として使う量、つまり”薬としての用量”によっても変わるため、LD50がそのまま薬の危険性を表す絶対的指標にはなり得ません。



回答の根拠③:LD50以外にも、劇薬の基準がある

 薬は大量に摂取すると中毒を起こしてしまいます。しかし、あまりに少量であっては効果がありません。
 
 そのため、薬は中毒を起こすほど大量でなく、効果がないほど少量でない、ちょうど良い量を使う必要があります。
 このとき、ちょうど良い量の上限と下限の間を「安全域」や「有効域」と呼びますが、この幅が狭い薬は厳密な量の調節が必要です。
有効域と中毒域
 特に、有効域が狭く簡単に中毒域に達してしまうような薬は、たとえLD50が300mg/kgより大きくても個別に「劇薬」に指定されることがあります。



薬剤師としてのアドバイス:「劇薬」かどうかは気にしない

 以上のように、必ずしも「劇薬」の方が作用も強力で危険な薬である、とは限りません。「劇薬」だから危険、「劇薬」だから毒、などという意見も散見されますが、「劇薬」=危ないという安易な判断は非常に問題があります

 実際の「効果」や「副作用」の強さについてはそれぞれ個別の評価方法がありますので、薬剤師に確認するようにしてください。

 

 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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