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抗血小板薬 似た薬の違い

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『プラビックス』・『エフィエント』・『ブリリンタ』、同じ抗血小板薬の違いは?~適応の広さと代謝酵素による個人差、休薬期間

回答:適応が広い『プラビックス』、個人差が少なく効果の安定した『エフィエント』、休薬期間が短くて済む『ブリリンタ』

 『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』・『エフィエント(一般名:プラスグレル)』・『ブリリンタ(一般名:チカグレロル)』は、いずれも血液をサラサラにする抗血小板薬(P2Y12阻害薬)です。

 『プラビックス』は、適応が広く、心臓・脳・末梢の3領域で使用実績が豊富な薬です。
 『エフィエント』は、効き目に個人差が出にくく、安定した効果を得られる薬です。
 『ブリリンタ』は、休薬期間が短くて済むという特徴があります。

 多くの場面で『プラビックス』や『エフィエント』が第一選択薬ですが、これらの薬が使えない場合には『ブリリンタ』も選択肢になります。

 

回答の根拠①:心臓・脳・末梢に適応のある「クロピドグレル」~使用実績も豊富な抗血小板薬の中心

 「クロピドグレル」は、1970年代から使われていた古い抗血小板薬「チクロピジン」に比べ、より安全に使える薬として開発された薬1)です。

 実際に「クロピドグレル」は、心臓=PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の血栓予防2)、脳=動脈硬化性の脳梗塞3)、末梢=末梢動脈疾患4)の3つの領域で、「チクロピジン」よりも少ない副作用で使えることが確認されています。
 この心臓・脳・末梢の3領域において、「クロピドグレル」は最も豊富な使用実績があり、今も第一選択薬として多くの場面で使われています5,6)。

※抗血小板薬(P2Y12阻害薬)の適応症の範囲
クロピドグレル:心臓、脳、末梢
プラスグレル :心臓、脳(※条件付)
チカグレロル :心臓

1) プラビックス錠 インタビューフォーム
2) Circulation.102(6):624-9,(2000) PMID:10931801

3) Cochrane Database Syst Rev.(4):CD001246,(2009) PMID:19821273
4) Ann Vasc Dis.5(3):364-75,(2012) PMID:23555538

5) 日本循環器学会 「2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」
6) 日本脳卒中学会 「脳卒中治療ガイドライン 改訂2025」

 

「クロピドグレル」は値段も安い

 1990年代後半から使われている「クロピドグレル」は、2009~2010年に登場した「プラスグレル」や「チカグレロル」に比べて値段が安くなっています。ジェネリック医薬品も活用すれば、「クロピドグレル」による治療は最も経済的負担を少なく抑えることができる選択肢です。

※薬価(2025年改訂時)
クロピドグレル:25mg(26.30)、50mg(58.20)
プラスグレル :2.5mg(178.00)、3.75mg(248.80)、5mg(326.00)、20mg(999.00)
チカグレロル :60mg(94.30)、90mg(137.50)

 

回答の根拠②:効果に個人差が少ない「プラスグレル」~CYP2C19の活性化が不要というメリット

 「クロピドグレル」は、肝臓の代謝酵素「CYP2C19」による活性化を受けて初めて、薬としての作用を発揮します1)。そのため、この酵素がよく働く人とあまり働かない人では、効果に個人差が生じてしまうことになります。
 実際、日本人の約20%はこの「CYP2C19」の働きが遺伝的に弱い7)とされていますが、そういった人では「クロピドグレル」の効果が弱まり、血栓症を起こしやすくなることがわかっています8,9)。

 その点「プラスグレル」は、こうした代謝酵素「CYP2C19」の関与が少なく10)、多くの人で安定した効果を得られるようになっています8,11)。

 そのため、「プラスグレル」も心臓の領域では基本的に「クロピドグレル」と並んで第一選択薬として扱われています5)。ただし、脳の領域においては適応症も条件付きで、使用実績も乏しいため、「クロピドグレル」が使えない場合の選択肢6)という扱いになっています。

