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似た薬の違い 片頭痛

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『マクサルト』・『アマージ』・『イミグラン』、同じ「トリプタン製剤」の違いは?~即効性と持続性による片頭痛の使い分け

回答:『マクサルト』は速く、『アマージ』は長く効き、『イミグラン』は剤型が豊富

 『マクサルト(一般名:リザトリプタン)』、『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』、『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』は、片頭痛の治療薬「トリプタン製剤」です。

 『マクサルト』は速く効く『アマージ』は長く効くため再発しにくい、という特徴があるため、頭痛の症状に合わせて薬を選ぶことができます。
 『イミグラン』はその中間くらいの速さと長さを持っていますが、錠剤だけでなく点鼻薬や注射剤もあるため、片頭痛が酷く口から薬を飲めない場合にも使うことができます。
マクサルト、アマージ、イミグラン
 いずれも頭痛のある時に飲む薬で、予防のために使う薬ではありません。使い過ぎると薬が原因の「薬物乱用頭痛」を起こす恐れもあるため、片頭痛が頻発する場合は予防薬を使うことをお勧めします。

回答の根拠①:「トリプタン製剤」の即効性と持続性の比較

 現在、片頭痛の薬「トリプタン製剤」は以下の5種類の薬が使われています。

※現在使われている5種の「トリプタン製剤」
『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』
『ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)』
『レルパックス(一般名:エレトリプタン)』
『マクサルト(一般名:リザトリプタン)』
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』

 これら5種の薬について、飲んでから2時間経ったときの頭痛の改善率と、その後の再発率を比較した試験があります1,2)。

 その結果、『マクサルト』など吸収の速い薬は効き目が速く、2時間後の頭痛改善率が高い傾向があります。
 一方、『アマージ』など半減期が長い薬は効き目が長続きし、頭痛の再発率が低い傾向があります。

※「トリプタン製剤」服用2時間後の頭痛改善率と、薬のTmax
68.6% 『マクサルト』(Tmax:1.0時間)
63.5% 『ゾーミッグ』(Tmax:3.0時間)
62.7% 『イミグラン』(Tmax:1.8時間)
48.9% 『レルパックス』(Tmax:1.0時間)
48.6% 『アマージ』(Tmax:2.7時間)

※「トリプタン製剤」服用後の頭痛再発率と、薬の半減期

21.4% 『アマージ』(半減期:5.1時間)
27.8% 『イミグラン』(半減期:2.2時間)
28.4% 『レルパックス』(半減期:3.2時間)
30.3% 『ゾーミッグ』(半減期:2.4時間)
36.9% 『マクサルト』(半減期:1.6時間)

 1) Lancet.358(9294):1668-75,(2001) PMID:11728541
 2) Cephalalgia.22(8):633-58,(2002) PMID:12383060
 ※Tmax、半減期は各添付文書から引用

 このことから、「トリプタン製剤」は速く効くこと(即効性)と長く効くこと(持続性)が両立しないため、症状に合わせてどちらかを選ぶ必要があると言えます。
トリプタン製剤の即効性と持続性

作用が持続する『アマージ』の予防的投与と、服用間隔

 「トリプタン製剤」はいずれも半減期が短いため、予防的に使っても効果は期待できません
 しかし、『アマージ』は例外的に半減期が5.1時間と比較的長いため、生理周期で悪化する片頭痛に対して、数日間予防的に服用することの効果が示されています3)。

 3) Headache.47(7):1037-1049,(2007) PMID:17635595

 また、2回目の服用までにあけるべき間隔も、他の「トリプタン製剤」は2時間以上とされているのに対し、『アマージ』は4時間以上と長めに設定されています4)。

 4) 各薬剤添付文書

回答の根拠②:剤型の違い~吐き気があっても使える工夫

 片頭痛では、頭痛と合わせて吐き気・嘔吐を催し、水も飲めなくない状態となることが少なくありません。

 『マクサルト』のRPD錠や『ゾーミッグ』のRM錠は、それぞれOD錠と同じように唾液でさっと溶ける錠剤で、水なしでも飲めます(※RM:Rapid Melt in mouth、RPD:Rapid Dissolutionの略)。
 このとき、唾液が少なくても、食道に貼り付いて粘膜を傷つけることがないように設計されていたり5)、吐き気のある時でも飲みやすいように「オレンジ味」がついていたり6)と、飲みやすさと安全性が両立するように考えられています。

 5) マクサルトRPD錠 インタビューフォーム
 6) ゾーミッグRM錠 添付文書

 また、どうしても口から薬を飲めない場合には、点鼻薬や注射薬がある『イミグラン』を使うこともできます。
イミグラン~点鼻や注射の意義

薬剤師としてのアドバイス:月に10回以上「トリプタン製剤」が必要になる場合、予防薬を

 「トリプタン製剤」を月に10回以上使っていると、「薬物乱用頭痛」という薬が原因の頭痛を起こす恐れがあります。
 そもそも「トリプタン製剤」は値段も高いため、あまり頻繁に使わなければならないような状態は経済的にも良いものではありません。
薬物乱用頭痛と予防薬
 こうした場合には、「予防薬」を2~3ヶ月続けて服用することで片頭痛そのものを起こさなくすることができます。これらの「予防薬」は値段も非常に安く、「トリプタン製剤」2~3回分の値段で1ヶ月分の薬をもらうこともできます。

 頻繁に片頭痛を起こす場合は、一度主治医と予防薬について相談することをお勧めします。

ポイントのまとめ

1. 『マクサルト』は速く、『アマージ』は長く効く
2. 『イミグラン』は、吐き気が酷い人でも使える点鼻薬や注射薬がある
3. 「トリプタン製剤」を1ヶ月に10回以上使うようであれば、予防薬を使うことも考える

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆適応症
マクサルト:片頭痛
アマージ:片頭痛
イミグラン:片頭痛、群発頭痛(注・皮下注のみ)

◆吸収の速さ(Tmax)
マクサルト:1.0時間
アマージ:2.7時間
イミグラン:1.8時間

◆半減期(T1/2)
マクサルト:1.6時間
アマージ:5.1時間
イミグラン:2.2時間

◆2回目の服用までに、あけるべき間隔
マクサルト:2時間
アマージ:4時間
イミグラン:2時間

◆剤型の種類
マクサルト:錠剤、RPD錠
アマージ:錠剤
イミグラン:錠剤、点鼻液皮下注

◆製造販売元
マクサルト:エーザイ
アマージ:グラクソ・スミスクライン
イミグラン:グラクソ・スミスクライン

+αの情報①:「トリプタノール」と「トリプタン」

 「トリプタノール」は「トリプタン製剤」ではありません。
 『トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)』は三環系抗うつ薬の商品名で、片頭痛には予防薬として使用します。

 たまたま名前が似てしまっただけのもので、『トリプタノール』と「トリプタン製剤」は全く別の薬です。

+αの情報②:『マクサルト』は予防薬の選択に注意

 片頭痛治療薬の『マクサルト』は、片頭痛予防薬の『インデラル(一般名:プロプラノロール)』と併用禁忌に指定されています5)。これは、併用によって『マクサルト』の最高血中濃度(Cmax)が1.8倍、AUCが1.7倍に増加7)し、副作用のリスクが高まるからです。

 7) Br J Clin Pharmacol.52(1):69-76,(2001) PMID:11453892

 片頭痛の治療薬・予防薬は、効果や副作用の様子を見ながら切り替えることがありますが、この組み合わせにならないよう注意が必要です。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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