※非心原性脳梗塞の再発予防に対する推奨度 6)
クロピドグレル:推奨度【A】
プラスグレル :推奨度【B】

7) Pharmacogenomics.8(9):1199-210,(2007) PMID:17924835
8) Circ J.84(9):1575-1581,(2020) PMID:32713878
9) Circulation.135(1):21-33,(2017) PMID:27806998
10) エフィエント錠 インタビューフォーム

11) J Thromb Thrombolysis.58(4):547-555,(2025) PMID:40229530

 

「プラスグレル」は効果発現も速い

 「プラスグレル」は代謝酵素「CYP2C19」による活性化を受ける必要がないため、「クロピドグレル」よりも抗血小板作用が速く現れます10,12)。そのため、心筋梗塞などで抗血小板薬の”負荷投与”が必要な場合には、速効性に優れた「プラスグレル」が優先的に選ばれることが多くなっています5)。

※効果発現までの時間 12)
クロピドグレル:2~8時間
プラスグレル :30分~4時間

12) Nat Rev Cardiol.13(1):11-27,(2016) PMID:26283269

回答の根拠③:休薬期間の短い「チカグレロル」~他の抗血小板薬が使えないときの選択肢

 血小板のP2Y12受容体を不可逆的に阻害する「クロピドグレル」や「プラスグレル」と違って、「チカグレロル」は可逆的な阻害をする抗血小板薬です12)。そのため血小板機能の回復は早く、手術前の休薬も3~5日程度で済む13)など、使い勝手の良い抗血小板薬と言えます。

※手術前の休薬期間の目安(抗血小板薬)
クロピドグレル・プラスグレル:7~14日(※血小板が新しく生まれ変わるまで)
チカグレロル:3~5日(※薬による抗血小板作用が消失するまで)

13) ブリリンタ錠 インタビューフォーム

 

現状では、「チカグレロル」は他の薬が使えない場合の選択肢

  「チカグレロル」は、心臓の領域にしか適応がありません13)。一部で、「クロピドグレル」よりも優れる効果14)も報告されていますが、現時点では「クロピドグレル」や「プラスグレル」が使えない場合の選択肢という扱い5)で、優先的に選ばれるものではありません。

 また、脳の領域では「チカグレロル」は「クロピドグレル」よりも出血を増やす可能性も指摘されている15)ため、注意が必要です。

14) N Engl J Med.361(11):1045-57,(2009) PMID:19717846
15) N Engl J Med.385(27):2520-2530,(2021) PMID:34708996

 

薬剤師としてのアドバイス:簡単な手術であれば”休薬”をしないこともある

 抗血小板薬を使っていると出血しやすくなるため、手術の前には服薬を一時的に休薬しておくのが基本です。しかし、ひとことに手術と言っても、出血リスクは手術の内容や場所によって大きく変わります。

 特に、抜歯のようなリスクの低い手術の場合は、抗血小板薬を使っていても出血は増えないか、あるいは局所止血で十分に対応できるような出血しか起きない16,17)ことがほとんどです。むしろ、休薬すると血栓リスクは確実に高まることから、簡単な手術であれば休薬しない方が良いケースもあります。

 休薬が必要かどうかは、使っている薬の内容や病状など個々の事情によっても変わるため、予め医師や薬剤師に相談しておくようにしてください。

16) Br J Oral Maxillofac Surg.53(1):39-43,(2015) PMID:25311541
17) J Am Dent Assoc.149(2):132-138,(2018) PMID:29389336

 

ポイントのまとめ

1. 『プラビックス(クロピドグレル)』は、心臓・脳・末梢に適応があり、使用実績は最も豊富で安価
2. 『エフィエント(プラスグレル)』は、CYP2C19による活性化が不要で個人差が少なく、速効性もある
3. 『ブリリンタ(チカグレロル)』は、他の薬が使えないときの選択肢だが、P2Y12を可逆的に阻害するため血小板機能の回復は速い

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

クロピドグレルプラスグレルチカグレロル
先発医薬品名プラビックスエフィエントブリリンタ
薬効分類抗血小板薬(P2Y12阻害薬)抗血小板薬(P2Y12阻害薬)抗血小板薬(P2Y12阻害薬)
阻害のタイプ不可逆不可逆可逆
適応症の範囲心臓、脳、末梢心臓、脳(※条件付き)心臓
心臓領域の推奨度 5)第一選択
(※非PCIでは優先)
第一選択
(※STEMI、NSTE-ACSの負荷投与では優先)
他の薬が使えないとき
脳領域の推奨度 6)推奨度【A】推奨度【B】
CYP2C19による影響大きい小さい小さい
効果発現までの時間 12)2~8時間30分~4時間30分~4時間
一般的な休薬期間7~14日7~14日3~5日
用法1日1回1日1回1日2回
併用禁忌の薬強力なCYP3A阻害薬/誘導薬
国際登場年1997年2009年2010年
妊娠中の安全性評価オーストラリア基準【B1】オーストラリア基準【B1】オーストラリア基準【B1】
授乳中の安全性評価MMM【L4】MMM【L4】MMM【L4】
世界での販売状況世界130ヵ国以上世界70ヵ国以上
(※欧米では脳梗塞に対する使用は未承認)
世界100ヵ国以上
剤型の規格錠(25mg,50mg)錠(2.5mg,3.75mg,5mg)、OD錠(20mg)錠(60mg,90mg)
配合剤『コンプラビン(クロピドグレル+アスピリン)』
先発医薬品の製造販売元サノフィ第一三共アストラゼネカ
同成分のOTC医薬品(販売されていない)(販売されていない)(販売されていない)

 

+αの情報①:「プラスグレル」は、海外では用量が多め

 日本では、「プラスグレル」は負荷用量20mg/回、維持用量3.75mg/回で使いますが、海外では負荷用量60mg、維持用量10mgと約3倍の量が標準です。これは、日本人はもともと血栓症のリスクが低いことや、東アジア系の人種では「プラスグレル」のバイオアベイラビリティが高いこと18)が主な理由です。
 そのため、基本的に日本では「プラスグレル」と「クロピドグレル」で有効性・安全性に大きな差はない19)ものとして扱われていますが、海外では「プラスグレル」は有効性が高いものの出血も多い薬20)として扱われています。

 なお、日本に在住する外国人に抗血小板薬を使う場合は、”日本人向けの少量”で使わざるを得ない「プラスグレル」ではなく「クロピドグレル」を優先した方が無難です21)。

18) Eur J Clin Pharmacol.66(2):127-35,(2010) PMID:19888568
19) Circ J.78(7):1684-92,(2014) PMID:24759796
20) N Engl J Med.357(20):2001-15,(2007) PMID:17982182

21) 日本冠疾患学会誌.3:1-5,(2021)

 

+αの情報②:「チカグレロル」の優先順位は、日本と欧米で大きく異なる

 「チカグレロル」の優先順位は、日本では高くない5)ですが、欧米では「クロピドグレル」よりも優先される場面が増えています22)。
 これは、欧米人では「チカグレロル」を選んだ方が安全かつ効果的な治療をできることが多いからですが、日本を含む東アジア系の国では「チカグレロル」で出血リスクが増えるという報告もあり23)、同じように扱うことはできません。

 「チカグレロル」は、「プラスグレル」のように”日本人向けの用量”ではなく、欧米と共通した用量で承認されている、という点も関係しているのかもしれません。

22) Neth Heart J.32(10):338-345,(2024) PMID:39254829
23) J Am Heart Assoc.8(14):e012078,(2019) PMID:31310570

 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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